上 下
100 / 287
スマイル19・王様ピンチに現る

しおりを挟む
 


「なあ、美羽。土曜日、俺とデートしようぜ」



 王雅が突然、デートしようとか言い出した。
 今、言うの?
 この王様、一体どういうタイミングで女性を誘うのかしら。
 ちょっと読めない。

「デート? 子供達を放っておいて、そんなの行く時間、あるわけないじゃない。何言ってんのよ」

 とりあえず断った。

「違うって。商店街デート――買い出しだよ。俺、土日は毎週、できるだけ仕事休み取って、施設で世話になるから。週末は基本、泊りだ。俺の布団、用意しておいてくれよ。ガキ共には、俺が必要なんだろ? 俺も会いたいし、まとめて面倒は見てやるから。俺が増える分、食材とか余分に要るだろ。だから、とりあえず朝から買い出しに行くぞ。世話になる代わりに、俺が財布だ。お前の欲しいもの、何でも買ってやる。また、買いに行こうぜ。お徳用トイレットペーパーとか」


 王雅の言葉に、目が丸くなった。
 お徳用トイレットペーパーって庶民の単語、王様が口にしちゃうなんて!

 

「セレブの王雅には似合わない言葉ね。お徳用トイレットペーパーなんて。あははっ」


 思わず笑ってしまった。


「俺様とデート出来るなんて、超ラッキーだぜ、お前。しかも、何でも欲しいものが手に入るんだからな。最高だろ」

 王雅が不敵な王様スマイルを向けてきた。
 輝く王様スマイルもいいけど、王雅のこの得意気な王様顔、結構好きなのよね。
 悪くないって思うの。

「言うわね。アンタこそ、私とデート出来るなんて良かったじゃない。私は、高いわよ。あちこち行くからね。覚悟しておきなさい」

「ああ。美羽とデート出来るなんて、嬉しいぜ。楽しみにしてるから」

「買い出しがデートで楽しみなんて、変わってるわね。ふふっ。王様も庶民になったりするのかしら?」

 商店街で何でも買ってくれるスポンサーがいるなんて、最高ね。
 お徳用の安くて美味しい食材、沢山買ってもらっちゃおうっと!
 でも、幾ら王雅がお金持ちだからって散財させられないから、できれば目標五千円以下に抑えたいわね。

 あ。そうは思っても、調味料切れているのがあるし、お肉もお菓子もちょっと少ないから・・・・お会計、もう少し高くなっちゃうかもしれないけど、いいかしら?

 まあ、土日の泊りの食費として払ってくれるのは有難いけど、子供たちのお世話をお願いするのに、王雅からお金をもらうのもどうかと思う。

 だったらこれは、何時か訪れる契約の時の借りとして、貴方にツケておいてもらうわ。
 貴方が覚えてなかったら、私が覚えておくから。
 私を契約で抱く時、その対価としての先払いよ。タダで何でも買ってもらう訳にはいかないからね。


 それから王雅は、私が作ったお昼ご飯を子供たちと一緒に食べて仕事に戻って行った。


 土曜日か。商店街の買い出しがデートなんて、王様も変わったデートを希望するのね。
 明日、商店街に買い物へ行こうと思っていたけど、王様たっての希望だから、買い物は土曜日にとっておきましょう。


 想像すると、なんだか楽しそうね。
 早く、土曜日になればいいのに。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

心の声が聞こえる私は、婚約者から嫌われていることを知っている。

木山楽斗
恋愛
人の心の声が聞こえるカルミアは、婚約者が自分のことを嫌っていることを知っていた。 そんな婚約者といつまでも一緒にいるつもりはない。そう思っていたカルミアは、彼といつか婚約破棄すると決めていた。 ある時、カルミアは婚約者が浮気していることを心の声によって知った。 そこで、カルミアは、友人のロウィードに協力してもらい、浮気の証拠を集めて、婚約者に突きつけたのである。 こうして、カルミアは婚約破棄して、自分を嫌っている婚約者から解放されるのだった。

別れてくれない夫は、私を愛していない

abang
恋愛
「私と別れて下さい」 「嫌だ、君と別れる気はない」 誕生パーティー、結婚記念日、大切な約束の日まで…… 彼の大切な幼馴染の「セレン」はいつも彼を連れ去ってしまう。 「ごめん、セレンが怪我をしたらしい」 「セレンが熱が出たと……」 そんなに大切ならば、彼女を妻にすれば良かったのでは? ふと過ぎったその考えに私の妻としての限界に気付いた。 その日から始まる、私を愛さない夫と愛してるからこそ限界な妻の離婚攻防戦。 「あなた、お願いだから別れて頂戴」 「絶対に、別れない」

