71 / 88
事故紹介
しおりを挟む
「ああ? 2階に風呂作るって本気で言ってるのか?」
「出来ませんか?」
と大工の棟梁にお願いしてみる。見た目コワモテだが、マリアさんの頼みでこの急な仕事を請け負ってくれた評判の棟梁。ちなみにマリアさんに筆おろしされるまでDTだったらしい、おう同志よっって思ったけど、まだDTだったわ、俺は。
ほれた弱みではないが、今回のルエラの話を聞いて格安で受けてくれたらしい、らしいってのは正確な金額をマリアさんが教えてくれないんだよね。
「俺は出来る出来ないをいってるじゃねえ、お前らが住むなら大変だろ? って言ってるんだよ」
俺の後ろで、間取りや店の導線を確認しているユリアナとルエラ。他の大工さんの仕事のジャマをしないようにとは言っておいたが、なんか可愛がられてるし問題ないのかもしれない。
「大丈夫です。魔法でなんとかしますから」
「ああ、魔法使いなのか、なら判った。排水を下水に流せるようにすればいいんだな?」
「それでお願いします」
明日には、研修に入ってしまうのである程度目鼻を付けて置きたかったので作業を見に来たんだが、彼女らとこの棟梁に任せたら大丈夫そうだな。
1F部分の元のルエラの家の部分も改装して料理店にして、2Fを増設して居住エリアにすることにした。なるべく生活エリアに人目が入って欲しくないからね。
なので生活エリアの完成まではちょっと掛かりそうだ。研修から帰ってくるまでに、ある程度できてる感じだといいんだが。
研修を翌日に控え、俺たちはマリアの娼館のいつもの部屋で向き合っていた。
「じゃあ、明日からボクは研修に出かけるけど、その間にして欲しいことがある」
「「はい」」
ユリアナとルエラの声が重なる。
例の壷に入れた○タフクソースをルエラに渡す。
「これ、あのタレだけど、これを使わずに出来るだけ近いものを作り上げて欲しい。もちろんスグじゃなくていい。ボクが帰るまでに作れなんてムリな事は言わないからね」
タレの深みを知っているルエラたちが、俺の要望にちょっと驚いて眉を困らせていたので、焦っていない事を伝える。
もちろん店のスタートはこの○タフクさんで始めるつもりなんだけど、できたらこの世界の素材でこれを作り上げて欲しい。ある程度のヒントは教えるつもりでは居るけどね、ちなみに俺は再現しろって言われてもムリだと思う。
だけどこんな事を言い出したのはルエラの為だ。彼女の料理の能力はユリアナにも劣らないと思う。だからこそ、こんなおんぶにだっこじゃ勿体無いし、彼女の為にもならないと思ったから。こちらの素材で作れば、真似る店とかが出てくるのも面白いと思う。
「料理の事考えてるときのルエラはかっこいいからさ。期待してる」
って言ったら彼女の白い肌が次第に真っ赤になってドアから逃げ出してしまった。壷を持ったまま階段を駆け下りて、キッチンに向っている。ちょ、気が早い。もう夜更けだって言うのに。
「あー、ごめんユリアナ。明日からにしなさいって止めてきて」
と言ったらユリアナは笑顔で向ってくれた。
ちなみに、また今夜も寝るときに、キスを要求されてしまい要望に負けてしまった。これは常態化ですわ……。
「じゃあ、行ってくる」
と、俺は3人に伝える。
「またこんなに便利に使うとか、本当にユキはエルフ嫁使いが酷いのじゃ……」
「ごめん、リスティしか頼れないんだよ」
主に念話的な意味で。だが、その思いは上手いこと伝わらず、リスティは白い肌を赤く染める。
「しかも7日もここに閉じこもっておれとか。……で、わらわには無いのか? 判っておるのじゃぞ? そのルエラの事も」
と、ちょっとルエラに目線を投げたあと、俺の前にしゃがみ上目づかいで見てくるリスティ。そして、頬を突き出してくる。
