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第二章
【四】星夜―白馬の王子は誰だ?
しおりを挟むアジャール王子は一般の生徒と同じ教室で授業を受ける事になった。
警備の都合上、一番後ろの窓側から俺、王子の側近、アジャール王子、側近が座ることに。王子の周囲は側近で固められて、さらに教室の四隅には警備員が配置された。厳重な警備体制に生徒達はびびっていたけれど、じきに授業へ集中し始めた。
海人は席の移動を余儀なくされて、むっとしていた。
五時限目が終了し、下校時間になった。俺と海人はアジャール王子にかまけている場合じゃなかった。
月子ちゃんの見合い相手が三人、校門までやってくるのだ。
終礼と同時に海人が視線で合図したので、月子ちゃんに耳打ちしてダッシュで教室を飛び出した。
「萩野兄妹が出て行ったぞ!」
「お見合いイベントだ!」
おいクラスメイト、余計なことを!
「荻野さん、待って。私も行くわ!」
蜂谷さんと腐女子仲間がダッシュで着いてきた。
俺たちはローファーに履き替えて、昇降口から校門のある緩い坂道を徒歩で下っていく。
「萩野さん、三人のお相手が本当にくるの?」
「ええ。祖母からメールが来たの。あと十分ほどで到着するはずよ」
「月子、三人一度に会うのか?」
「いいえ、お兄様。十五分ずつずらして時間を指定したんですって。最初は……」
スマホで釣書でも確認してるのか、月子ちゃん?
「鰐川(わにがわ)建設の次男坊ね。二十一歳ですって」
「ロマンチックって、どんなふうに現れるのかしら?」
「しっ。多賀城さん。お願いだから黙ってて」
蜂谷さんは罪悪感で顔色が悪い。黄色い国旗がはためいている黒塗りの車三台が横づけされた。
「キミタチ、ナニヲシテイル?」
ちょ、こんな時に余計な奴きたー。
「さようなら、アジャール王子」
「さようなら」
「きゃ~。アジャール王子、さよなら~」
空気を読んで、クラスメイトは挨拶で送りだそう作戦を遂行してるぞ。いいぞ、さっさと帰れ。故郷に直行してもいいぞ。
「俺はもう、王子と側近と取り巻きしかいない教室はいやじゃ~」
「お前、そんな目に遭ってたのか……」
海人の声に同情が滲んでいた。百メートルあまりで校門へと到着し、警備員へ挨拶しながら敷地外に出た。
「カイト。卒アル、ミタイ」
ゲッ。まだいた。
「ヤバい、もうそろそろ来るぞ」
俺が焦っていたら、月子ちゃんがアジャール王子へ説明を始めた。
「アジャール王子。今からこの場所へ私の見合い相手が来ます。騒がしくなりますので、どうぞ安全な場所へ移動なさってください」
「オミアイ! オオッ。ココデ?」
瞠目してから、アジャール王子が同乗している側近へ指示を出した。やれやれ、ようやく帰るのか。
三台目から側近が降りてきて、真ん中の車のドアを開いた。
おい、何でだよ!
アジャール王子は颯爽と近づいてきて、海人の両肩を掴んだ。
「卒アル、イエニアルカ」
「あ、ああ」
「ジャ、ワタシモ、イッッショニイエニ、カエロウ」
お見合いが気になるんじゃないんかーい!
「ブロマ~ンス!」
蜂谷さんが叫んだ。
キキキー。
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