セレナの居場所 ~下賜された側妃~

緑谷めい
恋愛
 後宮が廃され、国王エドガルドの側妃だったセレナは、ルーベン・アルファーロ侯爵に下賜された。自らの新たな居場所を作ろうと努力するセレナだったが、夫ルーベンの幼馴染だという伯爵家令嬢クラーラが頻繁に屋敷を訪れることに違和感を覚える。

【完結】王太子妃の初恋

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
カテリーナは王太子妃。しかし、政略のための結婚でアレクサンドル王太子からは嫌われている。 王太子が側妃を娶ったため、カテリーナはお役御免とばかりに王宮の外れにある森の中の宮殿に追いやられてしまう。 しかし、カテリーナはちょうど良かったと思っていた。婚約者時代からの激務で目が悪くなっていて、これ以上は公務も社交も難しいと考えていたからだ。 そんなカテリーナが湖畔で一人の男に出会い、恋をするまでとその後。 ★ざまぁはありません。 全話予約投稿済。 携帯投稿のため誤字脱字多くて申し訳ありません。 報告ありがとうございます。

私は既にフラれましたので。

椎茸
恋愛
子爵令嬢ルフェルニア・シラーは、国一番の美貌を持つ幼馴染の公爵令息ユリウス・ミネルウァへの想いを断ち切るため、告白をする。ルフェルニアは、予想どおりフラれると、元来の深く悩まない性格ゆえか、気持ちを切り替えて、仕事と婚活に邁進しようとする。一方、仕事一筋で自身の感情にも恋愛事情にも疎かったユリウスは、ずっと一緒に居てくれたルフェルニアに距離を置かれたことで、感情の蓋が外れてルフェルニアの言動に一喜一憂するように…? ※小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。

【完結】生贄になった婚約者と間に合わなかった王子

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
フィーは第二王子レイフの婚約者である。 しかし、仲が良かったのも今は昔。 レイフはフィーとのお茶会をすっぽかすようになり、夜会にエスコートしてくれたのはデビューの時だけだった。 いつしか、レイフはフィーに嫌われていると噂がながれるようになった。 それでも、フィーは信じていた。 レイフは魔法の研究に熱心なだけだと。 しかし、ある夜会で研究室の同僚をエスコートしている姿を見てこころが折れてしまう。 そして、フィーは国守樹の乙女になることを決意する。 国守樹の乙女、それは樹に喰らわれる生贄だった。

婚約者が他の女性に興味がある様なので旅に出たら彼が豹変しました

Karamimi
恋愛
9歳の時お互いの両親が仲良しという理由から、幼馴染で同じ年の侯爵令息、オスカーと婚約した伯爵令嬢のアメリア。容姿端麗、強くて優しいオスカーが大好きなアメリアは、この婚約を心から喜んだ。 順風満帆に見えた2人だったが、婚約から5年後、貴族学院に入学してから状況は少しずつ変化する。元々容姿端麗、騎士団でも一目置かれ勉学にも優れたオスカーを他の令嬢たちが放っておく訳もなく、毎日たくさんの令嬢に囲まれるオスカー。 特に最近は、侯爵令嬢のミアと一緒に居る事も多くなった。自分より身分が高く美しいミアと幸せそうに微笑むオスカーの姿を見たアメリアは、ある決意をする。 そんなアメリアに対し、オスカーは… とても残念なヒーローと、行動派だが周りに流されやすいヒロインのお話です。

許婚と親友は両片思いだったので2人の仲を取り持つことにしました

結城芙由奈 
恋愛
<2人の仲を応援するので、どうか私を嫌わないでください> 私には子供のころから決められた許嫁がいた。ある日、久しぶりに再会した親友を紹介した私は次第に2人がお互いを好きになっていく様子に気が付いた。どちらも私にとっては大切な存在。2人から邪魔者と思われ、嫌われたくはないので、私は全力で許嫁と親友の仲を取り持つ事を心に決めた。すると彼の評判が悪くなっていき、それまで冷たかった彼の態度が軟化してきて話は意外な展開に・・・? ※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています

処理中です...