俺はリスティの肩を抱き寄せて、唇を重ねた。リスティの目が見開かれ、その感情がオーバーロードしてこちらにも流れ込んでくる。あはは、混乱してる。
「い、いきなりとか。あんまりじゃろ」
と真っ赤になって抗議してくるリスティの頭をぽむぽむ。
「あはは、大好きだよリスティ。じゃあ2人を頼むね」
「うにゅぅ…… 任されたのじゃ……」
しおらしくなったリスティの面倒をユリアナに任せて、俺は彼女達に手を振って冒険者ギルドへと向った。私は? みたいな目で見るルエラの視線に気付かないフリをしながら。
俺は昨日の夜交渉して、今朝リスティをこっちにゲートで迎え入れた。リスティは俺と連絡が取り合えるからマリアのねぐらに居てもらって、なにかあったら連絡を入れてもらえるように。くれぐれも自分でなんとかしなくていい、まずは連絡と言い含めておいたが、あのキスで変に奮起しないと良いが。まあ、勢いでキスした俺も悪いか。
どうでもいいことだが、あれは俺のファーストキスではない、俺の最初を奪ったのは由香里ねーさんだ。兄貴の彼女のくせに。
俺が子供の頃に可愛い服を着せられて、その姿に感極まったのか抱きついてキスされたのだ、兄貴の目の前で。あの人はほんとフリーダムすぎて困るわ。
朝のギルドは初めてきたが、本当にこんなに居たんだってくらい冒険者たちが依頼版の前で、出された依頼の前で押しあいへし合いしている。
すると中から一人の男性がこちらに気付いて近づいてきた。
「妻が喜んでいた、ありがとう。お礼が言いたいから今度うちにつれて来いと大騒ぎだ」
と、ジュウド氏が笑いながら話しかけてきた。そのまま軽く挨拶して、奥に向う。
ドアの前に立っていた身体に似合わない大剣を背負った少年が話しかけてきた。
「おまえも今日の講習受けるのか? あの斬岩のジュウドと知り合い?」
と目を輝かせている。
「うん、ちょっと知り合い。この前仕事を手伝ってもらって」
「すげー、羨ましいぜ。ジュウドさん、アルガードでも有名な冒険者なんだぜ?」
と一緒に奥の部屋に向う。
「あ、俺はリックだ、よろしくな」
「ボクはユキ。研修良く知らないからよろしくね」
今日から正式にボクっ子にシフトだ。最悪バレた時に言い逃れできる要素を作り出しておかないとね。
この前会議していた部屋にはもう先客が待っていた。少し年上っぽい男女のペア、壁に寄りかかってこちらを見ている男。そして、ローブを着た俺と同い年くらいの少女だ。誰も喋らず、お互いをチェックしているようだ。リックも部屋にはいるとなんとなく喋らなくなり、用意してきた荷物を降ろしてその上に座っている。
「諸君、元気ないな。そんな事じゃ上は目指せんぞ?」
と大きな声を出しながら、体格の良いおっさんが入ってくる。エリンのおっさんが講師なのかな? とか勝手に想像してたが違うみたいだな。
「俺は、今回の研修の指導官のカーネルだ。じゃあまずは移動しよう」
と、彼に先導されてぞろぞろと進む。あれ、外にでるのか。
通用門からでてぐるっと回った所に、広い塀でかこまれたエリアがあった。訓練場かな? 奥に藁を巻いた杭などが見える。
「まずは自己紹介をしてもらおう。これから7日一緒に過ごすんだ、得体の知れない仲間じゃ信頼できんだろ。自分をアピールしてみろ」
と、訓練場の中ほどにある藁人形を指し示すカーネル氏。なるほど、それでこの訓練場な訳ね。
「じゃあ俺からな!! 俺はリックだ。剣で身を立てたい」
と背中から大剣を抜き、まっすぐに構える。しかし、藁人形には切りかからずゆっくりと大剣を振り下ろしたり、横に凪いだり、そのまま突きに転じたり。そしてまた大剣を背負った。
「俺が斬ったらぶっ壊れちまうからな」
彼の重そうな剣があの動作でぶれなかった所を見ると、それも誇張じゃないように思えた。
「俺達は、ミルとルイ。双子だ」
なるほど、見れば面立ちは良く似ている。ただしその顔立ちは男前な感じであったが。2人はそれぞれ弓と細い剣で藁人形の藁を散らした。2人の息のあったコンビネーションがウリってトコなのかな。
「フォルドだ」
と、すっと藁人形に近づくと、手に持ったナイフをその首に当てた。そしてやれやれみたいなポーズでまた壁際に戻っていく。なんだそりゃみたいな空気が漂ってるが、あれはなかなかやる男だろう。やらない男っぽい容貌なんだが。
「メイムです、炎を扱うのが得意です」
と皆に向かってペコリと頭を下げる。その深く被ったローブからちらりと覗いたのは……ネコミミ!!!! 俺は緊急で空間認識を彼女にピントを合わせて360度一部の隙も無く監視する。ちなみに下部の視点から確認したところ、ピンクの下着の上から伸びるしっぽの色から彼女は黒猫系だと思われる。ローブ脱いでくれないかなあ……、耳の生え際とか超見たいしもふもふしたいんだんだけど……。
メイムちゃんは、その杖を人形の方に向ける。人形が燃え上がるのかと思ったら、その周りに散らばっていた藁だけを燃やしたようだ。なかなかのコントロールである、素晴らしい、ハラショー。
俺はもうメイムちゃんから目が離せなかった。猫人族の里の近くまできて足止めを食っていたので俺はもう、もう……。
あれ、みんなの視線が俺に集まっている。
「おい、ユキ?」
リックの声で目が覚めた、そうか俺の番か。マジすいません、暴走してました。
「えっと、ボクはユキです。魔法使いです」
用意してあった杖(パイプ)を藁人形に向ける。そして杖の中に仕込んでおいた溶けた銅の時間停止を解くと杖の先端につめておいた木の栓が水蒸気に砕かれながら轟音と共に藁人形に叩き込まれる。俺は反動がここまできついと思ってなかったので、ごろごろと後ろに転がってしまった。うう、おぱんつ見られたかもしれない。だが、だれもこっちを見てなかったようだ、ラッキー。
「お前……今何したんだ?」
と恐る恐るリックが俺に尋ねる。
「……水魔法?」
「「「「うそつけ!!」」」」
皆の声がハモった。
ウッドチップみたいなもんだからと思ったが、これは確かに酷い。ずたずたに引き裂かれた藁人形を見て、俺はもうちょっとテストしておくべきだったと少し後悔した。
「出来ませんか?」
と大工の棟梁にお願いしてみる。見た目コワモテだが、マリアさんの頼みでこの急な仕事を請け負ってくれた評判の棟梁。ちなみにマリアさんに筆おろしされるまでDTだったらしい、おう同志よっって思ったけど、まだDTだったわ、俺は。
ほれた弱みではないが、今回のルエラの話を聞いて格安で受けてくれたらしい、らしいってのは正確な金額をマリアさんが教えてくれないんだよね。
「俺は出来る出来ないをいってるじゃねえ、お前らが住むなら大変だろ? って言ってるんだよ」
俺の後ろで、間取りや店の導線を確認しているユリアナとルエラ。他の大工さんの仕事のジャマをしないようにとは言っておいたが、なんか可愛がられてるし問題ないのかもしれない。
「大丈夫です。魔法でなんとかしますから」
「ああ、魔法使いなのか、なら判った。排水を下水に流せるようにすればいいんだな?」
「それでお願いします」
明日には、研修に入ってしまうのである程度目鼻を付けて置きたかったので作業を見に来たんだが、彼女らとこの棟梁に任せたら大丈夫そうだな。
1F部分の元のルエラの家の部分も改装して料理店にして、2Fを増設して居住エリアにすることにした。なるべく生活エリアに人目が入って欲しくないからね。
なので生活エリアの完成まではちょっと掛かりそうだ。研修から帰ってくるまでに、ある程度できてる感じだといいんだが。
研修を翌日に控え、俺たちはマリアの娼館のいつもの部屋で向き合っていた。
「じゃあ、明日からボクは研修に出かけるけど、その間にして欲しいことがある」
「「はい」」
ユリアナとルエラの声が重なる。
例の壷に入れた○タフクソースをルエラに渡す。
「これ、あのタレだけど、これを使わずに出来るだけ近いものを作り上げて欲しい。もちろんスグじゃなくていい。ボクが帰るまでに作れなんてムリな事は言わないからね」
タレの深みを知っているルエラたちが、俺の要望にちょっと驚いて眉を困らせていたので、焦っていない事を伝える。
もちろん店のスタートはこの○タフクさんで始めるつもりなんだけど、できたらこの世界の素材でこれを作り上げて欲しい。ある程度のヒントは教えるつもりでは居るけどね、ちなみに俺は再現しろって言われてもムリだと思う。
だけどこんな事を言い出したのはルエラの為だ。彼女の料理の能力はユリアナにも劣らないと思う。だからこそ、こんなおんぶにだっこじゃ勿体無いし、彼女の為にもならないと思ったから。こちらの素材で作れば、真似る店とかが出てくるのも面白いと思う。
「料理の事考えてるときのルエラはかっこいいからさ。期待してる」
って言ったら彼女の白い肌が次第に真っ赤になってドアから逃げ出してしまった。壷を持ったまま階段を駆け下りて、キッチンに向っている。ちょ、気が早い。もう夜更けだって言うのに。
「あー、ごめんユリアナ。明日からにしなさいって止めてきて」
と言ったらユリアナは笑顔で向ってくれた。
ちなみに、また今夜も寝るときに、キスを要求されてしまい要望に負けてしまった。これは常態化ですわ……。
「じゃあ、行ってくる」
と、俺は3人に伝える。
「またこんなに便利に使うとか、本当にユキはエルフ嫁使いが酷いのじゃ……」
「ごめん、リスティしか頼れないんだよ」
主に念話的な意味で。だが、その思いは上手いこと伝わらず、リスティは白い肌を赤く染める。
「しかも7日もここに閉じこもっておれとか。……で、わらわには無いのか? 判っておるのじゃぞ? そのルエラの事も」
と、ちょっとルエラに目線を投げたあと、俺の前にしゃがみ上目づかいで見てくるリスティ。そして、頬を突き出してくる。
俺はリスティの肩を抱き寄せて、唇を重ねた。リスティの目が見開かれ、その感情がオーバーロードしてこちらにも流れ込んでくる。あはは、混乱してる。
「い、いきなりとか。あんまりじゃろ」
と真っ赤になって抗議してくるリスティの頭をぽむぽむ。
「あはは、大好きだよリスティ。じゃあ2人を頼むね」
「うにゅぅ…… 任されたのじゃ……」
しおらしくなったリスティの面倒をユリアナに任せて、俺は彼女達に手を振って冒険者ギルドへと向った。私は? みたいな目で見るルエラの視線に気付かないフリをしながら。
俺は昨日の夜交渉して、今朝リスティをこっちにゲートで迎え入れた。リスティは俺と連絡が取り合えるからマリアのねぐらに居てもらって、なにかあったら連絡を入れてもらえるように。くれぐれも自分でなんとかしなくていい、まずは連絡と言い含めておいたが、あのキスで変に奮起しないと良いが。まあ、勢いでキスした俺も悪いか。
どうでもいいことだが、あれは俺のファーストキスではない、俺の最初を奪ったのは由香里ねーさんだ。兄貴の彼女のくせに。
俺が子供の頃に可愛い服を着せられて、その姿に感極まったのか抱きついてキスされたのだ、兄貴の目の前で。あの人はほんとフリーダムすぎて困るわ。
朝のギルドは初めてきたが、本当にこんなに居たんだってくらい冒険者たちが依頼版の前で、出された依頼の前で押しあいへし合いしている。
すると中から一人の男性がこちらに気付いて近づいてきた。
「妻が喜んでいた、ありがとう。お礼が言いたいから今度うちにつれて来いと大騒ぎだ」
と、ジュウド氏が笑いながら話しかけてきた。そのまま軽く挨拶して、奥に向う。
ドアの前に立っていた身体に似合わない大剣を背負った少年が話しかけてきた。
「おまえも今日の講習受けるのか? あの斬岩のジュウドと知り合い?」
と目を輝かせている。
「うん、ちょっと知り合い。この前仕事を手伝ってもらって」
「すげー、羨ましいぜ。ジュウドさん、アルガードでも有名な冒険者なんだぜ?」
と一緒に奥の部屋に向う。
「あ、俺はリックだ、よろしくな」
「ボクはユキ。研修良く知らないからよろしくね」
今日から正式にボクっ子にシフトだ。最悪バレた時に言い逃れできる要素を作り出しておかないとね。
この前会議していた部屋にはもう先客が待っていた。少し年上っぽい男女のペア、壁に寄りかかってこちらを見ている男。そして、ローブを着た俺と同い年くらいの少女だ。誰も喋らず、お互いをチェックしているようだ。リックも部屋にはいるとなんとなく喋らなくなり、用意してきた荷物を降ろしてその上に座っている。
「諸君、元気ないな。そんな事じゃ上は目指せんぞ?」
と大きな声を出しながら、体格の良いおっさんが入ってくる。エリンのおっさんが講師なのかな? とか勝手に想像してたが違うみたいだな。
「俺は、今回の研修の指導官のカーネルだ。じゃあまずは移動しよう」
と、彼に先導されてぞろぞろと進む。あれ、外にでるのか。
通用門からでてぐるっと回った所に、広い塀でかこまれたエリアがあった。訓練場かな? 奥に藁を巻いた杭などが見える。
「まずは自己紹介をしてもらおう。これから7日一緒に過ごすんだ、得体の知れない仲間じゃ信頼できんだろ。自分をアピールしてみろ」
と、訓練場の中ほどにある藁人形を指し示すカーネル氏。なるほど、それでこの訓練場な訳ね。
「じゃあ俺からな!! 俺はリックだ。剣で身を立てたい」
と背中から大剣を抜き、まっすぐに構える。しかし、藁人形には切りかからずゆっくりと大剣を振り下ろしたり、横に凪いだり、そのまま突きに転じたり。そしてまた大剣を背負った。
「俺が斬ったらぶっ壊れちまうからな」
彼の重そうな剣があの動作でぶれなかった所を見ると、それも誇張じゃないように思えた。
「俺達は、ミルとルイ。双子だ」
なるほど、見れば面立ちは良く似ている。ただしその顔立ちは男前な感じであったが。2人はそれぞれ弓と細い剣で藁人形の藁を散らした。2人の息のあったコンビネーションがウリってトコなのかな。
「フォルドだ」
と、すっと藁人形に近づくと、手に持ったナイフをその首に当てた。そしてやれやれみたいなポーズでまた壁際に戻っていく。なんだそりゃみたいな空気が漂ってるが、あれはなかなかやる男だろう。やらない男っぽい容貌なんだが。
「メイムです、炎を扱うのが得意です」
と皆に向かってペコリと頭を下げる。その深く被ったローブからちらりと覗いたのは……ネコミミ!!!! 俺は緊急で空間認識を彼女にピントを合わせて360度一部の隙も無く監視する。ちなみに下部の視点から確認したところ、ピンクの下着の上から伸びるしっぽの色から彼女は黒猫系だと思われる。ローブ脱いでくれないかなあ……、耳の生え際とか超見たいしもふもふしたいんだんだけど……。
メイムちゃんは、その杖を人形の方に向ける。人形が燃え上がるのかと思ったら、その周りに散らばっていた藁だけを燃やしたようだ。なかなかのコントロールである、素晴らしい、ハラショー。
俺はもうメイムちゃんから目が離せなかった。猫人族の里の近くまできて足止めを食っていたので俺はもう、もう……。
あれ、みんなの視線が俺に集まっている。
「おい、ユキ?」
リックの声で目が覚めた、そうか俺の番か。マジすいません、暴走してました。
「えっと、ボクはユキです。魔法使いです」
