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第3話:人間の男の子?
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とつぜん、強い風がふいてきた。
静かだった森がきゅうにざわざわしてくる。
まっすぐ立っていた木も、強すぎる風でななめになっている。
わたしのまわりで、葉っぱが風に乗って飛んでいく。
「息が……っ」
顔にすごいいきおいで風がふいてくるせいで、息ができない!
わたしは体育座りをして、顔を下に向ける。
ちょっとだけ、息がしやすくなる。
バリバリ! っと大きな音がした。
木の枝が折れたのかもしれない。
わたしの体も、風が当たって飛んでいきそうになる。
びゅうびゅうふく風の中、わたしはじっと風がおさまるのを待った。
学校が台風で休みになった時みたい。
雨がふってないからまだいいけど、きゅうに台風がきた時と同じくらい強い風。
ずっとこのままだったらどうしよう?
雨とか、ふってくるのかな?
動くこともできなくて、わたしはじっとしながら頭の中でいろんなことを考える。
去年の運動会で、グラウンドにとつぜん竜巻みたいな風がおこって、テントが飛んでいっちゃったこととか。
いまの風はその運動会の時に見た風とよくにてる。
先生はなんて言ってたかな?
頭のつむじがなんとか、みたいなことを言ってた気がするけど……。
「それはつむじ風ではないか?」
「だれ……!?」
きゅうに声がして、わたしはハッと顔を上げた。
あんなに強かった風は、いつの間にか止んでいる。
風で飛ばされていた葉っぱたちが、わたしのまわりにゆっくりと落ちた。
男の子が立っている!
夢、じゃないよね……?
わたしからすこしはなれたところに、男の子が立っていた。
身長は、たぶんわたしよりちょっと高いくらい。
さらさらの黒い髪に、オオカミみたいなするどい目。
なぜかはわからないけど、男の子はお祭りの時に着るような、男の子用の浴衣を着ていた。下が短パンになっている、甚平ってやつ。
同じ年くらいかな? その男の子は、じっとわたしを見つめている。
男の子は目をきゅっと細くすると、すこし歩いて、わたしの前にやってきた。
わたしはまだ体育座りをしたままで、男の子の顔をぼーっと見上げる。
「人の子がなぜ、この森にいる?」
上から見下ろしてくる目は冷たくて、こわい。
声もぜんぜんやさしくなくて、怒ってるみたい。
「あ、あの、わたしは……」
うまく言葉が出てこない。わたしはいつもそう。人と話すのがにがて。
とくにはじめて会った人と話すのは、とってもむずかしい。
はずかしさで顔が赤くなっているのが、自分でもわかる。
なにか言わなきゃ。男の子がこっちを見ているのがよくわかる。
「もういちど問う。なぜおまえは、この森にいる?」
どうしよう、本当のことを言ったほうがいいのかな?
わたしはそっと男の子の顔を見る。ばれないようにしたはずなのに、ぎろっとにらまれた。
とてもうそを言えるような雰囲気じゃない……。
わたしはゆっくりと息をすって、きんちょうを外に出す。
「わ、わたしは……みくたち、あのみくっていうのは同じクラスの子であんまり仲がよくなくって」
あせって話がまとまらない! うまく話せなくて、言葉がつまる。
うう……もっとしゃべる練習をしておけばよかった。
わたしのあせりなんか知らないように、男の子はじっとわたしを見つめて、話のつづきを待っている。
だいじょうぶ、おちついて。ゆっくり話せば、わかってもらえるはず。
「同じクラスの女の子に、罰ゲームだっていわれて、この森にきたの」
男の子がまゆ毛をぎゅっとよせる。
「も、もちろん! わたしは天狗の森に入っちゃいけないって知ってたんだよ? でも、みんなわたしがこわがってるだけだって、言って……」
話しているうちに、目の奥があつくなる。また泣きそうになってる。
なみだがこぼれないように下を向いてぎゅっと目をつむると、男の子がはーっと息をはき出す音が聞こえた。
おばあちゃんがつかれた時によくやってる、ため息の音だ。
「顔を上げろ」
男の子のふきげんな声が聞こえて、わたしは顔を上げる。
男の子の目は、よく見ると赤色だった。
トマトみたいに真っ赤な目で、男の子はわたしを見ている。
「どうやらおまえも、迫害を受けている身のようだな」
「はくがい、って……?」
「わからぬか? ならば言い方を変えよう」
男の子がすっと手を上げる。まっすぐ、わたしを指さして。
「おまえは、学校でいじめられているのだな?」
静かだった森がきゅうにざわざわしてくる。
まっすぐ立っていた木も、強すぎる風でななめになっている。
わたしのまわりで、葉っぱが風に乗って飛んでいく。
「息が……っ」
顔にすごいいきおいで風がふいてくるせいで、息ができない!
