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スマイル19・王様ピンチに現る

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「なんだ、テメエ、邪魔すんなっ!」

 目の前でチンピラ男が、サトル君を守っているおじさんの背中を強く蹴った。酷く痛かったと思うけれど、彼はびくともせず、腕の中に包み込んだサトル君に声を掛けている。

「悟、もう大丈夫だからな。お父さんが守ってやるからな! 怖かったな。今まで助けてやれなくて、ごめんな、ごめん・・・・」

 ボロボロと涙をこぼしていたサトル君は、必死に彼を守っている男の人にしがみついている。



――お父さん?



 一体、どういう事なの。


「このや――」


 この野郎、とでも言いたかったのかしら。サトル君がお父さんと呼んだ細身の紳士を、再び痛めつけようとしていたチンピラ男(彼もサトル君のおとうさんになるのよね? 現状、よくわからないわ)は、突如現れた全身黒づくめの男達に羽交い絞めにされ、瞬時に落とされた。
 気が付くと王雅も来てくれていて、泡を吹いて気絶しているチンピラ男を一瞥し、片づけといてくれ、と黒づくめの二人に頼んでいる。彼等は承知しました、と一言発し、何事もなかったかのように、チンピラ男を連れて去っていった。

 

「美羽、大丈夫か!?」


 王雅が私に駆け寄って、声をかけてくれた。「怖かっただろ? もう大丈夫だからな!」

「・・・・王雅、わざわざ来てくれたの?」

 どうして、今、現れるかな。
 貴方、本当に、スーパーヒーローの王子様じゃない。


 私が困った時、貴方はさっと何事も無かったように現れて、何事も無かったように解決してくれるのね。

 うっかり好きになったりしたら、どうしてくれんのよ、もう。
 アンタ、責任取れんの!?
 取れないんだから、こういう事するの止めてよね!!


「ああ。気になって色々調べたんだ。この前、サトルの母親――千夏(ちなつ)を追い返しただろ? 千夏には同棲してる男が居てな。さっきの男だよ。数万円の金欲しさに、サトルを連れ戻しに施設に乗り込んでくんじゃねーかって思って、心配だからこっそりSPに見張らせてたんだ。俺の思い過ごしかもしんねーから、美羽には言ってなかったんだ。黙ってて悪かった」

 なるほど、それで。
 連れていかれたチンピラ男は、サトル君の義理のお父さんってワケなのね。

 それより、謎が解けたわ。施設近辺の雰囲気が何時もと違っていた理由が。
 王雅のお陰だったのね。
 貴方が私達を心配して、見守っていてくれたからだったのね。
 
「そうだったの。どうりで、いつもと施設近くの雰囲気が違うと思った。・・・・それより王雅、あの男性は? お父さんって言ってたと思うけど、どういう事?」

 もしかしたら、彼が本当のお父さんっていうことかしら?

「サトルの、本当の親父だよ。ま、コッチも色々あってな――・・・・」

 王雅が、今までの経緯を説明してくれた。
 目の前の彼は、本当のサトル君のお父さん。内藤勝也(ないとうかつや)さんと言って、王雅の会社の取引先の人なんだって。それから、サトル君と別れる事になったいきさつ等――。


 内藤さんは三年前にご病気をされて、長期入院をされたんだって。その間、サトル君のお母さん――内藤千夏さん――に看病して貰えず、仕方なく東京からご実家のある地方の病院へ移った時から、千夏さんに連絡が取れなくなってしまい、更に勝手に引っ越しをされ、サトル君にも会えなくなってしまったそうなの。
 内藤さんは病気を治してから一人で東京に戻って、仕事をしながらずっと人づてにサトル君を探して、でもどうにもならないから、遂に探偵に依頼をしたみたい。それで、マサキ施設にサトル君がいる事を知ったんだって。
 一目だけでも会おうと思って施設に来たら、施設付近をウロウロしていた怪しい人物だって思われて、SPの人が内藤さんを捕まえちゃったんだって!


 まあ、このあたりの詳しい経緯を知りたい人は、コロッケスマイル(王雅主役編)の方、読んでみてね。
 合わせ読みすると、王雅と私で別ルート辿っているから、面白いんだって。
 あなたたち(読者のみんな)に教えてもらったわ。何の事やら。
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