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スマイル22・王様が女王の恩人を救う
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しおりを挟む「それもそうですね。それより今日はどうされたんですか? あ、工場の方はいかがですか? 順調になりましたか?」
そうだわ。確か三年前、工場の資金繰りが悪化したみたいで、この施設の土地を売ることにしたから申し訳ない、って頭を下げに来てくれたんだったわ。この土地を売れば、当面の工場の資金が手に入るからって。
花井が、美幸おかあさんの代わりである私を手に入れようと、横山さんの弱みに付け込んで破格の値段でこの土地を買う契約を進めたからね。
それで横山さんから花井が土地のオーナーになり、私が花井に身体を売って、地代の交渉取引したのよ。本当に、あの時の屈辱は一生消えないし、忘れない。
大好きなおとうさんとおかあさんを死に追いやった憎い男に、女性としての初めてを奪われ、蹂躙されたんだもの。
まあ、おかげで怖いものナシになったけど。結果オーライと思う事にしている。
今は王雅が土地を花井から買い上げてくれたし、脅かされることは無いからこれについてはもう安心。
そんないきさつもあったから、横山さんがこの施設の土地を売られてから、彼には一度も会えなかった。
横山さんは優しいから、きっと土地を手放したことを心苦しく思われて、施設に来づらくなってしまったんだと思う。
だから今日は、わざわざ施設に来てくれて、会えて嬉しいわ!
工場の事を尋ねると、横山さんはとても淋しそうな顔を見せた。
「それがね・・・・どうにも不景気で・・・・いよいよ工場を手放そうと思っているんだ。土地の事で、久信君――おとうさんや、美羽ちゃんに迷惑かけちゃったね。申し訳ない。もう一度、謝りたかったんだ」
「横山さん。貴方が居なかったら、私はどうなっていたか・・・・こちらがお礼を言う立場なのに、もう、そんな風に謝るのは止めてください。あの、良かったらお茶でも・・・・そうだわ。ぜひ、上がって行って下さい」
横山さんが謝るなんて、とんでもないわ。
彼はマサキ施設の為に、工場の経営が苦しい中でも地代を取ったりせずに、気丈に振舞われていたのよ。
花井に土地を売る事を初めて聞いた時、私もショックだった。
そんなに苦しい時でも私には何も知らせず、マサキ施設を維持していく為に、ずっと無償で土地を貸してくれていたのだから。
こんなに優しい人、私は知らない。
彼がいてくれたから、私は今日まで生きてこれたの。
「美羽ちゃん、ありがとう。でも、今日は遠慮しておくよ。さっきも言った通り、工場を手放そうと思ってるから、最後の挨拶に来たんだ」
横山さんが辛そうに顔をしかめ、唇を噛んだ。
「・・・・起死回生を狙った製品の、無理な機械導入が祟ってしまって・・・・工場も苦しかったから、流行りに乗ろうと思って、設備投資に流されちゃったからね。何とか頑張ったんだけど、にっちもさっちも行かなくなってしまって。これから他の所にも、挨拶行こうと思っているんだ。やっぱり一番最初に、美羽ちゃんのところに来ようと思って、やって来たところなんだ」
「・・・・そうだったんですか。あの、それは・・・・もう、どうにもならないんですか?」
我ながら馬鹿な事を聞いていると思う。
どうにかなるなら、とっくの昔に手を打っているハズよ。それが出来なかったから、今日こうして私に会いに来てくれたんじゃない。
解っていても、聞いてしまった。
もっと気の利いたことが言えればいいのだけれど。何も思いつかなかった。
「手は尽くして頑張ったんだけどね・・・・この土地、手放してまでやったのに・・・・美羽ちゃん、その節は迷惑かけたね。本当に申し訳ない」
私に向かって、横山さんが深く頭を下げた。
頭なんか下げないで、どうか顔を上げて下さいと言っていると、ちょっといいですか、と私と横山さんの間に、一連のやり取りを聞いていたらしい王雅が割り込んできた。
「工場って、何を作っていらっしゃるんですか?」
王雅は横山さんの工場に興味を持ったらしい。製品の事について質問をしてきた。
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