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ラストスマイル

世界一の男・2

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「王雅君、はいよー。今日のお祝いの魚到着―! 新鮮獲れたてホヤホヤの魚だよー! それより結婚おめでとう!! 鯛持ってきたんだ。メデ鯛。ガッハッハ」


 平岡が白くドレスアップした施設にやって来た。
 つまらんオヤジギャグ飛ばして、勝手に一人で笑ってる。


 そうなんだ。今日の結婚式は、施設で挙げるんだ。
 どっかの教会やホテルでやるよりも、絶対美羽は喜ぶと思って、マサキ施設でやることに決めた。
 ボロ門や外壁も、休日返上で必死こいて全員でペンキ塗って綺麗にしたんだ。ガキ共も頑張ってくれた。
 自分達でやったモンだから、昨日までかかっちまった。間に合わないかと思って焦った。危なかったぜ。

 業者に任せりゃ、一日で綺麗になっただろーけど、俺やガキ共で、みんなで綺麗にしたかったんだ。
 この施設は真崎夫婦が娘に贈った、大切な城だからな。
 俺達も大切にしたいって思うんだ。


 見違えるほど綺麗になったマサキ施設で、最高の結婚式を挙げるんだ。


 今日の料理は、祝儀代わりに招待客が色々持参してくれる事になっている。施設らしい結婚式だ。料理を招待客が持参って、聞いたことねーんだけどな。マサキ施設なら何でもアリだ。面白い。
 商店街の店屋は、何かしら祝儀代わりに自分の店の売り物や作ったものを持参してくれるんだとか。平岡が持ってきてくれた魚も、祝儀代わりっつーワケだ。

 美羽も花嫁ながら、今日のご馳走作り頑張ってくれたんだ。誰かに任せようっつったのに、俺やガキ共に美味い飯を食わせたいからって、前日から張り切ってくれた。
 式が終わったら、持ち寄ってくれた食事を並べて立食パーティーみたいにするんだってさ。


 なんかゴチャゴチャで、楽しくなりそうだ。


 俺は面倒だから、自身の知り合いはあまり声をかけなかった。
 社の人間については、一切呼んでいない。人数が多すぎて、マサキ施設がパンクするからな。それは止めた。
 懇意にしている取引先の何人かには、一応声をかけて、都合がついたら適当に来てくれって言っておいた。ヒロイホールディングスの和歌子辺りは、多分来るだろうと思う。


 恭一郎は、妹の晴れ姿を見にイヤイヤ来るだろうな。


 俺の予想では、恭一郎も昔は美羽が好きだったと思う。今は違うだろうけどな。だから、誰にも渡したくない――まあ、美羽を大切にしていたから、アニキ兼オヤジ代わりの部分もあるだろう。
 いやまあ、その気持ちは解らんでもない。施設のガキの誰かが嫁に行くってなったら――俺、発狂するかもしんねーし。

 世の父親はスゲーな。俺にもし娘が出来たら、絶対に、絶対に、どんな男だろーが、結婚は反対しちまうな。
 嫁にやるのはイヤだ。だからできれば、もし授かれるなら子供は男がいいと思う。

 そんな事を言う俺は今、嫁をもらう立場だけどな。反対されたら今は困る立場だけど、逆の立場になったら、やるのは絶対にイヤだ。

 美羽だけじゃなく、施設のガキ共、これからもし娘ができたら、娘とも結婚出来りゃいーのにな――等、つまらんアホなコトを考えていると、次々と招待客が持参品を持ってやって来た。
 広場があっという間に様々な料理で埋め尽くされ、招待客に次々と挨拶をされた。



 王雅君のお陰で商店街が活気づいたよ、ありがとう――最高の褒め言葉を貰った。



 今、キングフェザーや櫻井グループのホテル事業のお抱えとなった商店街の店舗は、どの店も毎日忙しくしている。
 廃店を余儀なくされそうだった街の小さな個人店も、これで活気が付いたワケだ。
 商売繁盛が何よりだ。生きる糧になる。
 生活が安定すると、心も豊かになる。豊かになれば、それだけ家族が安心して暮らしていける。
 きっと、荒んだ家庭にはなったりしない。子供の虐待も減るだろう。


 プラスの連鎖は、プラスの連鎖が起こっていく。

 素晴らしい未来が待っているんだ!


 
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