用意してあった杖(パイプ)を藁人形に向ける。そして杖の中に仕込んでおいた溶けた銅の時間停止を解くと杖の先端につめておいた木の栓が水蒸気に砕かれながら轟音と共に藁人形に叩き込まれる。俺は反動がここまできついと思ってなかったので、ごろごろと後ろに転がってしまった。うう、おぱんつ見られたかもしれない。だが、だれもこっちを見てなかったようだ、ラッキー。
「お前……今何したんだ?」
と恐る恐るリックが俺に尋ねる。
「……水魔法?」
「「「「うそつけ!!」」」」
皆の声がハモった。
ウッドチップみたいなもんだからと思ったが、これは確かに酷い。ずたずたに引き裂かれた藁人形を見て、俺はもうちょっとテストしておくべきだったと少し後悔した。
0
お気に入りに追加
295
あなたにおすすめの小説
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
他国から来た王妃ですが、冷遇? 私にとっては厚遇すぎます!
七辻ゆゆ
ファンタジー
人質同然でやってきたというのに、出されるご飯は母国より美味しいし、嫌味な上司もいないから掃除洗濯毎日楽しいのですが!?
嫌われ聖女さんはとうとう怒る〜今更大切にするなんて言われても、もう知らない〜
𝓝𝓞𝓐
ファンタジー
13歳の時に聖女として認定されてから、身を粉にして人々のために頑張り続けたセレスティアさん。どんな人が相手だろうと、死にかけながらも癒し続けた。
だが、その結果は悲惨の一言に尽きた。
「もっと早く癒せよ! このグズが!」
「お前がもっと早く治療しないせいで、後遺症が残った! 死んで詫びろ!」
「お前が呪いを防いでいれば! 私はこんなに醜くならなかったのに! お前も呪われろ!」
また、日々大人も気絶するほどの魔力回復ポーションを飲み続けながら、国中に魔物を弱らせる結界を張っていたのだが……、
「もっと出力を上げんか! 貴様のせいで我が国の騎士が傷付いたではないか! とっとと癒せ! このウスノロが!」
「チッ。あの能無しのせいで……」
頑張っても頑張っても誰にも感謝されず、それどころか罵られるばかり。
もう我慢ならない!
聖女さんは、とうとう怒った。
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
婚約破棄と領地追放?分かりました、わたしがいなくなった後はせいぜい頑張ってくださいな
カド
ファンタジー
生活の基本から領地経営まで、ほぼ全てを魔石の力に頼ってる世界
魔石の浄化には三日三晩の時間が必要で、この領地ではそれを全部貴族令嬢の主人公が一人でこなしていた
「で、そのわたしを婚約破棄で領地追放なんですね?
それじゃ出ていくから、せいぜいこれからは魔石も頑張って作ってくださいね!」
小さい頃から搾取され続けてきた主人公は 追放=自由と気付く
塔から出た途端、暴走する力に悩まされながらも、幼い時にもらった助言を元に中央の大教会へと向かう
一方で愛玩され続けてきた妹は、今まで通り好きなだけ魔石を使用していくが……
◇◇◇
親による虐待、明確なきょうだい間での差別の描写があります
(『嫌なら読むな』ではなく、『辛い気持ちになりそうな方は無理せず、もし読んで下さる場合はお気をつけて……!』の意味です)
◇◇◇
ようやく一区切りへの目処がついてきました
拙いお話ですがお付き合いいただければ幸いです
いきなり異世界って理不尽だ!
みーか
ファンタジー
三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。
自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる