42 / 150
スマイル23
オトコの事情・2
しおりを挟む「プリンターの調子が悪いのよ。もう、随分使っているから、時間かかっちゃった。ごめんね」
カメラと一緒だな。それも今度施設に来るまでに、俺が買っておいてやるから。
黙っておいて、驚かせてやろう。
喜んでくれるに違いない。
「いい写真、撮れたわよ。ホラ」
美羽が見せてくれたのは、お菓子の家をバックに、ガキ共に囲まれて、満面の笑みで笑いあっている俺達の姿が収められた写真だった。
最後に撮った写真だ。
俺、こんな風に笑ってたんだ。
自分がこんなに笑ってる姿、初めて見た。
「王雅、貼ってよ。そこに」
丁度写真を見終わったところで、今から新しい写真を貼ろうと思っている最後のページを開いていたから、美羽が俺に写真を渡してきた。
「えっ、いいのか?」
「モチロンよ。透明のフィルムめくって、のりがくっついている面に、写真を優しく置いて、もう一回透明のフィルムを元に戻すのよ。空気が入らないように、気を付けてね」
「何か、難しそうだな。俺がやったら上手くできなくて、汚くなると思う。やっぱ、美羽がやってくれよ」
「じゃあ、一緒にやりましょ」
美羽が俺の横に座って来た。狭いソファーだから、二人座ったらもういっぱいで、密着するんだ。
おい、イカンて、それ。
手、出ちゃうぞ?
手だけじゃなくて、エロくて危ないヤツも、俺の中から出て来るぞ?
いーのか?
お前、俺を施設出禁にしたいのか!?
ダメだダメだ、堪えろ、櫻井王雅!
俺は世界一の男になるんだろっ!!
美羽の同意が取れるまでは、手を出さないって決めたじゃないか!
悪夢を再現する気か!?
美羽が横に座って来たっつーだけで、あたふたしてどーするんだ!
いや、待ってくれ。いくら世界一の男でも、この状態じゃオオカミになるって。
密室に二人きりで、しかも密着横並びなんて、ゴーモンじゃねーかぁっ!!
だってな、俺はもう、ずっと日照り続きで渇いてるんだ。
潤いを求めてんだ。現状、砂漠を水も飲まずに歩いてる、旅人のようなモンだ。
わかるだろ?
オアシスで水を見つけたら、欲しくなるだろ?
ガブガブ、心ゆくまで飲んじゃうだろ!?
そんな状態だ。
それでおあずけっつーのは、キツイだろ。
俺に水をくれ、水を。
「ほら、こっちの手、貸して」
美羽に手を伸ばそうとしたら、逆に手を取られた。
透明のフィルムに手が当てられ、ここからめくるのよ、と教えてもらったのでそれをめくった。
美羽の手が俺の手に添えられているから、ドキドキする。
でも俺はフィルムじゃなくて、お前の服をめくりたい。
「開いているところに写真を置くの。それを軽く押さえて・・・・あっ、そうそう、イイ感じ! 上手よ、王雅。うん、そう・・・・優しく・・・・あっ、ダメっ、そんなに乱暴にしちゃ・・・・」
おいっ!!
美羽っ! お前、後半、エロすぎ!!
上手よ、王雅、優しくって・・・・ダメっ、乱暴にしちゃって、ナニしてんだよっ!?
言い方も何か、色っぽくてエロいし。
っつーか、俺は上手いぞ?
乱暴にはしねー代わりに、ここではとても言えないような、エロくてスゲーのやっちゃうぞ。お前、耐えれんのかよ。
言っとくけど、俺を焦らせた罪は重いからな。泣いて謝っても、赦してやんねーぞ?
ま、そういう意味では、乱暴かもしんない――じゃなくて!
写真貼ってんだろ!
イケナイコトしてるみたいなセリフ、言うなよっ。勘違いしちまうだろっ!
あぁ、もう――っ!!
俺は、お前に施設を締め出されたくねーんだぁっ!!
出禁喰らいたくねーんだぁっ!!
解ってくれよっ、このオトコの事情!!