わたしは体育座りをして、顔を下に向ける。
ちょっとだけ、息がしやすくなる。
バリバリ! っと大きな音がした。
木の枝が折れたのかもしれない。
わたしの体も、風が当たって飛んでいきそうになる。
びゅうびゅうふく風の中、わたしはじっと風がおさまるのを待った。
学校が台風で休みになった時みたい。
雨がふってないからまだいいけど、きゅうに台風がきた時と同じくらい強い風。
ずっとこのままだったらどうしよう?
雨とか、ふってくるのかな?
動くこともできなくて、わたしはじっとしながら頭の中でいろんなことを考える。
去年の運動会で、グラウンドにとつぜん竜巻みたいな風がおこって、テントが飛んでいっちゃったこととか。
いまの風はその運動会の時に見た風とよくにてる。
先生はなんて言ってたかな?
頭のつむじがなんとか、みたいなことを言ってた気がするけど……。
「それはつむじ風ではないか?」
「だれ……!?」
きゅうに声がして、わたしはハッと顔を上げた。
あんなに強かった風は、いつの間にか止んでいる。
風で飛ばされていた葉っぱたちが、わたしのまわりにゆっくりと落ちた。
男の子が立っている!
夢、じゃないよね……?
わたしからすこしはなれたところに、男の子が立っていた。
身長は、たぶんわたしよりちょっと高いくらい。
さらさらの黒い髪に、オオカミみたいなするどい目。
なぜかはわからないけど、男の子はお祭りの時に着るような、男の子用の浴衣を着ていた。下が短パンになっている、甚平ってやつ。
同じ年くらいかな? その男の子は、じっとわたしを見つめている。
男の子は目をきゅっと細くすると、すこし歩いて、わたしの前にやってきた。
わたしはまだ体育座りをしたままで、男の子の顔をぼーっと見上げる。
「人の子がなぜ、この森にいる?」
上から見下ろしてくる目は冷たくて、こわい。
声もぜんぜんやさしくなくて、怒ってるみたい。
「あ、あの、わたしは……」
うまく言葉が出てこない。わたしはいつもそう。人と話すのがにがて。
とくにはじめて会った人と話すのは、とってもむずかしい。
はずかしさで顔が赤くなっているのが、自分でもわかる。
なにか言わなきゃ。男の子がこっちを見ているのがよくわかる。
「もういちど問う。なぜおまえは、この森にいる?」
どうしよう、本当のことを言ったほうがいいのかな?
わたしはそっと男の子の顔を見る。ばれないようにしたはずなのに、ぎろっとにらまれた。
とてもうそを言えるような雰囲気じゃない……。
わたしはゆっくりと息をすって、きんちょうを外に出す。
「わ、わたしは……みくたち、あのみくっていうのは同じクラスの子であんまり仲がよくなくって」
あせって話がまとまらない! うまく話せなくて、言葉がつまる。
うう……もっとしゃべる練習をしておけばよかった。
わたしのあせりなんか知らないように、男の子はじっとわたしを見つめて、話のつづきを待っている。
だいじょうぶ、おちついて。ゆっくり話せば、わかってもらえるはず。
「同じクラスの女の子に、罰ゲームだっていわれて、この森にきたの」
男の子がまゆ毛をぎゅっとよせる。
「も、もちろん! わたしは天狗の森に入っちゃいけないって知ってたんだよ? でも、みんなわたしがこわがってるだけだって、言って……」
話しているうちに、目の奥があつくなる。また泣きそうになってる。
なみだがこぼれないように下を向いてぎゅっと目をつむると、男の子がはーっと息をはき出す音が聞こえた。
おばあちゃんがつかれた時によくやってる、ため息の音だ。
「顔を上げろ」
男の子のふきげんな声が聞こえて、わたしは顔を上げる。
男の子の目は、よく見ると赤色だった。
トマトみたいに真っ赤な目で、男の子はわたしを見ている。
「どうやらおまえも、迫害を受けている身のようだな」
「はくがい、って……?」
「わからぬか? ならば言い方を変えよう」
男の子がすっと手を上げる。まっすぐ、わたしを指さして。
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