19 / 39
第一章
【六】星夜―腐女子の遭遇④
しおりを挟む
「星夜が帰ってきたおかげで月子ちゃんとも出会えたし、これからはワクワクイベントへ向けて、甥っ子には大活躍してもらうわよ」
あれ、俺のミッションはひとつじゃないのかー?
「ワクワクイベントって何?」
ラン祖母ちゃんの顔が輝いている。こんなに弾んだ声は久しぶりかもしれない。
「ワクワクイベントその一、ネットBL小説家『ラン★』の同人誌を作る」
「同人誌の件は、本気だったんだねぇ」
「そうよ。母さんは作品を選んでね」
ありゃ、バラして大丈夫なのか、ルカ叔母さん。
「もしかして、星夜君のお祖母さまはBL小説を書いているのですか?」
「え、ええ。趣味でね……」
「凄い! 私、小説も読むんです。どちらのサイトですか?」
「ニャ、ニャルファポリスよ……」
萩野兄妹のスマホ操作がマジシャンみたいだ。
「これかな。『板前見習いネコたんの恋』『足の甲に野獣のキスをして』」
「わたし『瑠衣とゆかいな仲間たち』読んだことあります。腰に赤龍神の刺青がある美青年の話ですよね」
「月子ちゃん、読んだことあるの?」
「ええ! ファンアートを送ろうとしたけれど、プピッターはやってなかったので、諦めました。あとで感想を送らせてください!」
よっしゃ、奇跡のミッションコンプリートだぜ!
「ファンアート。プピッター……」
祖母ちゃんが目を白黒させている。
「お母さん。今時の小説書きは、プピッターで自分の投稿サイトを宣伝するのよ。ほら、これを見て。ベルばら先生のアカウントよ。フォロワーが三万人もいるの」
「三万人も!」
「商業作家ですもの。こうして新作を固定ツイートにして目に留まるようにするの。投稿サイトの作家は、更新する度にツイートでお知らせするわけ。感想を伝えたいときは、ほら、こんなふうに話しかけてるの」
「リプってやつです」
海人の歯がキラリと光った。いまはアパタイト光線なんていらないぜ!
「……」
祖母ちゃんは黙り込んでしまった。そういえば『スマホで投稿サイトへ打ち込むだけで青息吐息よ』っていってたしな。どこまで理解できたのか怪しいところだ。
「祖母ちゃん、俺と一緒にプピッターやってみる?」
「星夜と?」
「私、フォロワーになりたいです!」
月子ちゃんが背中を押してくれたぞ。
「じゃあ、やってみようかしら……」
「同人誌を作るからには、プピッターやブログは欠かせない手段よ。星夜、よろしくね。それと……お母さんには、これで校正や推敲をしてもらいます」
またもや叔母さんが紙袋からアイテムを取り出した。
「日本語ワープロソフト『いち★タロー』……」
受け取った祖母ちゃんが青くなった。
「パソコンで投稿サイトのバックアップデータをダウンロードしてから、ソフトの校正機能を使って文章をチェックするの。それから印刷して紙で再チェック。ミスを訂正して……」
「ルカ叔母さん。祖母ちゃんのキャパオーバーだから、紙に書こうよ」
いまや完全にソファーで石化したアラフィフ。
「祖母ちゃん、俺も一緒に作業するから大丈夫だよ」
ポンポン、と肩を叩いたら少し血色が戻ってきたぞ。
「そ、そうよね。記念に同人誌を作るだけだしね……」
「あら、秋までに三冊は作るわよ。ワクワクイベントその二、『ジェイ庭インオータム』で頒布するわよ~!」
「「ジェイ庭インオータム!」」
◆◆◆◆
第一章終了です。次回閑話休題はいります。
お読みいただき、ありがとうございました。
投票よろしくお願いします。
あれ、俺のミッションはひとつじゃないのかー?
「ワクワクイベントって何?」
ラン祖母ちゃんの顔が輝いている。こんなに弾んだ声は久しぶりかもしれない。
「ワクワクイベントその一、ネットBL小説家『ラン★』の同人誌を作る」
「同人誌の件は、本気だったんだねぇ」
「そうよ。母さんは作品を選んでね」
ありゃ、バラして大丈夫なのか、ルカ叔母さん。
「もしかして、星夜君のお祖母さまはBL小説を書いているのですか?」
「え、ええ。趣味でね……」
「凄い! 私、小説も読むんです。どちらのサイトですか?」
「ニャ、ニャルファポリスよ……」
萩野兄妹のスマホ操作がマジシャンみたいだ。
「これかな。『板前見習いネコたんの恋』『足の甲に野獣のキスをして』」
「わたし『瑠衣とゆかいな仲間たち』読んだことあります。腰に赤龍神の刺青がある美青年の話ですよね」
「月子ちゃん、読んだことあるの?」
「ええ! ファンアートを送ろうとしたけれど、プピッターはやってなかったので、諦めました。あとで感想を送らせてください!」
よっしゃ、奇跡のミッションコンプリートだぜ!
