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スマイル22・王様が女王の恩人を救う
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こんなに傷ついて震えている彼を、愛しく思ってしまうんだもの。
優しく口づけして、もう大丈夫って包んであげたい。
貴方を傷つける全てのものから、私が守ってあげたいって思うの。
でも、間違ってこの男に口づけでもしてご覧なさい。そんなことをしたら、王雅は私の事、今ここで、いとも簡単に抱いてしまうわ。私だって、何時もみたいに拒んだりできない。
流されて、抱かれてしまって、その後に残るのは、虚無感と後悔だけよ。
身体を赦したら最後、どうせ飽きて捨てられるんだもの。解っているのよ、そんな事。
こんなお金持ちの御曹司が、事もあろうに貧乏施設の貧乏女を、一生大切に出来るワケないじゃない。
今はただ私が思い通りにならなくて、手に入れたくて、意地になって面白がっているだけなのよ。
一度とは言わないけど、二、三度抱ければ、貴方は満足して、私の前からいなくなるんでしょう。
でもね、王雅。
貴方、本当はとても淋しい男なのよね。
今日、お帰りなさいって出迎えた時、貴方、とても嬉しそうな顔して喜んでいたでしょ。
私、その顔、知っているの。愛されずに育った子供と同じ顔をしていたの。
施設に初めて来た子は、お帰りなさいって言ってもらったら、みんなそんな顔をするのよ。
泣き出しそうな、でも、とても嬉しいっていう顔を――。
温かい心のこもったお帰りなさいって、きっと、初めて言われたのね。貴方の様子をみたら解る。
だから、嬉しかったのよね。
誰にも愛されずに育ってしまって、今まで、とても淋しかったのよね。
誰かに、愛してもらいたかったのよね。
私がそれを与えてしまっても、貴方は私に飽きたら、また違う誰かを求め、彷徨い、飛び立つに決まっているわ。ここにいる、子供達のように。
私が大切にしているこの城は、淋しい子供たちの仮の家。
傷ついた羽を休めるための、一時的な宿り木のようなもの。
みんな、帰る場所がある。私の手の中には、誰も残らないの。
王雅もそうでしょ。
私だって何かひとつくらい、貴方を繋ぎ止めておけるような誇れるものがあれば良かったんだけど。
私には、なにもないの。
なんにも。
さっき横山さんの事を謝った時の貴方の顔――今日、平岡商店で見た時と同じ、深く傷ついた顔していたけど、何をそんなに傷ついているの?
私のせいなの?
だったら、私を一生、大切にしてくれるの?
そんなの、できるワケないでしょ。
私も、バカね。結婚してくれっていう、そんな王雅の言葉、少しでも信じようとしたりして。どうせ裏切られるに決まっているわ。
仮に本当に結婚できたとしても、飽きたら離婚されるでしょう。どんなに私が嫌だって言っても、お金持ちなんだから裁判して、慰謝料払って、捨てられて、それで終わりよ。傷ついた戸籍とお金が残るだけね。
ただ、傷つく代償としては申し分無い。
そうなったら、私の一番欲しいもの――施設の土地が手に入るんだから、御曹司の気まぐれ上等、ラッキーだと思えばいいのよ。
施設の土地、これだけは絶対に譲らないんだからね。
慰謝料だって、貴方はきっと欲しいだけくれるでしょう。だったら、施設が絶対大丈夫なくらいの沢山のお金、貰ってやるんだから。
それが手に入るんだったら、傷ついた戸籍くらい、何てことないわ。
もともと私にとっては、戸籍なんて綺麗も汚いも無いんだから。傷のひとつやふたつ付いたところで、困ることなんて何も無いのよ。
――だって私は、誰の血が流れているかも解らない女なんだから。
本当の父と母は私への虐待が露呈したから逮捕されて刑務所に入ったけど、出所してから私を迎えにも来ないし、もう消息も分からない。私だって探そうとも思わないし。
そんな虐待を受けて憔悴していた血の繋がりも何もない、行くあても無かった私を、我が子として迎え育ててくれたあの二人――血のつながらない真崎久信と真崎美幸の二人が建ててくれたこの城(マサキ施設)は、絶対に、何があっても、私が守り抜くって決めているの。
私の為に二人が遺してくれたこの城は、絶対に手放さないわ。
