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ウルトライダーQ・1

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 芋堀の一件で美羽との親密度が下がったと思われたまま、暫く月日が流れた。
 親密度を回復出来なかったのは、俺が忙しすぎて、あんまり美羽と関わることが出来なかった結果だ。
 それなのに、そろそろアメリカへ発たねばならない日程が迫ってきた。
 詳しい日程は決まっていないが、十月末から今年いっぱいは日本に帰れないだろうと予想している。
 出張は出来る限り早く終わらせるつもりだけど、プロジェクトの進行次第では来年までかかるかもしんねー。

 さて。もうすぐアメリカに行かねばならん俺。
 美羽との親密度は下がったまま。
 これで、どーやって同意取ったらいーんだ?
 到底取れると思えねーんだけど。


 恋人昇格は、もはや絶望的だった。


 俺は何時まで、夜を一人寝で淋しく過ごせばいーんだろーか。
 身体の渇きは、夏に入る前から全く解消されていない。自慢のアレも干からび寸前、瀕死の状態だ。
 とにかく、潤いが足りない。肌ツヤも悪くなる一方でイケメンが台無しだ。

 まあ、潤い成分については、とりあえずこの際置いておこう。考えても、どーしよーもねーんだ。俺の努力だけじゃ、出来ない事もあるっつーワケだ。
 他の女で間に合わせる事も、一点集中型で美羽が好きになっちまった俺には不可能だ。
 真凛なんて論外だ。間違って手なんか出してみろ? 結婚迫られて、俺はキノコと義理兄弟になっちまうかもしんねーんだぜ?


 うあぁー。考えただけで悪寒が走る。


 まあ、俺は手を出すつもりは毛頭ないが、逆に出される方を心配している。真凛はなかなかしたたかで強引だし、男みたいな性格だからな。
 勝手に寝床とかに入ってきて、勝手に脱がされて、裸で抱き合ってる写真とか撮られて、ヤってもいないのにでっちあげ事実とか作られそーだ。
 施設はガキがいるから安心だ――って、俺の方が安心しちまうなんて、一体どーいうコトなんだ?


 それより、俺のいない間にキノコが美羽に手を出さないか、コッチの方が心配だ。
 アメリカから帰ってきたら二人が男女関係になっていたとか、結婚してたとか、そんな事になってたら、もうシャレになんねーぞ!

 俺は一体、何のためにアメリカへ行くんだ。
 行く意味が解んなくなってきたから、マジで行くの止めたい。どーすりゃいーんだ!


 最近の俺は、考えるとコレの繰り返しだ。


 プロジェクトも大詰めなんだ。しっかりやらなきゃ、世界一の男にはなれねーぞ。
 わかっちゃいるが、キノコが俺の邪魔をする。妹までが、俺の邪魔をする。
 兄妹揃ってマジで邪魔。関係者じゃなかったら、俺の財力で何とでもしてんのに、それもできねー。


 あぁ、もう、大丈夫なのか、色々。


 考えすぎて、ハゲそうな気がしてきた。


 キノコがいるもんだから、俺はまだガキ共や美羽に、アメリカへ発つことを話せていない。
 ヤツは諸手を挙げて俺がいなくなることを喜び、チャンスとばかりに美羽に近づき、モノにしようとするだろう。

 こーなりゃアメリカ行きを話さず、向こうの案件もチャッチャと終わらせ、二週間くらいで戻れたら、俺がアメリカに行ってるなんてバレねーかな。何とかごまかせるかな?



 大がかりなプロジェクトから、やっぱそれは無理だろーなぁ。



 はぁぁぁ。どーすっかな。何て言おう。
 遠回しに言っても通用しねーしなぁ。もう、ハッキリ言うしかねーよな。



――アメリカ行くんだ。暫く帰って来れねーから・・・・お前を忘れない為にも、一発ヤらせてくんねーかな?



 俺はバカか。そんなコト言ったら、ビンタで即終了だろーが!
 それで合体出来るなら、今までこんな苦労はしねーっつーの!
 はー。もう、やめやめ。
 今日、とりあえずライタの誕生日祝いやるんだ。ウルトライダーの計画の事は、事前に美羽だけに話してある。
 ヒーローショーみたいなものは初めてだし、きっと子供達が喜ぶから、本当にありがとう、って言ってくれたんだ。

 さ。施設に帰ろう。
 今日あたりアメリカへ行くことは、美羽だけにでも話さなきゃな。
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