「ファンアート。プピッター……」
祖母ちゃんが目を白黒させている。
「お母さん。今時の小説書きは、プピッターで自分の投稿サイトを宣伝するのよ。ほら、これを見て。ベルばら先生のアカウントよ。フォロワーが三万人もいるの」
「三万人も!」
「商業作家ですもの。こうして新作を固定ツイートにして目に留まるようにするの。投稿サイトの作家は、更新する度にツイートでお知らせするわけ。感想を伝えたいときは、ほら、こんなふうに話しかけてるの」
「リプってやつです」
海人の歯がキラリと光った。いまはアパタイト光線なんていらないぜ!
「……」
祖母ちゃんは黙り込んでしまった。そういえば『スマホで投稿サイトへ打ち込むだけで青息吐息よ』っていってたしな。どこまで理解できたのか怪しいところだ。
「祖母ちゃん、俺と一緒にプピッターやってみる?」
「星夜と?」
「私、フォロワーになりたいです!」
月子ちゃんが背中を押してくれたぞ。
「じゃあ、やってみようかしら……」
「同人誌を作るからには、プピッターやブログは欠かせない手段よ。星夜、よろしくね。それと……お母さんには、これで校正や推敲をしてもらいます」
またもや叔母さんが紙袋からアイテムを取り出した。
「日本語ワープロソフト『いち★タロー』……」
受け取った祖母ちゃんが青くなった。
「パソコンで投稿サイトのバックアップデータをダウンロードしてから、ソフトの校正機能を使って文章をチェックするの。それから印刷して紙で再チェック。ミスを訂正して……」
「ルカ叔母さん。祖母ちゃんのキャパオーバーだから、紙に書こうよ」
いまや完全にソファーで石化したアラフィフ。
「祖母ちゃん、俺も一緒に作業するから大丈夫だよ」
ポンポン、と肩を叩いたら少し血色が戻ってきたぞ。
「そ、そうよね。記念に同人誌を作るだけだしね……」
「あら、秋までに三冊は作るわよ。ワクワクイベントその二、『ジェイ庭インオータム』で頒布するわよ~!」
「「ジェイ庭インオータム!」」
◆◆◆◆
第一章終了です。次回閑話休題はいります。
お読みいただき、ありがとうございました。
投票よろしくお願いします。
11
お気に入りに追加
82
あなたにおすすめの小説
皇帝はダメホストだった?!物の怪を巡る世界救済劇
ならる
ライト文芸
〇帝都最大の歓楽街に出没する、新皇帝そっくりの男――問い詰めると、その正体はかつて売上最低のダメホストだった。
山奥の里で育った羽漣。彼女の里は女しかおらず、羽漣が13歳になったある日、物の怪が湧き出る鬼門、そして世界の真実を聞かされることになる。一方、雷を操る異能の一族、雷光神社に生まれながらも、ある事件から家を飛び出した昴也。だが、新皇帝の背後に潜む陰謀と、それを追う少年との出会いが、彼を国家を揺るがす戦いへと引き込む――。
中世までは歴史が同じだったけれど、それ以降は武士と異能使いが共存する世界となって歴史がずれてしまい、物の怪がはびこるようになった日本、倭国での冒険譚。
◯本小説は、部分的にOpen AI社によるツールであるChat GPTを使用して作成されています。
本小説は、OpenAI社による利用規約に遵守して作成されており、当該規約への違反行為はありません。
https://openai.com/ja-JP/policies/terms-of-use/
◯本小説はカクヨムにも掲載予定ですが、主戦場はアルファポリスです。皆さんの応援が励みになります!
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
高度救命救急センターの憂鬱 Spinoff
さかき原枝都は
ライト文芸
フェローは家畜だ。たっぷり餌を与えて…いや指導だ!
読み切り!全8話
高度救命救急センターの憂鬱 Spinoff 外科女医二人が織り成す恐ろしくも、そしてフェロー(研修医)をかわいがるその姿。少し違うと思う。いやだいぶ違うと思う。
高度救命センターを舞台に織り成す外科女医2名と二人のフェローの物語。
Emergency Doctor 救命医 の後続編Spinoff版。
実際にこんな救命センターがもしもあったなら………
俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない
亮亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。
不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。
そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。
帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。
そして邂逅する謎の組織。
萌の物語が始まる。
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活
XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる