26 / 39
第二章
【二】星夜ー祖母ちゃんの商業デビューと月子ちゃんの試練③
しおりを挟む「みんな、ちょっと聞いてくれ」
俺の言葉に非難が止んだ。男子生徒もこちらに注目している。非常に言いにくい……。
「その、月子ちゃんには同人誌の作り方を教えてもらってたんだ。だから、みんな誤解しないでくれ」
「同人誌?」
「もしかして、エロ漫画同人誌か?」
男子の食いつきがすげえ。
「いや、小説だよ」
「小説!」
「若生君、小説書くの?」
今度は女子達から質問が飛ぶ。
「いや、俺じゃないよ。その、俺の祖母ちゃんがBL小説家なんだが……」
片手で口を覆い、もごもごと早口で告白した。
「「「BL小説家‼」」」
教室が喚声(かんせい)で揺れた。……ような気がした。
「きゃー。若生君、腐男子?」
「マジ?」
「いや、祖母ちゃんだよ!」
「私は腐女子よ。それに漫画も描いてるの。だから星夜君のお祖母さまに表紙を依頼されて、相談してたの」
月子ちゃんは凜として美しかった
。
「なんだ~」
「恋人じゃないんだ」
ふう。これで騒動が収まってくれるかな。
「それでもずるいわよ。なんで若生君は他の女子と遊ばないの?」
「やっぱり萩野さんが好きなんじゃないの?」
「えー」
「萩野さんは婚約者いるんでしょ?」
「はしたない……」
「ずるい」
だんだんと悪意に満ちた言葉が湧いてくる。
「うわー。女子全員が萩野をいじめてるぜ」
「女ってこわ……」
男子が怯えたフリをして面白がっていた。
「俺の妹を侮辱するな!」
海人が氷の視線を浴びせると、生徒たちは凍り付いた。
「そうだよ。月子ちゃんは悪くないぞ!」
俺が援護したら、女子からブーイングが。何でだよ!
「お兄様、星夜君、ありがとう。私の認識が甘かったみたい。そうね、皆様には真実をお伝えしましょう。私には三人の夫候補がいます。萩野家当主が選んだ方です。本来なら、去年のうちにお見合いして婚約する予定でしたが、私の我が儘で先延ばしにしているのです。ですが、そろそろ覚悟を決めなくてはならないようです」
「月子、なにをいってるんだ。お見合いなんて俺は知らないぞ?」
「お兄様、まだ話は終わっていませんわ」
理知的な瞳で海人の疑問を封じ、クラスメイトを見渡した月子ちゃんは、宣言した。
「皆さんの疑心暗鬼を消すためにも、夫候補と会うつもりです」
「お見合いをするつもりなのか?」
海人が月子ちゃんの肩を揺さぶる。
「ええ。卒業後に結婚するわ。ですから、その前に同人活動を満喫したかったの」
「「!」」
「そ、そんなの、口だけでどうにでも言えるわ。本当に相手がいるのかしら?」
蜂谷さんは引き際を知らないらしい。
にらみつける蜂谷さんへ視線を投げた後、月子ちゃんはスマホを取り出して電話をかけ始めた。
プルルルル。
「もしもし、お祖母さま。お見合い相手に伝えてください。今日の放課後、私を迎えに来た相手と結婚します」
11
お気に入りに追加
82
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
三度目の庄司
西原衣都
ライト文芸
庄司有希の家族は複雑だ。
小学校に入学する前、両親が離婚した。
中学校に入学する前、両親が再婚した。
両親は別れたりくっついたりしている。同じ相手と再婚したのだ。
名字が大西から庄司に変わるのは二回目だ。
有希が高校三年生時、両親の関係が再びあやしくなってきた。もしかしたら、また大西になって、また庄司になるかもしれない。うんざりした有希はそんな両親に抗議すべく家出を決行した。
健全な家出だ。そこでよく知ってるのに、知らない男の子と一夏を過ごすことになった。有希はその子と話すうち、この境遇をどうでもよくなってしまった。彼も同じ境遇を引き受けた子供だったから。
高度救命救急センターの憂鬱 Spinoff
さかき原枝都は
ライト文芸
フェローは家畜だ。たっぷり餌を与えて…いや指導だ!
読み切り!全8話
高度救命救急センターの憂鬱 Spinoff 外科女医二人が織り成す恐ろしくも、そしてフェロー(研修医)をかわいがるその姿。少し違うと思う。いやだいぶ違うと思う。
高度救命センターを舞台に織り成す外科女医2名と二人のフェローの物語。
Emergency Doctor 救命医 の後続編Spinoff版。
実際にこんな救命センターがもしもあったなら………
俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない
亮亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。
不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。
そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。
帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。
そして邂逅する謎の組織。
萌の物語が始まる。
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活
XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる