7 / 287
スマイル2・王様との再会
2
しおりを挟む
嫌悪感いっぱいの表情を浮かべて、睨んでやった。「何か御用でしょうか?」
「御用も何も・・・・お前、昨日はよくも色々やってくれたな」最低男は更に言葉を続けた。「俺のアルマーニのスーツ、ビシャビシャにしてくれた礼をしに来たんだよ」
知らないわよ、そんなの!
セクハラした自分が悪いんでしょっ。
お金持ちなんだから、スーツのひとつやふたつ、水がかかった程度なんだから、干してクリーニングにでも出せば綺麗になるじゃない。
どうせ似たような高級スーツ、何十着と持っているんでしょ。一張羅じゃあるまいし。
ついでにアンタもクリーニングしてもらったらどうかしら。
わいた頭が、ちょっとは綺麗になるんじゃないの。
「施設の立ち退き要請に来たんだ」
最低の二乗ね。もう、本当に本当に最悪。
こんな最低な男、なかなかお目にかかれないわ。
「その話は、昨日も別の方にお断りしています。帰ってください」
「だから俺が来たんだ。まあ聞け」最低男は優しい微笑みを浮かべながら、話を続けた。「今なら立退き料としてかなりの破格値を用意するってホテル側は言ってるんだぜ? さっさと立ち退いて、別の場所で施設借りりゃいーだろ? 探せねーなら、俺が最後まで面倒見てやるよ。そうだ、うんと綺麗で新しい施設、見つけてやる! その方が皆喜ぶ――」
「またお金の話? いい加減にして! この世にはお金で買えない大切なものが沢山あるのよ。貴方もカワイソウな男性(ひと)ね。とにかく、この施設から立ち退きはしないわ! 帰って!!」
アイツのセリフを、一刀両断してやった。
本当にふざけてるわ。
私の為に両親が建てて遺してくれた、一番の宝物であるマサキ施設を、誰が手放すもんですか!
こちとら、命張ってこの施設守ってんのよ。
ホテルの建設か何だか知らないけど、そんなの空いてる他所でやればいいじゃない。私を巻き込まないで。
本当にホテル側もしつこい。私が絶対に立ち退かないって言ってるんだから、さっさと諦めたらいいのに。
しかもこんな最低男を交渉役に寄こすなんて、どーかしてるわ。
怒り心頭していたら、うっかり時間をチェックするのを忘れていた。
ピンポロポロピーン、と壁時計が十時を知らせる音が耳に入り、はっと気が付いて時計を見た。
しまった!
三個で百円の特売コロッケ、販売開始の時間だっ!!
「ああっ! もうこんな時間!! 急がなきゃ! アンタと話してる暇なんて無いのっ」
慌てて財布を取りに行って元の部屋に戻ったら、最低男はまだ部屋に居座っていた。
「もう帰ってよね。迷惑だから」
「はあっ!? オイ、お前ちゃんと人の話聞け――」
「帰って!!」
最低男を、部屋から追い出した。
迂闊だったわ。私ともあろうものが、コロッケ特売に出遅れてしまうなんてっ!!
それもこれも、全部昨日から最低男が絡んでるのが原因よねっ!
ロクな男じゃないわ。さっさと目の前から消えて欲しい。
私はお腹に力を入れて息を吸い込み、猛烈ダッシュで部屋を飛び出した。
子供達に声をかける暇が無かった。ゆっくり声をかけていたら、コロッケが売り切れちゃう!
今日のコロッケ特売の事は子供達も知っているし、常日頃から留守番をちゃんと頼んであるから、もうこのまま走り切るしかないっ!!
「おいっ、待てよ!!」
最低男が私に向かって、待て、とか言いながら追いかけて来た。
知らないわ。っていうより、追いかけてこないでよ。さっさと帰ってよね!
男を無視して、商店街まで全力ダッシュしてコロッケ屋をめざした。
案の定人だかりが出来てる! 何時もはもっと早く行って、ちゃんと並んで人数分確保するのにっ!!
ごめんなさいっ。失礼しますっ。
人だかりを潜り抜け、いつもの愛想が良く恰幅のいい赤いエプロンをしたコロッケ屋のおばさんの所まで、何とか辿り着いた。
「コロッケ十五個下さいっ!!」
息を切らしながら叫んだら、何と売り切れ寸前で、四パックの十二個しか買えなかった。
ああっ!
残念すぎるっ!!
「御用も何も・・・・お前、昨日はよくも色々やってくれたな」最低男は更に言葉を続けた。「俺のアルマーニのスーツ、ビシャビシャにしてくれた礼をしに来たんだよ」
知らないわよ、そんなの!
セクハラした自分が悪いんでしょっ。
お金持ちなんだから、スーツのひとつやふたつ、水がかかった程度なんだから、干してクリーニングにでも出せば綺麗になるじゃない。
どうせ似たような高級スーツ、何十着と持っているんでしょ。一張羅じゃあるまいし。
ついでにアンタもクリーニングしてもらったらどうかしら。
わいた頭が、ちょっとは綺麗になるんじゃないの。
「施設の立ち退き要請に来たんだ」
最低の二乗ね。もう、本当に本当に最悪。
こんな最低な男、なかなかお目にかかれないわ。
「その話は、昨日も別の方にお断りしています。帰ってください」
「だから俺が来たんだ。まあ聞け」最低男は優しい微笑みを浮かべながら、話を続けた。「今なら立退き料としてかなりの破格値を用意するってホテル側は言ってるんだぜ? さっさと立ち退いて、別の場所で施設借りりゃいーだろ? 探せねーなら、俺が最後まで面倒見てやるよ。そうだ、うんと綺麗で新しい施設、見つけてやる! その方が皆喜ぶ――」
「またお金の話? いい加減にして! この世にはお金で買えない大切なものが沢山あるのよ。貴方もカワイソウな男性(ひと)ね。とにかく、この施設から立ち退きはしないわ! 帰って!!」
アイツのセリフを、一刀両断してやった。
本当にふざけてるわ。
私の為に両親が建てて遺してくれた、一番の宝物であるマサキ施設を、誰が手放すもんですか!
こちとら、命張ってこの施設守ってんのよ。
ホテルの建設か何だか知らないけど、そんなの空いてる他所でやればいいじゃない。私を巻き込まないで。
本当にホテル側もしつこい。私が絶対に立ち退かないって言ってるんだから、さっさと諦めたらいいのに。
しかもこんな最低男を交渉役に寄こすなんて、どーかしてるわ。
怒り心頭していたら、うっかり時間をチェックするのを忘れていた。
ピンポロポロピーン、と壁時計が十時を知らせる音が耳に入り、はっと気が付いて時計を見た。
しまった!
三個で百円の特売コロッケ、販売開始の時間だっ!!
「ああっ! もうこんな時間!! 急がなきゃ! アンタと話してる暇なんて無いのっ」
慌てて財布を取りに行って元の部屋に戻ったら、最低男はまだ部屋に居座っていた。
「もう帰ってよね。迷惑だから」
「はあっ!? オイ、お前ちゃんと人の話聞け――」
「帰って!!」
最低男を、部屋から追い出した。
迂闊だったわ。私ともあろうものが、コロッケ特売に出遅れてしまうなんてっ!!
それもこれも、全部昨日から最低男が絡んでるのが原因よねっ!
ロクな男じゃないわ。さっさと目の前から消えて欲しい。
私はお腹に力を入れて息を吸い込み、猛烈ダッシュで部屋を飛び出した。
子供達に声をかける暇が無かった。ゆっくり声をかけていたら、コロッケが売り切れちゃう!
今日のコロッケ特売の事は子供達も知っているし、常日頃から留守番をちゃんと頼んであるから、もうこのまま走り切るしかないっ!!
「おいっ、待てよ!!」
最低男が私に向かって、待て、とか言いながら追いかけて来た。
知らないわ。っていうより、追いかけてこないでよ。さっさと帰ってよね!
男を無視して、商店街まで全力ダッシュしてコロッケ屋をめざした。
案の定人だかりが出来てる! 何時もはもっと早く行って、ちゃんと並んで人数分確保するのにっ!!
ごめんなさいっ。失礼しますっ。
人だかりを潜り抜け、いつもの愛想が良く恰幅のいい赤いエプロンをしたコロッケ屋のおばさんの所まで、何とか辿り着いた。
「コロッケ十五個下さいっ!!」
息を切らしながら叫んだら、何と売り切れ寸前で、四パックの十二個しか買えなかった。
ああっ!
残念すぎるっ!!
