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スマイル11・王様とコロッケパーティー

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「ガックン、リカちゃん、留守番、しっかりお願いね!」


 今日は、コロッケ特売の日だ。
 前回はセクハラ大王――もとい王雅のお陰でコロッケ全員分買いそびれちゃったから、今日こそ十五個五パックを買うのよっ!
 私もちゃんと、コロッケ食べたいし。

 今、まだ九時半前。そろそろ人が並び始める頃だわ。
 今からだったら、十時の発売と同時くらいにしっかり五パックゲットできるわ。
 このまま商店街でお買い物できるようにエコバックもちゃんと持ったし、お財布も入っているし、抜かりはない。


 私はガックンとリカちゃんにいつも通り留守番をお願いして、早速商店街へ出かけた。


 でも、今日はなんだか変だった。
 商店街へ行くための路地を歩いていても、顔見知りのご近所さんとすれ違わなかった。
 誰も、歩いていなかった。

 コロッケ特売日にこんな事はあり得ない。
 みんなこの特売を楽しみにしていて、商店街に近づくにつれ、活気が溢れているハズなのに。

 商店街の入り口に到着すると、バリケードが張られていた。数人、サングラスに黒スーツの怖そうな人達が入り口に立っている。
 どうしようかと思っていると、真崎美羽様ですね、どうぞ、と言われてバリケードを解き、中に入れてくれた。
 何時もは活気があふれている商店街は、シーンと静まり返っていて、どのお店も開店していなかった。
 ここは、セントラル商店街というとても小さな商店街で、入口の方から遠くの端の方まで見えるくらいの商店街だ。
 お使いを頼まれた幼少期から通っているが、正月の休み以外で平日にどの店もシャッターが閉まっていて、静まり返る商店街は見たことが無かった。

 何時も利用している北側の入口から、徳用品を買うのにお世話になっている、小さいスーパー、金物屋さんを超えると個人商店が二、三件並んでいて、肉屋、魚屋、果物屋、花屋、八百屋さんが並んでいる。その隣が、私達が楽しみにしているコロッケ屋さんがある。

 今日は、コロッケ屋さんだけ、灯りが点いていた。

 他のお店は閉まっているのに、どういうワケか、コロッケ屋さんだけ開いている。
 ねじりはちまきがトレードマークの魚屋のおじさんのお店――平岡商店でさえ、開いていない。店主の平岡さんは商店街でのお仕事がとっても大好きで、何時も私に声をかけてくれる、やさしいおじさんだ。
 小さい頃から良く知っているけど、どんなに高熱でもお店に立つことを止めなかったあの平岡さんが、お店を休みにしているなんて――



 商店街、一体、どうなっちゃったの!?



 
 まさかこの不況で・・・・軒並みお店が潰れてしまったとでも言うの?

 とりあえずコロッケ屋さんの前に行ってみたけど、大量のコロッケが露店に積まれているだけで、何時もの店主のおばさん――安田さんが居ない。時々揚げ物を買いに来ると、余り物だけど、って何かしら子供達の為に持たせてくれる、赤いエプロンをして、あの恰幅の良い安田さんが――・・・・


「おーい」


 呆然と立ち尽くしていると、能天気な声が聞こえて来た。この声は、王雅だ。


 ・・・・そういう事なのね。
 商店街がこんな事になったのは、絶対にこの男の仕業に違いないわ!
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