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第七部

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クルサンド国 島津家久

 さて、あれから何度か奇襲をしかけちょっが、相手がおもしてかごつ予想通りに動っ。
 やっぱい、慣習には従うべきなんじゃろう。

「ナカズカサ殿、兵の準備が整いました。いつでもいけます」
「わかった。そいではしばらくん間待機しちょってくれ」

 おいがそうゆと、報告に来た兵は二カッと笑うて戻っていった。
 現在、おいたちは兵を5つに分けちょっ。
 1日目ん奇襲部隊、2日目ん奇襲部隊と部隊ごと総入れ替えをしちょっど。
 そいがでくっんも、あらかじめ部隊を置いちょく簡易ん砦を造っちょいたでだ。
 そして、そん砦を合計10個作っちょっ。敵部隊が釣れん可能性が高かと勘が囁いちょったが、まさかほんのこてなっとはな。

「よし、では部隊を進むっ。敵に嫌がらせをしたやいっき退っど」
「はっ!」

 こん日も、おいは部隊を率いて敵方へ奇襲をかけに動いた。
 もっとも、時間帯をばらしちょっが相手もそろそろ慣れてくっ頃じゃろう。

「敵は、野営準備を進めちょっな……、ん?」
「どうかされましたか?」
「いや、今回は奇襲に対して伏兵とかそげんのじゃなく、兵を前面に配置しちょっ」
「それは、ついに奴らを釣れそうという事でしょうか?」
「いや、恐らくそんたなかね」

 敵はこちらん出方を窺うとじゃなく、こちらを小勢と考えて迎え撃つ方向に舵を切ったんじゃろう。
 ただ、恐らくだが作戦を考ゆっ奴が変わったかもしれん。

「今日ん嫌がらせは延期や。 夜を待って動っど」
「かしこまりました!」



エルドール王国 アーネット

 さて、買って出たのは良い物の相手が来ない。
 今回は、ディーがずっと裏目裏目になっていたので、カレドと俺の作戦で行ってみたが……。

「来ないですね、敵」
「だからと言って油断をしてはならない。恐らくこちらの出方が分からず、時間を変えたのだろう。夜に備えて薪を集めておくように後方に伝えろ」

 正直、来ないなら来ないで良いのだ。
 そうすれば、あの考え無したちの溜飲も下がるというもの。

「このまま行けば、恐らく夜の奇襲になるだろう。交代で休めるように手配を頼む。また、休む際にはすぐに出れるように武器、防具はできる限り外さない様に通達しろ」
「かしこまりました!」

 交代で兵たちを休ませながら、数時間。
 辺りがとっぷりと暗くなり、月明かりだけが照らすようになった時に動きが出た。

「敵兵と交戦! 夜襲です!」
「至急敵を迎撃する! 敵兵の数はだいたいで良い、分かるか!?」
「月明かりがあるとはいえ、ほとんど見えておりません! ただ、ここ最近無かった馬蹄の音もしております!」

 馬蹄の音が増えている?
 普通、夜襲では馬は使わない。
 俺達みたいに風魔法で音を消せるなら別だが、一般的には歩兵が来るものだ。

「本格的な攻勢の可能性が高い! 陣形は円陣を組んで、敵と交戦しろ! 敵を殺すよりも、自分や仲間が生き残れるようにするんだ!」
「かしこまりました! ……ってアーネット様!? 敵陣に突っ込まれる気ですか!?」
「当たり前だ! こんな骨のある奴久しぶりなんだ! 戦わねば損だろう!」

 そう言うと、俺は馬に跨り敵陣へと突っ込んで名乗りを挙げた。

「どけぇ! 大将を出さんか! 我が名はアーネット! エルドール王国の将軍だ!」
「なに!? 将軍だと!?」

 俺が名乗りを挙げると、敵兵が殺到してきた。
 奴らが繰り出す槍を、俺は手に持った狼牙棒で体ごと粉砕していった。

「げぇ!? 化物!?」
「体ごと抉りやがったぞ!?」

 一振りするごとに、3、4人の身体を吹き飛ばしながら敵兵の中を進むと、目の前に北国らしからぬ浅黒い男が立って居た。
 男は、俺を見るなり肩に担いでいた反りのある大振りの剣をこちらに突きつけてきた。

「おいは、島津中務大輔家久! きさん、名んあっ男と見た!」
「おぉ! 俺はエルドール王国の将軍、アーネット! お前が島津の亡霊か!?」
「亡霊!? おいは生きとっど!」

 島津はそう言うと、馬を駆けさせてきた。
 そして、すれ違いざまにその大剣で俺を斬りつけてきたのだ。

「おぉ! 何という切れ味だ!?」

 その一撃を、俺は狼牙棒で受けて驚いた。
 なんと、受けた場所にあった棘が無いのだ。

「こん名刀に切れんもんななか。もっとも、そんでっけ鉄ん塊は流石に難しそうじゃがな!」

 そう言いながら、またしても島津は斬りつけてきた。
 今度は、馬を近づけての打ち合いだ。
 相手の剣が、俺の胴を斬ろうとしてくるのに合わせて、狼牙棒で受け。
 受けた返しに、狼牙棒で馬ごと粉砕しようとするが返す刃で防がれる。
 そんな打ち合いを数合重ねると、突然相手が距離を取った。

「貴様! 逃げる気か!?」
「きさんの様な怪力馬鹿を相手にしちょっ暇はなかでな! 全員撤収や!」

 浅黒い男がそう言うと、先ほどまでの攻勢が嘘のように一気に退却していった。

「ちっ! 仕方ない、勝鬨を挙げろ! こちらの勝利だ!」
「おぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」

 俺は、少しでも不満を反らして勝利を印象付けようと、勝鬨を挙げるのだった。
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