泣きたい。マジで辛いぜ。
そうだ。妄想しよう。できるだけ、この火照りを覚ませられるような、ソフトなヤツだ。それで堪えよう。
――――・・・・
――お前、俺を誘ってんのか? そんなヤラシーセリフで。
――何言ってるの、違うわっ・・・・きゃあっ! ちょっと、ドコ触ってんのよっ!
――もう、我慢できねー! お前が悪いんだからな。俺様をこんなにしやがって、責任取れ!
――王雅っ、あっ、ダメっ――・・・・
スト――――ップ!
だめだ、だめだ、だめだ――――っ!!
これはただの、そーなりたいっていう、俺の希望じゃねーかっ。
それ以上ヤッちゃったら、マジでもう、現実の方が止まんなくなっちまう!
欲求不満すぎて、ソフトなヤツ、なんっっっっにも出てこねー。
かなりヤバい。過激なヤツしか今の俺には、引き出しがねーぞっ。
何とか・・・・何とかしなければ。
マジ出禁になるっっ。
「はい、できたっ」
美羽が俺の手に重ねていた手を取って、にっこり笑った。
「一緒にやったら、ちゃんとできたでしょ?」
「ああ、うん」
いや、俺は今、それどころじゃねーんだ。
写真が上手く貼れたとか、透明フィルムがちゃんと元に戻せたかどうかとか、もう、どーでもいーんだ。
今も震えてる。心臓も驚く程ドキドキしてる。早く手、離してくんねーかな。
お前に触れたくて、しょうがなくて、ヤバいんだ。プルプルしてんのを、必死に堪えてんだ。察してくれ。
0
お気に入りに追加
204
あなたにおすすめの小説
【完結】殿下、自由にさせていただきます。
なか
恋愛
「出て行ってくれリルレット。王宮に君が住む必要はなくなった」
その言葉と同時に私の五年間に及ぶ初恋は終わりを告げた。
アルフレッド殿下の妃候補として選ばれ、心の底から喜んでいた私はもういない。
髪を綺麗だと言ってくれた口からは、私を貶める言葉しか出てこない。
見惚れてしまう程の笑みは、もう見せてもくれない。
私………貴方に嫌われた理由が分からないよ。
初夜を私一人だけにしたあの日から、貴方はどうして変わってしまったの?
恋心は砕かれた私は死さえ考えたが、過去に見知らぬ男性から渡された本をきっかけに騎士を目指す。
しかし、正騎士団は女人禁制。
故に私は男性と性別を偽って生きていく事を決めたのに……。
晴れて騎士となった私を待っていたのは、全てを見抜いて笑う副団長であった。
身分を明かせない私は、全てを知っている彼と秘密の恋をする事になる。
そして、騎士として王宮内で起きた変死事件やアルフレッドの奇行に大きく関わり、やがて王宮に蔓延る謎と対峙する。
これは、私の初恋が終わり。
僕として新たな人生を歩みだした話。
余命宣告を受けたので私を顧みない家族と婚約者に執着するのをやめることにしました
結城芙由奈
恋愛
【余命半年―未練を残さず生きようと決めた。】
私には血の繋がらない父と母に妹、そして婚約者がいる。しかしあの人達は私の存在を無視し、空気の様に扱う。唯一の希望であるはずの婚約者も愛らしい妹と恋愛関係にあった。皆に気に入られる為に努力し続けたが、誰も私を気に掛けてはくれない。そんな時、突然下された余命宣告。全てを諦めた私は穏やかな死を迎える為に、家族と婚約者に執着するのをやめる事にした―。
2021年9月26日:小説部門、HOTランキング部門1位になりました。ありがとうございます
*「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
※2023年8月 書籍化
ずぶ濡れで帰ったら彼氏が浮気してました
宵闇 月
恋愛
突然の雨にずぶ濡れになって帰ったら彼氏が知らない女の子とお風呂に入ってました。
ーーそれではお幸せに。
以前書いていたお話です。
投稿するか悩んでそのままにしていたお話ですが、折角書いたのでやはり投稿しようかと…
十話完結で既に書き終えてます。
【完結】聖女の手を取り婚約者が消えて二年。私は別の人の妻になっていた。
文月ゆうり
恋愛
レティシアナは姫だ。
父王に一番愛される姫。
ゆえに妬まれることが多く、それを憂いた父王により早くに婚約を結ぶことになった。
優しく、頼れる婚約者はレティシアナの英雄だ。
しかし、彼は居なくなった。
聖女と呼ばれる少女と一緒に、行方を眩ませたのだ。
そして、二年後。
レティシアナは、大国の王の妻となっていた。
※主人公は、戦えるような存在ではありません。戦えて、強い主人公が好きな方には合わない可能性があります。
小説家になろうにも投稿しています。
エールありがとうございます!
本日、私の大好きな幼馴染が大切な姉と結婚式を挙げます
結城芙由奈
恋愛
本日、私は大切な人達を2人同時に失います
<子供の頃から大好きだった幼馴染が恋する女性は私の5歳年上の姉でした。>
両親を亡くし、私を養ってくれた大切な姉に幸せになって貰いたい・・・そう願っていたのに姉は結婚を約束していた彼を事故で失ってしまった。悲しみに打ちひしがれる姉に寄り添う私の大好きな幼馴染。彼は決して私に振り向いてくれる事は無い。だから私は彼と姉が結ばれる事を願い、ついに2人は恋人同士になり、本日姉と幼馴染は結婚する。そしてそれは私が大切な2人を同時に失う日でもあった―。
※ 本編完結済。他視点での話、継続中。
※ 「カクヨム」「小説家になろう」にも掲載しています
※ 河口直人偏から少し大人向けの内容になります
公爵様、契約通り、跡継ぎを身籠りました!-もう契約は満了ですわよ・・・ね?ちょっと待って、どうして契約が終わらないんでしょうかぁぁ?!-
猫まんじゅう
恋愛
そう、没落寸前の実家を助けて頂く代わりに、跡継ぎを産む事を条件にした契約結婚だったのです。
無事跡継ぎを妊娠したフィリス。夫であるバルモント公爵との契約達成は出産までの約9か月となった。
筈だったのです······が?
◆◇◆
「この結婚は契約結婚だ。貴女の実家の財の工面はする。代わりに、貴女には私の跡継ぎを産んでもらおう」
拝啓、公爵様。財政に悩んでいた私の家を助ける代わりに、跡継ぎを産むという一時的な契約結婚でございましたよね・・・?ええ、跡継ぎは産みました。なぜ、まだ契約が完了しないんでしょうか?
「ちょ、ちょ、ちょっと待ってくださいませええ!この契約!あと・・・、一体あと、何人子供を産めば契約が満了になるのですッ!!?」
溺愛と、悪阻(ツワリ)ルートは二人がお互いに想いを通じ合わせても終わらない?
◆◇◆
安心保障のR15設定。
描写の直接的な表現はありませんが、”匂わせ”も気になる吐き悪阻体質の方はご注意ください。
ゆるゆる設定のコメディ要素あり。
つわりに付随する嘔吐表現などが多く含まれます。
※妊娠に関する内容を含みます。
【2023/07/15/9:00〜07/17/15:00, HOTランキング1位ありがとうございます!】
こちらは小説家になろうでも完結掲載しております(詳細はあとがきにて、)
【完結】やさしい嘘のその先に
鷹槻れん
恋愛
妊娠初期でつわり真っ只中の永田美千花(ながたみちか・24歳)は、街で偶然夫の律顕(りつあき・28歳)が、会社の元先輩で律顕の同期の女性・西園稀更(にしぞのきさら・28歳)と仲睦まじくデートしている姿を見かけてしまい。
妊娠してから律顕に冷たくあたっていた自覚があった美千花は、自分に優しく接してくれる律顕に真相を問う事ができなくて、一人悶々と悩みを抱えてしまう。
※30,000字程度で完結します。
(執筆期間:2022/05/03〜05/24)
✼••┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈••✼
2022/05/30、エタニティブックスにて一位、本当に有難うございます!
✼••┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈••✼
---------------------
○表紙絵は市瀬雪さまに依頼しました。
(作品シェア以外での無断転載など固くお断りします)
○雪さま
(Twitter)https://twitter.com/yukiyukisnow7?s=21
(pixiv)https://www.pixiv.net/users/2362274
---------------------
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる