7 / 88
ファースト・コンパクト
しおりを挟む
ふわふわと浮かびながらくるくると俺の周りを回っている妖精さん。
ニコニコとした笑顔は変わらない。アゴに人差し指を当てたり、匂いを
嗅ぐようにすんすんしてたりする。
目の前にミニマムとはいえ少女の裸体がある。
普通ならエサを前にした犬のようによだれを垂らし、
心のスマホを連写モードにして脳内に刻みこむ。そんな状況なのだが……。
正直俺は恐怖していた。
最初の遭遇時こそ、驚きとともにその可愛い容姿に目を奪われてしまったが、
その後理解したのだ。
この存在が、現状の俺より遙かに強い強者なのだと。
まずマナの存在感が圧倒的だ。
先ほどまでは感知できる範囲にそれなりの存在が居なかったので判らなかったが、
どうやら俺は他の存在のマナ総量を感じ取れるようだ。
その上で、俺のマナ総量が兎ドーム3個分だとすると、この羽少女は軽く見ても、
兎ドーム10個分くらいのマナを感じる。
これが某野菜民族みたいにマナ総量変化型とかだったらもう目も当てれない。
そして、俺の生命線の時空魔法。全俺の待望であった時間停止。
これは術者が視認できる生物、無生物問わず、すべての物質・任意の固体を、
世界の時間軸から切り離すことができる魔法だ。
時間軸から切り離された物体は俺が解除しない限りすべての活動が停止する。
基本的に物理干渉不能だ。マジ無敵。
しかし、自分のマナ総量を越えない限りという但し書きがついてしまう。
まさかの異世界ファーストコンタクトからの詰みである。少し女神さまを怨みたい。
あとはこの目の前の少女が肉食系ではなく、もしくはご飯食べたばっかで、
おなかいっぱいな事を祈るしかない。
草原の王ライオンだって、食後にインパラが目の前通ってもガンスルーするしね。
可愛い容姿なんだから怖い存在な訳がない、なんて根拠の無い妄想も今は保留だ。
可愛い姿で人を幻惑して人を喰らう魔物の話なんていくらでもある話だ。
特にここはまったく知識のない異世界なのだから。
口を開いて威嚇だと思われるのも恐ろしかったので、俺は借りてきたネコ状態。
いくつもの脳内会議をこなしたが、脳内の無能内閣は現状維持!
というどうしようもない結論しか出さなかった。
嵐が過ぎ去るのをじっと待つしか……。
って彼女が俺のポーチに近づいてフンフンスンスンと匂いを嗅いでいる。
もしかして!
と、彼女を刺激しない様にゆっくりと手を動かしてポーチのファスナーを開く。
ゆっくりとソレを取り出して包み紙を向いて手のひらに置いて差し出す。
俺の命は、このUMA三角糖のフルーツキャンディー1袋156円(税別)に託されたのだった。
妖精ちゃんがぁ!!
近づいてぇぇ!!
妖精ちゃんがぁ!!
手のひらのうえぇぇっ!!
匂いかんでえぇっ!!
妖精ちゃんがぁっ!!!!
・・・つっ近づいてぇっ!!!
妖精ちゃんがぁ舐めたぁぁーっ!!!!
もう脳内絶叫である。だが、許して欲しい。
ワンパンで吹っ飛ばされそうなゴリラと同じ檻に入れられて、
ずっと見詰め合ってた様なものだったのだ、小一時間。
あ、いや持っていってくれていいんですよ?
妖精さんは手のひらの上に腰掛けて、両手で飴を持ってペロペロしておられる。
どうぞ持ち帰りOKなんで、折り詰めないっすけど。
しかし、ここからがまぁ長かった。人には小さい飴であったが、
彼女にとってはメガバーガーも真っ青の大きさである。
少し舐めては嬉しそうにぱたぱたと周辺を飛び回り、
また俺の手のひらに戻ってきてチロチロと舐める。
手首の辺りに飴を置いて、手のひらの上にうつぶせに横たわって、
目の前の飴をにこにこと眺めている時間も長かった。
時計が無いので正確には判らないが、数時間かけて彼女は飴を楽しみ尽くした。
ちなみに手のひらもペロペロと舐められてしまった。初めての経験でした。
…ええ…ちょっと起っちゃいましたね……。
彼女は満足したのか、俺のポーチの上に座ってニコニコしている。
ここに来てやっと彼女には俺に対する害意はあまりないと判断した。
ないと思いたい。ぷりーず。
しかし緊張した時間が長かったのか喉が渇いた。
俺も飴を舐めようかと一瞬考えたたが、これは彼女との交渉材料になり得る物で、
かつ数に限りがあるものなのだ。なるべくなら温存したい。
そこで俺はコンタクトを試みる事にした。飴を食べるんだ、水だって飲むに違いない。
彼女がここに住んでいるなら水場を持っていてもおかしくない。
近くの葉っぱに腰掛けた彼女に対して川、池、水を飲むなどのゼスチャーを試す。
小首をかしげてる姿はなんか可愛らしいのだが、どうも伝わった感じがしない。
異世界交流失敗か?
「マジでみ、みずとかどこかにないかな」
乾いた喉から干からびた声がこぼれた。
すると彼女はぶんぶんと首を縦に振ると、森の中に飛んでいった……。
えっもしかして言葉通じるのか?
彼女はなかなか帰ってこなかった。だんだんとひりついてきた喉にイラついて、
俺は汚れるのも構わずにその場に横になって上を見る。
うっそうと茂った木々のスキマから覗く空が少し暗くなって来ているのが判るった。
夜が近いのだろう。
しばらくたってまた知覚範囲内に彼女が猛スピードでこちらに向かってきていた。
土に汚れた体に満面の笑み、そして両手にみみず。
って違う、そうじゃない。
どういう言語能力だよ。なんでそんな風に伝わったよ!!
なんて問題はそこじゃなかった。
目の前にうにうに動くみみずを俺に差し出してニコニコと笑っている彼女。
さっきまでキラキラしていた体がそこらじゅうドロだらけだった。
そんな好意にあふれた施しをどうお断りすればいいのか。俺は頭を抱えた。
ニコニコとした笑顔は変わらない。アゴに人差し指を当てたり、匂いを
嗅ぐようにすんすんしてたりする。
目の前にミニマムとはいえ少女の裸体がある。
普通ならエサを前にした犬のようによだれを垂らし、
心のスマホを連写モードにして脳内に刻みこむ。そんな状況なのだが……。
正直俺は恐怖していた。
最初の遭遇時こそ、驚きとともにその可愛い容姿に目を奪われてしまったが、
その後理解したのだ。
この存在が、現状の俺より遙かに強い強者なのだと。
まずマナの存在感が圧倒的だ。
先ほどまでは感知できる範囲にそれなりの存在が居なかったので判らなかったが、
どうやら俺は他の存在のマナ総量を感じ取れるようだ。
その上で、俺のマナ総量が兎ドーム3個分だとすると、この羽少女は軽く見ても、
兎ドーム10個分くらいのマナを感じる。
これが某野菜民族みたいにマナ総量変化型とかだったらもう目も当てれない。
そして、俺の生命線の時空魔法。全俺の待望であった時間停止。
これは術者が視認できる生物、無生物問わず、すべての物質・任意の固体を、
世界の時間軸から切り離すことができる魔法だ。
時間軸から切り離された物体は俺が解除しない限りすべての活動が停止する。
基本的に物理干渉不能だ。マジ無敵。
しかし、自分のマナ総量を越えない限りという但し書きがついてしまう。
まさかの異世界ファーストコンタクトからの詰みである。少し女神さまを怨みたい。
あとはこの目の前の少女が肉食系ではなく、もしくはご飯食べたばっかで、
おなかいっぱいな事を祈るしかない。
草原の王ライオンだって、食後にインパラが目の前通ってもガンスルーするしね。
可愛い容姿なんだから怖い存在な訳がない、なんて根拠の無い妄想も今は保留だ。
可愛い姿で人を幻惑して人を喰らう魔物の話なんていくらでもある話だ。
特にここはまったく知識のない異世界なのだから。
口を開いて威嚇だと思われるのも恐ろしかったので、俺は借りてきたネコ状態。
いくつもの脳内会議をこなしたが、脳内の無能内閣は現状維持!
というどうしようもない結論しか出さなかった。
嵐が過ぎ去るのをじっと待つしか……。
って彼女が俺のポーチに近づいてフンフンスンスンと匂いを嗅いでいる。
もしかして!
と、彼女を刺激しない様にゆっくりと手を動かしてポーチのファスナーを開く。
ゆっくりとソレを取り出して包み紙を向いて手のひらに置いて差し出す。
俺の命は、このUMA三角糖のフルーツキャンディー1袋156円(税別)に託されたのだった。
妖精ちゃんがぁ!!
近づいてぇぇ!!
妖精ちゃんがぁ!!
手のひらのうえぇぇっ!!
匂いかんでえぇっ!!
妖精ちゃんがぁっ!!!!
・・・つっ近づいてぇっ!!!
妖精ちゃんがぁ舐めたぁぁーっ!!!!
もう脳内絶叫である。だが、許して欲しい。
ワンパンで吹っ飛ばされそうなゴリラと同じ檻に入れられて、
ずっと見詰め合ってた様なものだったのだ、小一時間。
あ、いや持っていってくれていいんですよ?
妖精さんは手のひらの上に腰掛けて、両手で飴を持ってペロペロしておられる。
どうぞ持ち帰りOKなんで、折り詰めないっすけど。
しかし、ここからがまぁ長かった。人には小さい飴であったが、
彼女にとってはメガバーガーも真っ青の大きさである。
少し舐めては嬉しそうにぱたぱたと周辺を飛び回り、
また俺の手のひらに戻ってきてチロチロと舐める。
手首の辺りに飴を置いて、手のひらの上にうつぶせに横たわって、
目の前の飴をにこにこと眺めている時間も長かった。
時計が無いので正確には判らないが、数時間かけて彼女は飴を楽しみ尽くした。
ちなみに手のひらもペロペロと舐められてしまった。初めての経験でした。
…ええ…ちょっと起っちゃいましたね……。
彼女は満足したのか、俺のポーチの上に座ってニコニコしている。
ここに来てやっと彼女には俺に対する害意はあまりないと判断した。
ないと思いたい。ぷりーず。
しかし緊張した時間が長かったのか喉が渇いた。
俺も飴を舐めようかと一瞬考えたたが、これは彼女との交渉材料になり得る物で、
かつ数に限りがあるものなのだ。なるべくなら温存したい。
そこで俺はコンタクトを試みる事にした。飴を食べるんだ、水だって飲むに違いない。
彼女がここに住んでいるなら水場を持っていてもおかしくない。
近くの葉っぱに腰掛けた彼女に対して川、池、水を飲むなどのゼスチャーを試す。
小首をかしげてる姿はなんか可愛らしいのだが、どうも伝わった感じがしない。
異世界交流失敗か?
「マジでみ、みずとかどこかにないかな」
乾いた喉から干からびた声がこぼれた。
すると彼女はぶんぶんと首を縦に振ると、森の中に飛んでいった……。
えっもしかして言葉通じるのか?
彼女はなかなか帰ってこなかった。だんだんとひりついてきた喉にイラついて、
俺は汚れるのも構わずにその場に横になって上を見る。
うっそうと茂った木々のスキマから覗く空が少し暗くなって来ているのが判るった。
夜が近いのだろう。
しばらくたってまた知覚範囲内に彼女が猛スピードでこちらに向かってきていた。
土に汚れた体に満面の笑み、そして両手にみみず。
って違う、そうじゃない。
どういう言語能力だよ。なんでそんな風に伝わったよ!!
なんて問題はそこじゃなかった。
目の前にうにうに動くみみずを俺に差し出してニコニコと笑っている彼女。
さっきまでキラキラしていた体がそこらじゅうドロだらけだった。
そんな好意にあふれた施しをどうお断りすればいいのか。俺は頭を抱えた。
0
お気に入りに追加
295
あなたにおすすめの小説
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
「不細工なお前とは婚約破棄したい」と言ってみたら、秒で破棄されました。
桜乃
ファンタジー
ロイ王子の婚約者は、不細工と言われているテレーゼ・ハイウォール公爵令嬢。彼女からの愛を確かめたくて、思ってもいない事を言ってしまう。
「不細工なお前とは婚約破棄したい」
この一言が重要な言葉だなんて思いもよらずに。
※約4000文字のショートショートです。11/21に完結いたします。
※1回の投稿文字数は少な目です。
※前半と後半はストーリーの雰囲気が変わります。
表紙は「かんたん表紙メーカー2」にて作成いたしました。
❇❇❇❇❇❇❇❇❇
2024年10月追記
お読みいただき、ありがとうございます。
こちらの作品は完結しておりますが、10月20日より「番外編 バストリー・アルマンの事情」を追加投稿致しますので、一旦、表記が連載中になります。ご了承ください。
1ページの文字数は少な目です。
約4500文字程度の番外編です。
バストリー・アルマンって誰やねん……という読者様のお声が聞こえてきそう……(;´∀`)
ロイ王子の側近です。(←言っちゃう作者 笑)
※番外編投稿後は完結表記に致します。再び、番外編等を投稿する際には連載表記となりますこと、ご容赦いただけますと幸いです。
婚約破棄と領地追放?分かりました、わたしがいなくなった後はせいぜい頑張ってくださいな
カド
ファンタジー
生活の基本から領地経営まで、ほぼ全てを魔石の力に頼ってる世界
魔石の浄化には三日三晩の時間が必要で、この領地ではそれを全部貴族令嬢の主人公が一人でこなしていた
「で、そのわたしを婚約破棄で領地追放なんですね?
それじゃ出ていくから、せいぜいこれからは魔石も頑張って作ってくださいね!」
小さい頃から搾取され続けてきた主人公は 追放=自由と気付く
塔から出た途端、暴走する力に悩まされながらも、幼い時にもらった助言を元に中央の大教会へと向かう
一方で愛玩され続けてきた妹は、今まで通り好きなだけ魔石を使用していくが……
◇◇◇
親による虐待、明確なきょうだい間での差別の描写があります
(『嫌なら読むな』ではなく、『辛い気持ちになりそうな方は無理せず、もし読んで下さる場合はお気をつけて……!』の意味です)
◇◇◇
ようやく一区切りへの目処がついてきました
拙いお話ですがお付き合いいただければ幸いです
いきなり異世界って理不尽だ!
みーか
ファンタジー
三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。
自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!
女神様から同情された結果こうなった
回復師
ファンタジー
どうやら女神の大ミスで学園ごと異世界に召喚されたらしい。本来は勇者になる人物を一人召喚するはずだったのを女神がミスったのだ。しかも召喚した場所がオークの巣の近く、年頃の少女が目の前にいきなり大量に現れ色めき立つオーク達。俺は妹を守る為に、女神様から貰ったスキルで生き残るべく思考した。
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
【完結】あなたに知られたくなかった
ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。
5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。
そんなセレナに起きた奇跡とは?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる