2 / 39
第一章
【一】星夜ー開かずの部屋①
しおりを挟む
【一】星夜―開かずの部屋
「ご利用、ありがとうございました~」
「お世話様でした」
ガラララ、ピシャン。
引っ越し業者を見送ってから、俺は縁側に回ってサンダルを履いた。高台からは遙か太平洋が見渡せる。ここは東北一の繁華街から約十キロ離れた山を造成してできた団地だ。こんなに澄んだ空気は、都会では絶対に味わえない。
「久しぶりだなぁ。一年ぶりだもんな」
庭の紅梅が満開の日曜日、俺は東京から東北一の政令指定都市に引っ越してきた。
仙台で生まれ、小学校卒業まで暮らした土地に戻れたのは凄く嬉しい。理由は父さんの海外出張が決まったから。
『ウサギより寂しがりな流星君について行かなくちゃ!』
母さんはそう宣言すると同行していった。日本に残る俺を心配した父方の祖母、蘭祖母ちゃんと叔母さんが、俺に転校&同居を勧めてくれたのだ。
なぜ渡米しないのか?
正直、金髪美女や大リーグには魅力を感じないんだよなぁ。俺は日本の文化、ことに東北地方が大好きだ。
父さんにくっついて中学、高校を転校して大都市に住んでみたけれど、生まれ育った土地に戻って祖母ちゃんの顔を見たらホッとしたんだ。
大きく深呼吸していたら、祖母ちゃんと叔母さんに大笑いされた。
「やっぱり祖母ちゃん家はいいなぁ」
「あら、ありがとう」
ニコニコ顔の祖母ちゃんは、まだ五十代半ば。十八歳で結婚し俺の父さんを出産。その5年後にルカ叔母さんが誕生した。
祖父ちゃんは仕事中の事故で数年前に天国へ逝った。だから尚更、蘭ばあちゃんは俺を溺愛していた。
「星夜の部屋は祖父ちゃんの書斎にしたよ」
「いいの?」
リビングダイニングを除くと、一番大きな部屋だ。
「あそこなら落ち着いて勉強できるでしょ」
「ありがとう、蘭ばあちゃん、ルカ叔母さん」
ルカ叔母さんは結婚後すぐ実家に戻ってきた。理由は分からない。結婚式は海外だったので相手さえ知らない。なぜだか、両親は話題を封印してしまった。まあ、傷口に塩をすり込む無神経な甥にはなりたくないので、俺も知らんぷりしている。
築四十年の若生家は一階が居間に台所、浴室に洗面所、トイレ、書斎、仏間に祖母の寝室、客間に物置があり、二階は叔母の寝室と父さんの部屋がある。父さんの部屋は、すでに叔母さんのクローゼット化しているのを知っていたので、書斎をあてがわれて正直ほっとしている。
「にゃーん」
若生家の飼い猫、ルビーとサファイアが俺の足下にまとわりついた。
「にゃにゃーん」
「ルビーが、喉が渇いたって」
ルカ叔母さんが平然と告げるので、前世は猫だったのかなと思った。
「なんで分かるんだ。すごいな……」
「ほらほら、そこの水道からバケツに水を溜めてやって」
指示通りに庭の蛇口を捻ると、サファイアも並んで待っていた。縁いっぱいまで注ぐと、彼女たちはピチャピチャ音を立てて飲み始めた。
「ふふふふ。これで星夜もぬこ様の奴隷認定されたわね」
「奴隷認定……」
「にゃーん」
琥珀色したねこ様は満足して、ピョンと胸に飛び込んできた。続いて妹ねこ様も……。
「まあいいか。これからよろしくな、ルビー、サファイア」
「にゃにゃーん」
「ご利用、ありがとうございました~」
「お世話様でした」
ガラララ、ピシャン。
引っ越し業者を見送ってから、俺は縁側に回ってサンダルを履いた。高台からは遙か太平洋が見渡せる。ここは東北一の繁華街から約十キロ離れた山を造成してできた団地だ。こんなに澄んだ空気は、都会では絶対に味わえない。
「久しぶりだなぁ。一年ぶりだもんな」
庭の紅梅が満開の日曜日、俺は東京から東北一の政令指定都市に引っ越してきた。
仙台で生まれ、小学校卒業まで暮らした土地に戻れたのは凄く嬉しい。理由は父さんの海外出張が決まったから。
『ウサギより寂しがりな流星君について行かなくちゃ!』
母さんはそう宣言すると同行していった。日本に残る俺を心配した父方の祖母、蘭祖母ちゃんと叔母さんが、俺に転校&同居を勧めてくれたのだ。
なぜ渡米しないのか?
