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第6話:まさかの転校生!?
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どういうこと!?
わたしの知らない間に、机とイスは空を飛ぶようになっちゃったの?
わたしはそっと先生の顔を見た。
先生は窓に手をついて、口をあんぐりと開けている。
おどろきすぎて、口が閉じなくなっちゃったみたい。
自分の席に座っていたはずのみんなも、立って窓のところに並んでいる。
「ねぇ! あの机、花向さんのじゃない?」
その声を聞いて、わたしも窓のほうへ走った。
おでこをぴったり窓ガラスにつけて、ぷかぷかと浮いている机を見る。
ほんとだ! わたしの机!
机の前にかけられたお花柄のぞうきんは、わたしのおばあちゃんが作ってくれたものだ。
まちがいない、あの机はわたしのもの!
でも、どうして?
どうしてわたしの机は教室を飛び出して、空を飛ぶことになったんだろう?
わたしは自分の息でくもった窓ガラスを、服のそでを使ってふいた。
というか……。
「先生! 机がこっちに向かってきてる!」
メイメイが大きな声で、先生に言う。
やっぱりそうだ! わたしのみまちがいじゃない。
わたしの机は、どんどん教室の窓に近づいてきてる!
「どうしよう、このままじゃぶつかっちゃうよぉ!」
「みんな、窓からはなれるんだ! ガラスがわれるかもしれないから、廊下に出て!」
先生の指示で、みんながわっと走って教室を飛び出していく。
何人かと肩がぶつかったけど、わたしはじっとその場を動けなかった。
「花向! おまえも廊下に出ていろ!」
先生の大きな声が頭の中でぐわんぐわんひびく。
でも、一歩も動けない。
先生はわたしを押しのけると、窓をめいいっぱい開けた。
イスは通りそうだけど……机はむりかもしれない。
「あぶないからはなれていなさい! 窓を外すから!」
先生の大声で、わたしはやっと足を動かせた。
じゃまにならないように、元々わたしの机があった場所まで下がる。
先生は「よっ」とかけ声をかけて、窓を持ち上げた。
ガコッと音を立てて、窓がレールから外れ、先生がゆっくりと床に下ろす。
二枚外したところで、そのしゅんかんはやってきた。
「先生、あぶない!」
廊下から女の子たちの悲鳴が聞こえる。
空に浮いていた机とイスは、ぴったりくっついて先生の目の前まで飛んできていた。
「うおっ!」
先生はぶつかる寸前で、頭を下げた。
先生が窓を外して作った空間を、机が通っていく。
先生の頭の上すれすれのところをゆっくりと通りすぎた。
そして、机につづくようにイスも。
ふたつとも、窓にぶつかることはなかった。
まって、こっちに向かってきてる?
机とイスはまっすぐわたしに向かってきていた。
わたしは一歩、二歩と下がる。
さいしょに、イスが床に下りた。
それから机がゆっくりと四本足を床につける。
わたしの机とイスは、さいしょからそこにあったように元通りになった。
わたしはそっと机にさわる。
外の風のせいで、すこし冷たい。
けれど、たしかにわたしの机だった。
ぞうきんも、昨日机の中にわすれたノートも、そのまま入っている。
……かまちゃんに油性マジックで書かれた「バカ」っていうらくがきも、そのまま。
キーンコーンカーンコーン。
みんながぞろぞろと教室にもどってきて、先生が窓を直しているところにチャイムが鳴る。
朝の会がおわる時間だ。
みんなが座ったのを見て、先生はふうっとため息をついてからしゃべり出した。
「まあ、色々あったけど……これから朝の会をはじめるぞー」
となりの人とおしゃべりをしていた子も、先生の声を聞いて静かになる。
「えーっと、いそいでるからだいじなことだけ言うか。今日からこのクラスに、新しい人がくることになった」
「えっー!」
「転校生!?」
「男? 女?」
おどろいたみんながいっせいにしゃべり出す。
「静かにー!」
空気がビリビリするくらいの大声で、おしゃべりがぴたっと止んだ。
「じゃあ入ってきてもらうぞ。おーい、おそくなってわるいな!」
先生が廊下に声をかける。
教室の前にあるドアが、ガラッと開いた。
パイナップルの絵が描かれた白いTシャツに、横に白い線が入った黒いジャージのズボン。
さらさらとした短い髪、オオカミみたいな、するどくて細い、赤い目。
まちがいない、あの子は――。
「自己紹介をしてもらってもいいか?」
先生に言われて、その子はにんまりと笑う。
わたしを、見ながら。
「花向九里だ! よろしく!」
わたしの知らない間に、机とイスは空を飛ぶようになっちゃったの?
わたしはそっと先生の顔を見た。
先生は窓に手をついて、口をあんぐりと開けている。
おどろきすぎて、口が閉じなくなっちゃったみたい。
自分の席に座っていたはずのみんなも、立って窓のところに並んでいる。
「ねぇ! あの机、花向さんのじゃない?」
その声を聞いて、わたしも窓のほうへ走った。
おでこをぴったり窓ガラスにつけて、ぷかぷかと浮いている机を見る。
ほんとだ! わたしの机!
机の前にかけられたお花柄のぞうきんは、わたしのおばあちゃんが作ってくれたものだ。
まちがいない、あの机はわたしのもの!
でも、どうして?
どうしてわたしの机は教室を飛び出して、空を飛ぶことになったんだろう?
わたしは自分の息でくもった窓ガラスを、服のそでを使ってふいた。
というか……。
「先生! 机がこっちに向かってきてる!」
メイメイが大きな声で、先生に言う。
やっぱりそうだ! わたしのみまちがいじゃない。
わたしの机は、どんどん教室の窓に近づいてきてる!
「どうしよう、このままじゃぶつかっちゃうよぉ!」
「みんな、窓からはなれるんだ! ガラスがわれるかもしれないから、廊下に出て!」
先生の指示で、みんながわっと走って教室を飛び出していく。
何人かと肩がぶつかったけど、わたしはじっとその場を動けなかった。
「花向! おまえも廊下に出ていろ!」
先生の大きな声が頭の中でぐわんぐわんひびく。
でも、一歩も動けない。
先生はわたしを押しのけると、窓をめいいっぱい開けた。
イスは通りそうだけど……机はむりかもしれない。
「あぶないからはなれていなさい! 窓を外すから!」
先生の大声で、わたしはやっと足を動かせた。
じゃまにならないように、元々わたしの机があった場所まで下がる。
先生は「よっ」とかけ声をかけて、窓を持ち上げた。
ガコッと音を立てて、窓がレールから外れ、先生がゆっくりと床に下ろす。
二枚外したところで、そのしゅんかんはやってきた。
「先生、あぶない!」
廊下から女の子たちの悲鳴が聞こえる。
空に浮いていた机とイスは、ぴったりくっついて先生の目の前まで飛んできていた。
「うおっ!」
先生はぶつかる寸前で、頭を下げた。
先生が窓を外して作った空間を、机が通っていく。
先生の頭の上すれすれのところをゆっくりと通りすぎた。
そして、机につづくようにイスも。
ふたつとも、窓にぶつかることはなかった。
まって、こっちに向かってきてる?
机とイスはまっすぐわたしに向かってきていた。
わたしは一歩、二歩と下がる。
さいしょに、イスが床に下りた。
それから机がゆっくりと四本足を床につける。
わたしの机とイスは、さいしょからそこにあったように元通りになった。
わたしはそっと机にさわる。
外の風のせいで、すこし冷たい。
けれど、たしかにわたしの机だった。
ぞうきんも、昨日机の中にわすれたノートも、そのまま入っている。
……かまちゃんに油性マジックで書かれた「バカ」っていうらくがきも、そのまま。
キーンコーンカーンコーン。
みんながぞろぞろと教室にもどってきて、先生が窓を直しているところにチャイムが鳴る。
朝の会がおわる時間だ。
みんなが座ったのを見て、先生はふうっとため息をついてからしゃべり出した。
「まあ、色々あったけど……これから朝の会をはじめるぞー」
となりの人とおしゃべりをしていた子も、先生の声を聞いて静かになる。
「えーっと、いそいでるからだいじなことだけ言うか。今日からこのクラスに、新しい人がくることになった」
「えっー!」
「転校生!?」
「男? 女?」
おどろいたみんながいっせいにしゃべり出す。
「静かにー!」
空気がビリビリするくらいの大声で、おしゃべりがぴたっと止んだ。
「じゃあ入ってきてもらうぞ。おーい、おそくなってわるいな!」
先生が廊下に声をかける。
教室の前にあるドアが、ガラッと開いた。
パイナップルの絵が描かれた白いTシャツに、横に白い線が入った黒いジャージのズボン。
さらさらとした短い髪、オオカミみたいな、するどくて細い、赤い目。
まちがいない、あの子は――。
「自己紹介をしてもらってもいいか?」
先生に言われて、その子はにんまりと笑う。
わたしを、見ながら。
「花向九里だ! よろしく!」
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