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①一目惚れした私と貴方 / 10,660文字
4. 美醜逆転の世界だった件
しおりを挟む何度目かのデートの時、私は思い切ってユリウスに仮面を付けてる理由を訊いてみた。
なにか理由があるのだろうなと思っていたし、ユリウスの顔は美しすぎるから、仮面をしてくれている方がちょうど良いくらいなのだが、そろそろキスくらいはしたくなってきて、尋ねてみた私。
そうして教えてもらったのは衝撃の事実で、私はこれまで気のせいかなと無視してきた違和感の正体を知ったのだった。
「平凡な私が美人で、美貌のユリウスが不細工……」
「そうだ。なんでかマナには俺がカッコ良く見えてるらしいけどな、世間では俺は最高の醜男なんだよ」
「信じられない……あ、ユリウスが嘘を言ってると思ってるわけじゃないよ? ただ、あまりにも衝撃的でつい」
「だから俺はマナがいつ他の男に掻っ攫われるか心配だし、常に誘拐の可能性を警戒してる」
「そっか。心配性だなとは思ってたけど、そういう理由だったんだね」
私はユリウスの手に自分の手を重ね、改めて感謝の気持ちを述べる。
「ありがとう、ユリウス。いつも私を守ってくれて……そういうことなら、私もなるべく一人にならないように気をつけるね」
「あ、あぁ。そうしてくれ」
私がジッと彼を見つめると、フッと視線を逸らすユリウス。彼の耳が赤くなっていて、照れているのだということがわかる。
可愛くて、優しくて。心配性で、照れ屋で、イケメンで。強くてカッコいい、私の恋人。私のことをすごく大切にしてくれて、私はどんどん彼のことを好きになる。
一緒にいるだけで幸せで、なのにもっと深い関係にもなりたくて。ままならない感情に振り回されながら、恋をしていることを実感する毎日だ。
※ ※ ※
初めてユリウスのお家に招かれた日は、ものすごく緊張したけれど、料理をしているうちに緊張もほぐれ、私は幸せを感じていた。
ユリウスのお家はこじんまりした一戸建てで、一人暮らしには十分な広さがあるお家だった。キッチンも充実しているし、私の部屋にはないオーブンもある。料理の幅が広がって嬉しかった。
デートの後にはユリウスの家に寄って、夕飯を作り、二人きりの時間を過ごすのが恒例になっていた。ユリウスの素顔を見られる、貴重な機会でもあった。
ユリウスは私の作るごはんを気に入ってくれて、旨い美味いと言って食べてくれる。なんだか新婚さん気分になって、くすぐったい私だった。
「今日のコレはなんていうんだ?」
「これはねぇ、風呂吹きダキオンって言うの。このソースは味噌っていうのを使ってるんだ。最近みつけた調味料でね、私の故郷でよく使われてた調味料なんだ」
「ふーん。マナの故郷の味か」
「気に入った?」
「あぁ。食堂に出すメニューに加えて欲しいくらいだ」
「そんなに? ふふっ、私もこの優しい味が好きだから、ユリウスが気に入ってくれて嬉しいけど」
洋風料理ばかりのこちらの世界で、醤油や味噌に似た調味料が見つかったのは幸運だった。輸入品らしくて少しお高いのがネックだけど、ここでも和食が食べられるのは嬉しかった。
※ ※ ※
夕飯の後片付けは、決まってユリウスがしてくれる。私が作ってくれたのだから、後片付けを自分がするのは当然だそうだ。そんなところも好ましい。ユリウスは素敵な旦那さんになりそうだなと思う。
私が思ったことを口にすると、ユリウスが驚いたように振り向く。
「それは、つまり、マナが俺の嫁になってくれるってことか?」
「え。あ……そうなれたら、嬉しいけど……」
まさかの逆プロポーズみたいな展開に、私の頬が熱くなる。熱くなった頬を押さえて俯いていると、座っていたソファーの前にユリウスがやって来て跪く。
「マナ、正直言って俺にはマナしか考えられない。まだ出会って三ヶ月も経ってない俺達だけど、俺はマナにずっと側にいて欲しいと思ってる」
「ユリウス……あの、私も。ずっとユリウスの側にいたいの」
ユリウスがそっと私の手をすくいとって、指先に口付ける。恥ずかしいのに嬉しくて、そこから幸せに痺れていくようだった。
「愛してる、マナ。俺と結婚して欲しい」
「はい。私もユリウスを愛してる。私の旦那様になって」
「マナ……」
「ユリウス……」
自然と顔が近づいて、私とユリウスは口付けを交わす。
私の隣に座ったユリウスが、私の腰に腕を回して抱き寄せる。私はユリウスの逞しい体に身を預け、そっと首に腕を回した。
だんだんと深くなっていく口付け。必死で鼻呼吸をしながら、私はユリウスと溶け合っていった。
そうして、その晩ついに私はユリウスと結ばれて。
ユリウスのお家にお泊まりしたのだった。
初めてとは思えないくらい、ユリウスの愛撫は巧みで、私はこれ以上ないくらいに蕩させられて深みに落とされる。
きっと私はもうユリウス無しでは生きられない。そう確信する程の、熱くて幸せな夜だった。
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