正直、金髪美女や大リーグには魅力を感じないんだよなぁ。俺は日本の文化、ことに東北地方が大好きだ。
父さんにくっついて中学、高校を転校して大都市に住んでみたけれど、生まれ育った土地に戻って祖母ちゃんの顔を見たらホッとしたんだ。
大きく深呼吸していたら、祖母ちゃんと叔母さんに大笑いされた。
「やっぱり祖母ちゃん家はいいなぁ」
「あら、ありがとう」
ニコニコ顔の祖母ちゃんは、まだ五十代半ば。十八歳で結婚し俺の父さんを出産。その5年後にルカ叔母さんが誕生した。
祖父ちゃんは仕事中の事故で数年前に天国へ逝った。だから尚更、蘭ばあちゃんは俺を溺愛していた。
「星夜の部屋は祖父ちゃんの書斎にしたよ」
「いいの?」
リビングダイニングを除くと、一番大きな部屋だ。
「あそこなら落ち着いて勉強できるでしょ」
「ありがとう、蘭ばあちゃん、ルカ叔母さん」
ルカ叔母さんは結婚後すぐ実家に戻ってきた。理由は分からない。結婚式は海外だったので相手さえ知らない。なぜだか、両親は話題を封印してしまった。まあ、傷口に塩をすり込む無神経な甥にはなりたくないので、俺も知らんぷりしている。
築四十年の若生家は一階が居間に台所、浴室に洗面所、トイレ、書斎、仏間に祖母の寝室、客間に物置があり、二階は叔母の寝室と父さんの部屋がある。父さんの部屋は、すでに叔母さんのクローゼット化しているのを知っていたので、書斎をあてがわれて正直ほっとしている。
「にゃーん」
若生家の飼い猫、ルビーとサファイアが俺の足下にまとわりついた。
「にゃにゃーん」
「ルビーが、喉が渇いたって」
ルカ叔母さんが平然と告げるので、前世は猫だったのかなと思った。
「なんで分かるんだ。すごいな……」
「ほらほら、そこの水道からバケツに水を溜めてやって」
指示通りに庭の蛇口を捻ると、サファイアも並んで待っていた。縁いっぱいまで注ぐと、彼女たちはピチャピチャ音を立てて飲み始めた。
「ふふふふ。これで星夜もぬこ様の奴隷認定されたわね」
「奴隷認定……」
「にゃーん」
琥珀色したねこ様は満足して、ピョンと胸に飛び込んできた。続いて妹ねこ様も……。
「まあいいか。これからよろしくな、ルビー、サファイア」
「にゃにゃーん」
10
お気に入りに追加
82
あなたにおすすめの小説
皇帝はダメホストだった?!物の怪を巡る世界救済劇
ならる
ライト文芸
〇帝都最大の歓楽街に出没する、新皇帝そっくりの男――問い詰めると、その正体はかつて売上最低のダメホストだった。
山奥の里で育った羽漣。彼女の里は女しかおらず、羽漣が13歳になったある日、物の怪が湧き出る鬼門、そして世界の真実を聞かされることになる。一方、雷を操る異能の一族、雷光神社に生まれながらも、ある事件から家を飛び出した昴也。だが、新皇帝の背後に潜む陰謀と、それを追う少年との出会いが、彼を国家を揺るがす戦いへと引き込む――。
中世までは歴史が同じだったけれど、それ以降は武士と異能使いが共存する世界となって歴史がずれてしまい、物の怪がはびこるようになった日本、倭国での冒険譚。
◯本小説は、部分的にOpen AI社によるツールであるChat GPTを使用して作成されています。
本小説は、OpenAI社による利用規約に遵守して作成されており、当該規約への違反行為はありません。
https://openai.com/ja-JP/policies/terms-of-use/
◯本小説はカクヨムにも掲載予定ですが、主戦場はアルファポリスです。皆さんの応援が励みになります!
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
高度救命救急センターの憂鬱 Spinoff
さかき原枝都は
ライト文芸
フェローは家畜だ。たっぷり餌を与えて…いや指導だ!
読み切り!全8話
高度救命救急センターの憂鬱 Spinoff 外科女医二人が織り成す恐ろしくも、そしてフェロー(研修医)をかわいがるその姿。少し違うと思う。いやだいぶ違うと思う。
高度救命センターを舞台に織り成す外科女医2名と二人のフェローの物語。
Emergency Doctor 救命医 の後続編Spinoff版。
実際にこんな救命センターがもしもあったなら………
俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない
亮亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。
不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。
そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。
帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。
そして邂逅する謎の組織。
萌の物語が始まる。
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活
XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる