【R18】お前が好きだから、仕方なく付き合ってやる ～笑顔でお断りしましたが、何か？～

８．専務に呼び出され、社長と神戸に出張へ（緊張します）

２

　目的のクラブパーツに到着した。というのも、ミッキー商店から目と鼻の先にある。浅草で色々揃えようと思ったら、何でも賄えるから有難い。しかし、戦後活気があった問屋街も、随分と寂（さび）れてしまった。また、最近シャッターを下ろす店が増えた気がする。

　先日、ミッキーから借りておいた先程オーダーしたファーを、シューズクリップに加工して貰ったものを見せてもらった。サンプルの出来上がりだ。


「わ、かわいい！」

　手に取った瞬間、思わずかわいいと声が出た。

　手触りの柔らかなフェイクファーに、きちんとシューズクリップになるようにパーツが取り付けられている。
　流石クラブパーツの職人ならではのクオリティーだ。きちんとパーツ付けが、ずれることなく出来上がっている。ファーについては本当ならリアルファーにしたいところだけれど、動物の毛を使うのは反対。変な話、フェイクは本物に手触りこそ負けるけれど、本物の毛のようにぺたんこにならないから、ボリュームアップで可愛く盛れる。そこがいいのだ。足元の演出、映えるぞ。


「取り付けてみてもいいですか？」


　サンプルなので、黒・白のファーを自分のパンプスに取りつけた。パーツが足の表面に当たっても痛くないし、柔らかい肌触りに満足だ。
　大きさは直径七センチくらいで、見た目のボリュームも最高だ。素敵な出来栄えに、思わず心がウキウキした。

「バッチリだな。いい出来具合だ」

　福士社長も満足そうにうなずいた。私もそう思う。

「あと、オーダー頂いておりました、特注のビジュークリップです」

　三日月のような形をした、全てにスワロフスキーやビジューをあしらった、豪華なシューズクリップを見せてもらった。これは、フクシがこのレインボーパンプスに合わせて特注したシューズクリップになる。

　このパンプスは、結婚式用にも売り出したい。一緒にクリップも売るから、特別豪華なデザインで、高いものを作って欲しいとお願いしていたのだ。
　ファーのクリップと交換し、ビジュークリップを取り付けた。これだけで足元が華やかになって、気分が高揚する。


「素敵ですね！」


　デザインもいい。どれも素晴らしい出来栄えに、また一歩展示会での成功の道が見える。
　この特注のクリップも、最低ロットの三百という数をオーダーした。白のパンプスと合わせれば、たちまち結婚式の花嫁の足元を引き立たせる魔法の靴に早変わりだ。クリップの値段は結構高額になりそうだけれど、特別感のある人目を惹くものになったから、きっと注文が貰えると思う。


　サンプルを受け取り、オーダーしたものが展示会に間に合うように納期の確認をして、クラブパーツを後にした。