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戦況はというと(サムロが解説する)

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 わが国は、イーヨカン王国は、北西にポーンカ王国、南にウーコ共和国、東にカーン帝国、北にグレブ王国に囲まれている。南西は海洋に面しているが、ある意味ポーンカ王国北西部とさらに西の島に領地をもつオレン共和国(国王はおり、かなりの権力をもっているものの、議会、わが国の議会のかなり以前の形とはいえ、や各州の権限が強いことから共和国となっている)とウーコ共和国内にあるほぼ独立国であり、かつ同共和国の構成国である(その枠を巧に出ないようにしている)ナーツ共和国という2大通商海軍国に対峙してしていると言えた。
 それらの全ての国々と合従連衡しながら、同時に戦いあってきたきたのである、長年。特にナーツ共和国とは5代前の国王陛下の時代から長年にわたり海外領土、利権を争って激しく戦争を繰り広げてきた。英主であった五代前の国王時代でも互角だったが、4代前の国王陛下、贅沢、特に女にかけては、と陣頭指揮もできない弱腰から連戦連敗、多くの海外領土を失い財政をひっ迫させてしまった。大陸内での戦争も合従連衡の失敗もかさなり、苦渋を嘗めさせられた。3代にわたる各国王陛下たちは、そのしりぬぐいに寿命をすり減らして、ナーツ共和国には一矢も二矢、いや三矢くらいは報い、大陸内での失地も回復してきたが、財政難はさらにひどくなった。何とか国が崩壊しない程度に、国民生活を苦しくせずに少しは豊かに、国民経済を衰えさせずに少しでも発展させることに成功していたわけだから評価しなければならないだろう、微温的な改革に終始してきたとはいえ、一環として進めてもきた。ただ、その全てが周辺諸国に脅威と見られて、脅威とみられなければならない面だってあるが。そして、パパイ大公の反乱姿勢と巧みな外交活動で対イーヨカン王国包囲網連合が形成されてしまったのである。それに、先代の国王陛下が成立させた和平条約、平和条約は、我が国内と同様、各国の国内でも、
「軟弱外交だ。」
「イーヨカンにしてやられた。白紙撤回しろ。」
と反対派も多かったから、当然和平反対派も多かったからである。

 パパイ大公の下には、希代の謀略家、外交家がいるらしい。デュナの話によると、大公領の宰相がそれで、彼は軍師でもあるそうだ、しかも希代の。ただ、
「まあ、希代の軍師様よね、参謀長じゃなくてね。半分、本の上でだけだし。」
とデュナが鼻で笑っているから、時代遅れ、机上の空論が多いのだろう。それでも、外交官としては希代であると言えるだろう、これだけのことをしたのだから。

 とはいえ、我が国の外交担当、外務省も馬鹿ではない、特に、イチジーク書記官が鍛え、優れた後任者を残して去ったこともあり、何とか頑張ってくれたし、我がコリアンダー公爵家とピール公爵家も上から下まで、がんばったから、対イーヨカン包囲網連合諸国内での反対派はかなり多かったらしい。オレン共和国は金を提供するだけで、本格的な参戦はしない方向であり(海外領土向きはそうではないが)、国内が多くの領邦からなるカーン帝国や小国、都市共和国から成るウーコ共和国では戦いたい者だけで参加してもよいという方向になっており、ナーツ共和国は我関せずというところであり、かなり数は減っている。減らしたと言いたい、思いたい。

 ちなみにグレブ王国も、単一王国とは言えない国家で、パパイ大公への軍への派兵は、それを望む諸国、部族にまかせるということに落ち着いて。

 そして、ほぼ同一に各国勢力は動き出した。コリアンダー公爵家とピール公爵家の砦、要塞はポーンカ王国、ウーコ共和国軍が、それぞれに攻撃を開始し始めた。我が砦に、要塞に足止めされた。俺やデュナの陣頭指揮による野戦部隊も積極的に活動し、各地で勝利を得た。その結果、侵攻軍はかなりの損害を受けたこともあって、活動が消極的になった。これに感染した、勇気を得たのか、我ら両崖の国軍要塞や野戦陣地でポーンカ王国、ウーコ共和国、カーン帝国軍の動きは止まった。

 が問題は王都周辺だった。望まない予想どおり、パパイ大公軍は、王都に直接侵攻を開始したよね。
「義兄殿。姉上。王都は私にまかせて下さい。」
と学生の身ながら、デュナの弟が心強い言葉をくれたる。
「弟は、誰かさんに評価される頑張りを見せたいようよ。それ、誰かしらね~?」
と怖い笑みを浮かべて、
「余計な事は言っていないわよね?入れ知恵はしていないでしようね~?」
 こっちだって妹達に余計なことを・・・と思っていたんだけどね。でも、奴らね
「わたしがしっかりお助けいたします。」
「どこまでもついていきますから。」
などと以上に張り切っているようなんだが・・・。

 パパイ大公・グレブ王国連合軍の侵攻、国軍の一部の離反、貴族達の反乱どで王都周辺までうまく侵攻されることになってしまった。
 劣勢な国軍に、少数ながらコリアンダー公爵家・ピール公爵家軍、ガマリア王妃・ブルべエリ男爵がかき集めた傭兵軍に、イチジーク会長もとい元書記官率いる義勇軍が加わり、必死に防戦中といつたところである。ちなみに、大公を慕う農民軍の大半は、たちまち幹部達が大公の工作員と関係が深いことが判明して自戒、民衆の造った不落の要塞は、どれも半日で焼き落ちた。

 そのような戦況から、何とかかき集められる兵力、あくまで余力の上でだ、を率いた俺とデュマは合流して王都救援に向かうことになった。

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