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スマイル21・王様とお寿司パーティー
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しおりを挟む「おい美羽、菓子出そうぜ。刺身無くなっちまっただろ?」広場の様子を見ていた王雅が私に教えてくれた。
「あっ、そうね。そうするわ。悪いけど手伝ってくれる?」
「任せとけ」
王雅と二人でキッチンへ急ぎ、パーティー用に買ったお菓子を大皿に盛りつけて、それを広場に持って行った。
「お菓子だぁー!」
「しー、しー!!」
「わぁーい」
「ヤッター!」
子供たちが一目散に王雅と私を取り囲んだ。寿司桶を下げてお菓子の乗ったお皿と入れ替え、空いたグラスや子供たちの食器を片付けた。
洗い物をしているとリョウ君にお菓子の追加が欲しいと言われたので、再び大皿にお菓子をいっぱい乗せて外に出た。
さっき広場に置いておいたお皿の中身、殆ど空になってる!
スゴイ勢いでなくなっているわ。
お皿に残っていたお菓子を移して一つにまとめて、空になった皿を下げた。キッチンに戻ってさっき王雅に買ってもらったお菓子の袋を全部開けた。子供たちだけじゃなくて、ご近所のみんなにも美味しいって食べて貰えたら、こんなに嬉しい事は無いわ。
この施設が苦しい時、近所の人たちは何時も笑顔で助けてくれる。そんな優しいみんなに、少しでも喜んでもらえたら嬉しい。
こんな楽しいパーティーが出来た上に、ご近所のみんなをご招待できたのも、王雅のお陰ね。また後でお礼言っておこう。
折角だから写真を撮りたかったけど、忙しすぎてそれどころじゃ無かった。
そういえば、あんまり食事を摂る暇が無かったわね。さっき子供たちが作ってくれた手巻きを少し食べただけだった事を思い出した。
まあ、後で適当に残ったものを頂きましょう。無かったら無かったで、別に構わないし。
最後のお菓子の大皿を持って広場に向かった。ぼちぼちみんなのお腹も落ち着いてきたから、良かったわ。減りがゆっくりになってきた。
見回りをしていると、王雅に声を掛けられた。ちょいちょいと手招きされたので、彼の傍に行った。
「美羽、ごくろーさん。お前、ロクに食ってねーだろ? ホラ、これ。俺が握ったんだ。ちょっと見た目アレだけど」
そう言いながら、クーラーボックスから王雅が作ったお寿司を取り出してくれた。
鮪の赤身に、綺麗なピンク色の大トロと思われる部位、サーモン、ヒラメ、はまち等、適当に一種類ずつチョイスして、握ってくれていた。
シャリが不ぞろいだったけどボロボロに崩れたりしていないし、一口サイズのカワイイお寿司だった。王雅も随分こういうのを作るのが上手くなったと思う。
「美味しそうね。ありがとう。頂くわ」
簡易椅子に腰かけて、子供たちの様子を見ながら王雅の作ってくれたお寿司を食べた。
王雅が作っておいてくれたお寿司は、ネタが新鮮でとっても美味しかった。
寿司飯の具合も丁度良かった。上手くできているわ。良かった。きっとみんな、満足してくれたでしょうね。
「これさ、本鮪の赤身に、大トロだぜ。ガキ共も気に入っていっぱい食ってたし、俺も食ったけど美味かった。あのオヤジ、魚の目利きいーな。銀座でも店出せるぜ。出店したらいいのに」
「おじさんは、そういうのに興味無いわ。儲けもあまり考えて無いし。美味しい魚を仕入れて、平岡商店で売ることに生きがいを感じているような人だから」
「あー、そんな感じする。ま、だから俺も気に入ったんだけどな」
「買い占めなんてって思ったけど、魚が完売して、おじさん喜んでいると思うわ。何時も売れ残った魚を処分するのが忍びないからって、お金も取らずにこっそり分けてくれたりする事があるのよ。完売しなかったら魚が可哀想だからって。たまに百円くらい払ったりするけど、財政難の時はそれでよく助けて貰っているの」
「さっきもアラをタダで貰ってたしな。でもさ、アラって捨てる部分みたいじゃねーか。ドコ食うんだよ?」
「捨てないわよ。骨蒸しとかアラ炊きしたら一品になるし美味しいのよ」
「ふーん。食った事ねーわ、そんなの」
出た。お金持ち発言! 余った所は食べた事が無いなんて、庶民の敵ね。
「でも、お前が料理したら、美味そーだな。今度食わしてくれよ」
あら、王様も庶民寄りになって来たわね。お金持ちがアラを食べたいなんて、そんな事言われるとは思わなかった。
「ええ、いいわよ。とっても美味しいから、今度作ってあげる。それより、今日は色々ありがとう。おかげでみんな楽しんで貰えたし、子供たちも喜んでいるし、王雅のお陰ね」
「ああ、楽しかったな。今度またやろうぜ、何かのパーティー」
「ええ、そうね」
貴方がこの施設に、まだ興味があったらの話だけど。
ねえ、王雅。
今は私の横で楽しそうに笑っているけど、それを何時まで続けるつもりなの?
楽しい想い出が増えれば増える程、貴方がこの施設に背を向けた時、私だけじゃなくて、子供たちも悲しむわ。
だからね、王雅。
もうこれ以上、私達の領域に踏み込むのは止めて。
貴方との想い出が楽しければ楽しい程、貴方に捨てられた時のお別れが辛くなってしまうから――
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