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第二章
【一】星夜ー『ラン★とゆかいな仲間たち』
しおりを挟む「このハンバーガー、最高!」
「肉汁がたまらんな~」
「星夜、お風呂に浸かったオッさんみたいだぞ」
ルカ叔母さんのビックリ発言の後で俺の腹が鳴ってしまい、庭のバーベキューコンロに火がともされた。アウトドア用の折りたたみテーブルや椅子が追加されて、ハンバーガーのランチ会が開催された。
キッチンのテーブルでは荻野家の運転手さんがダブルバーガーにパクついていた。
「凄いね、このバーベキューコンロ。手作りだよね」
「うん。祖父ちゃんが作ったんだ。週末になるとアウトドア料理が夕飯だったな~」
「隣に鉄の扉もあるのね。もしかして、ピザも焼くの?」
「うん。ラン祖母ちゃんのパンも。焼きたては旨いぜ!」
「もしかして、このバンズも?」
制服の上着を脱いだ海人は、シャツを腕まくりしてハンバーガーにかぶりつく。月子ちゃんは上品に一口食べて、えくぼができた。
「ランおばさま、とてもおいしいです」
「ありがとう」
ラン祖母ちゃんはニコニコして手作りのレモンシロップに炭酸を注いでいた。客人たちは春の日差しが降り注ぐ庭で喉を潤し、満足げに頷いた。
「ここはとても景色がいいな!」
海人の言葉に嬉しくなった。
「そうだろ。仙台平野が海まで続いて、すごく心が穏やかになるんだよ。俺の大好きな景色さ。これが見たくて帰ってきたんだ」
「同人誌の制作スケジュールは私がラインするわね。ところで月子ちゃん。あなたは漫画も描くのよね。作品を見せてもらってもいい?」
「はい。投稿サイトのリンク送りますね」
ピロリン。
ルカ叔母さん主導でLIN○グループが作られた。グループ名は『ラン★とゆかいな仲間たち』。
メンバーは、ラン祖母ちゃん、ルカ叔母さん、俺と海人、月子ちゃんの五人。腐界の協力者が現れたら、ルカ叔母さんが面接する、とのこと。
「月子ちゃん、私の同人誌の表紙を描いてちょうだい!」
俺の隣に座るラン祖母ちゃんが叫んだ。
「ええっ⁉」
「依頼料はきちんと払うわ。相場はいくらかしら?」
「お母さん、落ち着いて。まずは見積もり依頼をして、互いに納得したら描いてもらうのが一般的よ」
「そうなのね」
「月子ちゃんの絵が気に入ったのね」
「ええ。ほら、見て」
祖母ちゃんのスマホには、金髪イケメンと黒髪の少年がチューしてる絵が映されていた。
「ね、萌えるでしょ?」
「燃える?」
「星夜君、バーベキューの燃えるじゃないよ。くさかんむりに明るいの、萌えるだよ!」
月子ちゃんが鼻息荒く訂正した来たぞ。
「妹よ、落ち着け」
「だって、絵の依頼なんて初めてなんだもの。感激です!」
「まだ依頼料も聞いてないのに」
ルカ叔母さんが苦笑いだ。
「お金なんていりません!」
「それはダメよ。母さんはクリエイターとしてあなたに依頼してるのだから、見積もりを出してちょうだい」
「わかりました」
そんなわけで、同人誌の表紙まで決定してしまった。何という急展開。なんだか運気が上昇してきたんじゃないか、ラン祖母ちゃん。ルンルンでスマホを操作していた祖母ちゃんの表情が、みるみる曇っていった。
「あ……また毒感想が来たわ」
「「毒感想!?」
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