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夏休み

枕投げしたい奴本当にいたんだな。

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もう十一時前で、すっかり遅い時間だ。

あの後は結局、バレずに男湯に戻る事が出来た。
屋城はいきなり現れた俺に驚いた。それは当然だろう。

そんな屋城に事情を説明して、協力してもらう事にしたのだが、さっきまで女湯にいた事を話すと、そこからずっと同じ事を言うばかり。

「どうだったんだ体は。」

正直みんなの体は見ていないから、「見てない」と答えたのだが、全く信じてくれないし、今もう無視している状態だ。

「あっそうだ、おいおい一緒に女史の部屋に行こうぜ。」

「行ってどうするんだよもう疲れたし。」

「枕投げ一択だな。やっぱり枕投げはするべきだろう。」

そんな風にキメ顔でこちらを見られても困るだけなんだが、冷静に考えるとさっきのお礼を呼春に言う為にも、確かに会いに行くべきかもしれない。

「まぁ、わかった。一緒に行く事にする。だから早く行こう。」

「よっしゃ、野郎ども!さぁ枕を持って出発だぁ。」

合わせて二人だから、野郎どもじゃないだろう。なんて言うウケもしないツッコミを心の流れ入れたりして、俺は屋城を追いかけた。

部屋に訪ねたら、少し待ってと言われ、そして暫くして俺と屋城は女子部屋に入った。

「えぇ、枕投げをしに来たの。」

ツンデレモードではない九頭竜緋茉莉が困惑した様子でそう言う。

「絶対に楽しいと俺が保証するさ。」

屋城はそこでも謎のキメ顔をする。

「やってみたいです。枕投げなんて私、した事がないので。」

そう言ったのは清水空音。どうやら清水空音は乗り気らしい。

マジか、枕投げしたいやつって本当に居るんだな。

「わかった、どうせやることもないし、せっかく来たんだし、枕投げする事にしようか。」

鶯谷野呼春の一言でやりたくなさそうだった九頭竜緋茉莉もやるべきだろうと判断したのか、枕を持った。

次の瞬間、顔に枕を投げつけられた。

「おっ、俺狙いか。」

枕投げを始めたのは九頭竜緋茉莉であった。
さっきまで乗り気ではなさそうだったのに、もしかすると本心ではやりたかったのだろうか。
だとすると、本心とは違う事を言う辺り、しかも今回は嫌そうな雰囲気で話していた、けどやりたかったのなら、ツンデレに親しい系統の行動じゃないかなんて、思いながら、俺も枕投げを始めた。
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