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スマイル14・王様と遠足

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「ごめんなさい。あのね、王雅お兄さん、いつも僕たちを楽しませてくれるから、何かお礼ができないかなーって探してたら、綺麗なちょうちょを見つけたんだ。捕まえてお兄さんに見せたら喜ぶかな、と思って追いかけてたら・・・・そしたらすごく大きなハチが飛んできて、走っても走っても追いかけてくるから、逃げてたら迷子になっちゃって・・・・」

 サトルくんがシュンとしながら王雅に謝った。

「俺を喜ばせる為に、こんなムチャな事したのか」

「ウン。ごめんなさい。いつも僕たちのためにありがとう、お兄さん! お礼がしたかったんだ」

 満面の笑みのサトル君を見つめていた王雅は、本当に嬉しそうな顔で笑った。

「ホラ、立てるか。俺様の為に何かしようとしてくれるのは嬉しいけど、ムチャして美羽先生を困らせるのは、もうナシだ。俺様だって心配だ」

「ウン。ごめんなさい」

「サトルの優しい気持ちは、ありがたくもらっておく。俺様のことを考えてくれたのは、スゲー嬉しい。でもな、子供は素直に喜んでりゃそれでいーんだよ。また、面白いトコ連れてってやるし、施設でもスッゲーことして、遊んだりしよーぜ」

「ウン、したい!」

「但し、美羽先生や、俺様に心配かけるな。これからは、ムチャして一人で勝手な行動はしないこと! いいな?」

「はーい!」

「よし、良い返事だ。来いよ」

 王雅は、本当のサトル君のお兄さんみたいだった。
 彼はさっとサトル君を抱き上げると、そのまま肩車をしてくれた。


「うわーっ、高い! スゴーイ!」サトル君が歓声をあげた。


 サトル君の声に、王雅はとびきりの王様スマイルを見せた。
 何時もの自信たっぷりの俺様な笑顔じゃなくて、みんなを大切に想ってくれる、優しい笑顔。
 貴方、最初から子供たちのことは邪険に扱ったりせず、大切にしてくれていたわね。
 今じゃそれが、もっともっと浮き彫りになるような輝く笑顔になっている。


 ドキドキする。貴方の笑顔を見ると、私は心をぎゅっと掴まれて、おかしくなってしまう。


「お兄さん、すごいよっ! 僕こんなの初めて!!」

 よかったな、って王雅が笑った。
 最近貴方、本当によく笑うようになったわね。

「美羽、戻るぞ。他のガキ共が心配して待ってる。それにもし、これからもお前が困ったら、何時でも駆けつけて守ってやるからな。だから、俺様を頼れ。ホラ、手貸せよ」

 王雅が手を取ってくれた。
 繋いだ手が温かくて、心地よかった。

 サトル君を肩車しているから、何だか三人でいると、本当の家族みたいな気分になった。不思議な、優しいぬくもりに包まれている。繋いだこの手を、放したく無いって思った。


 温かい、優しい王雅のキモチが、繋いだ手から伝わってくる。
 ねえ、王雅。
 本当に、私を好きだって思ってくれているの?


 本当なの?


 だったら――・・・・そこまで考えて、笑いがこみ上げた。


 バカね。私、一体何を考えているの。
 女をお金で買おうとするような男が、まともに私だけを愛して、一生大切にしてくれるワケないじゃない。
 しかも貧乏施設を経営している貧乏女で、関係は、王様と奴隷よ? どう考えても、釣り合うわけ無いじゃない。
 ちょっと助けて貰ったからって、ちょっと甘く囁かれたからって、いい気になって心を赦したらダメよ。

 赦したら最後、飽きて捨てられるんだから。


 解ってる。


 私は、一人で強く生きていくんだから。



 さっきは慌てていて、ちょっと取り乱しただけ。



 私は絶対に、もう誰も好きになったりしたいし、




 誰も信用なんかしないんだから――




 
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