だって私には、この城しかないの。
この城を失ったりしたら、もう生きていけない。
優しく口づけして、もう大丈夫って包んであげたい。
貴方を傷つける全てのものから、私が守ってあげたいって思うの。
でも、間違ってこの男に口づけでもしてご覧なさい。そんなことをしたら、王雅は私の事、今ここで、いとも簡単に抱いてしまうわ。私だって、何時もみたいに拒んだりできない。
流されて、抱かれてしまって、その後に残るのは、虚無感と後悔だけよ。
身体を赦したら最後、どうせ飽きて捨てられるんだもの。解っているのよ、そんな事。
こんなお金持ちの御曹司が、事もあろうに貧乏施設の貧乏女を、一生大切に出来るワケないじゃない。
今はただ私が思い通りにならなくて、手に入れたくて、意地になって面白がっているだけなのよ。
一度とは言わないけど、二、三度抱ければ、貴方は満足して、私の前からいなくなるんでしょう。
でもね、王雅。
貴方、本当はとても淋しい男なのよね。
今日、お帰りなさいって出迎えた時、貴方、とても嬉しそうな顔して喜んでいたでしょ。
私、その顔、知っているの。愛されずに育った子供と同じ顔をしていたの。
施設に初めて来た子は、お帰りなさいって言ってもらったら、みんなそんな顔をするのよ。
泣き出しそうな、でも、とても嬉しいっていう顔を――。
温かい心のこもったお帰りなさいって、きっと、初めて言われたのね。貴方の様子をみたら解る。
だから、嬉しかったのよね。
誰にも愛されずに育ってしまって、今まで、とても淋しかったのよね。
誰かに、愛してもらいたかったのよね。
私がそれを与えてしまっても、貴方は私に飽きたら、また違う誰かを求め、彷徨い、飛び立つに決まっているわ。ここにいる、子供達のように。
私が大切にしているこの城は、淋しい子供たちの仮の家。
傷ついた羽を休めるための、一時的な宿り木のようなもの。
みんな、帰る場所がある。私の手の中には、誰も残らないの。
王雅もそうでしょ。
私だって何かひとつくらい、貴方を繋ぎ止めておけるような誇れるものがあれば良かったんだけど。
私には、なにもないの。
なんにも。
さっき横山さんの事を謝った時の貴方の顔――今日、平岡商店で見た時と同じ、深く傷ついた顔していたけど、何をそんなに傷ついているの?
私のせいなの?
だったら、私を一生、大切にしてくれるの?
そんなの、できるワケないでしょ。
私も、バカね。結婚してくれっていう、そんな王雅の言葉、少しでも信じようとしたりして。どうせ裏切られるに決まっているわ。
仮に本当に結婚できたとしても、飽きたら離婚されるでしょう。どんなに私が嫌だって言っても、お金持ちなんだから裁判して、慰謝料払って、捨てられて、それで終わりよ。傷ついた戸籍とお金が残るだけね。
ただ、傷つく代償としては申し分無い。
そうなったら、私の一番欲しいもの――施設の土地が手に入るんだから、御曹司の気まぐれ上等、ラッキーだと思えばいいのよ。
施設の土地、これだけは絶対に譲らないんだからね。
慰謝料だって、貴方はきっと欲しいだけくれるでしょう。だったら、施設が絶対大丈夫なくらいの沢山のお金、貰ってやるんだから。
それが手に入るんだったら、傷ついた戸籍くらい、何てことないわ。
もともと私にとっては、戸籍なんて綺麗も汚いも無いんだから。傷のひとつやふたつ付いたところで、困ることなんて何も無いのよ。
――だって私は、誰の血が流れているかも解らない女なんだから。
本当の父と母は私への虐待が露呈したから逮捕されて刑務所に入ったけど、出所してから私を迎えにも来ないし、もう消息も分からない。私だって探そうとも思わないし。
そんな虐待を受けて憔悴していた血の繋がりも何もない、行くあても無かった私を、我が子として迎え育ててくれたあの二人――血のつながらない真崎久信と真崎美幸の二人が建ててくれたこの城(マサキ施設)は、絶対に、何があっても、私が守り抜くって決めているの。
私の為に二人が遺してくれたこの城は、絶対に手放さないわ。
だって私には、この城しかないの。
この城を失ったりしたら、もう生きていけない。
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