0
お気に入りに追加
113
あなたにおすすめの小説
心の声が聞こえる私は、婚約者から嫌われていることを知っている。
木山楽斗
恋愛
人の心の声が聞こえるカルミアは、婚約者が自分のことを嫌っていることを知っていた。
そんな婚約者といつまでも一緒にいるつもりはない。そう思っていたカルミアは、彼といつか婚約破棄すると決めていた。
ある時、カルミアは婚約者が浮気していることを心の声によって知った。
そこで、カルミアは、友人のロウィードに協力してもらい、浮気の証拠を集めて、婚約者に突きつけたのである。
こうして、カルミアは婚約破棄して、自分を嫌っている婚約者から解放されるのだった。
セレナの居場所 ~下賜された側妃~
緑谷めい
恋愛
後宮が廃され、国王エドガルドの側妃だったセレナは、ルーベン・アルファーロ侯爵に下賜された。自らの新たな居場所を作ろうと努力するセレナだったが、夫ルーベンの幼馴染だという伯爵家令嬢クラーラが頻繁に屋敷を訪れることに違和感を覚える。
【完結】王太子妃の初恋
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
カテリーナは王太子妃。しかし、政略のための結婚でアレクサンドル王太子からは嫌われている。
王太子が側妃を娶ったため、カテリーナはお役御免とばかりに王宮の外れにある森の中の宮殿に追いやられてしまう。
しかし、カテリーナはちょうど良かったと思っていた。婚約者時代からの激務で目が悪くなっていて、これ以上は公務も社交も難しいと考えていたからだ。
そんなカテリーナが湖畔で一人の男に出会い、恋をするまでとその後。
★ざまぁはありません。
全話予約投稿済。
携帯投稿のため誤字脱字多くて申し訳ありません。
報告ありがとうございます。
私は既にフラれましたので。
椎茸
恋愛
子爵令嬢ルフェルニア・シラーは、国一番の美貌を持つ幼馴染の公爵令息ユリウス・ミネルウァへの想いを断ち切るため、告白をする。ルフェルニアは、予想どおりフラれると、元来の深く悩まない性格ゆえか、気持ちを切り替えて、仕事と婚活に邁進しようとする。一方、仕事一筋で自身の感情にも恋愛事情にも疎かったユリウスは、ずっと一緒に居てくれたルフェルニアに距離を置かれたことで、感情の蓋が外れてルフェルニアの言動に一喜一憂するように…?
※小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。
【完結】生贄になった婚約者と間に合わなかった王子
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
フィーは第二王子レイフの婚約者である。
しかし、仲が良かったのも今は昔。
レイフはフィーとのお茶会をすっぽかすようになり、夜会にエスコートしてくれたのはデビューの時だけだった。
いつしか、レイフはフィーに嫌われていると噂がながれるようになった。
それでも、フィーは信じていた。
レイフは魔法の研究に熱心なだけだと。
しかし、ある夜会で研究室の同僚をエスコートしている姿を見てこころが折れてしまう。
そして、フィーは国守樹の乙女になることを決意する。
国守樹の乙女、それは樹に喰らわれる生贄だった。
えぇ、死ねばいいのにと思ってやりました。それが何か?
真理亜
恋愛
「アリン! 貴様! サーシャを階段から突き落としたと言うのは本当か!?」王太子である婚約者のカインからそう詰問された公爵令嬢のアリンは「えぇ、死ねばいいのにと思ってやりました。それが何か?」とサラッと答えた。その答えにカインは呆然とするが、やがてカインの取り巻き連中の婚約者達も揃ってサーシャを糾弾し始めたことにより、サーシャの本性が暴かれるのだった。
婚約者が他の女性に興味がある様なので旅に出たら彼が豹変しました
Karamimi
恋愛
9歳の時お互いの両親が仲良しという理由から、幼馴染で同じ年の侯爵令息、オスカーと婚約した伯爵令嬢のアメリア。容姿端麗、強くて優しいオスカーが大好きなアメリアは、この婚約を心から喜んだ。
順風満帆に見えた2人だったが、婚約から5年後、貴族学院に入学してから状況は少しずつ変化する。元々容姿端麗、騎士団でも一目置かれ勉学にも優れたオスカーを他の令嬢たちが放っておく訳もなく、毎日たくさんの令嬢に囲まれるオスカー。
特に最近は、侯爵令嬢のミアと一緒に居る事も多くなった。自分より身分が高く美しいミアと幸せそうに微笑むオスカーの姿を見たアメリアは、ある決意をする。
そんなアメリアに対し、オスカーは…
とても残念なヒーローと、行動派だが周りに流されやすいヒロインのお話です。
完)嫁いだつもりでしたがメイドに間違われています
オリハルコン陸
恋愛
嫁いだはずなのに、格好のせいか本気でメイドと勘違いされた貧乏令嬢。そのままうっかりメイドとして馴染んで、その生活を楽しみ始めてしまいます。
◇◇◇◇◇◇◇
「オマケのようでオマケじゃない〜」では、本編の小話や後日談というかたちでまだ語られてない部分を補完しています。
14回恋愛大賞奨励賞受賞しました!
これも読んでくださったり投票してくださった皆様のおかげです。
ありがとうございました!
ざっくりと見直し終わりました。完璧じゃないけど、とりあえずこれで。
この後本格的に手直し予定。(多分時間がかかります)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる