132 / 213
第六部
6-6
しおりを挟む
アーネットたちが、抗議に来てから数日後。
滑走路がようやく完成した。
後は、ドロシーの到着を待つばかりとなっている。
先触れの報告では、今日中にこちらに向かって来ると聞いていたので、文武官で手の空いている者全員で滑走路の近くに待機している。
「陛下、本当にこちらにドロシー様がいらっしゃるのでしょうか?」
「ドロシー様なら空を飛んでも不思議ではありませんが、いささかあの方一人にしては着地場所が大きいような……」
心配そうに文官たちが、だだっ広い滑走路を見ながら困惑している。
まぁ、心配したいのも分かる。
航空魔導兵器なんて、誰も信じられないだろう。
というか、空を飛ぶという発想すらしないだろう。
「まぁ、そう心配するな。ドロシーが持ってくるのは、そんなちんけな物ではない。きっとお前たちの度肝を抜くだろう」
俺がそう言うと、武官席に居るカレドとトリスタンが頷いているのが見えた。
そんな話をしていると、併設した物見櫓に居た兵が、声をあげる。
「陛下! こちらに向かって飛んでくるものがあります! 鳥ではありません! あれは!?」
物見の兵が、息をのんだのとほぼ同時にこちらからも肉眼で見えてきた。
地面に対して水平に伸びた翼に、明らかに鳥よりも大きな体。
それを見た文武官は、全員が唖然としていた。
「な、なんだあれは!?」
「へ、陛下! まさかあれがドロシー様の作ったものですか!?」
全員が唖然とする中、その飛行物体は徐々に高度を下げ、こちらの滑走路を目指して降りてきた。
それと同時に、推進力にしている魔力の放射が見えてくる。
その圧倒的な魔力量に、文官の中には気を失った者も居た。
そんな混乱があるなか、航空魔導兵器は滑走路に降り立つと、車輪がきしむ音を上げながら止まった。
「流石は、ディー……」
「これはまた、度肝を抜かれる大きさですね……」
航空兵器を前に、カレドとトリスタンも流石に唖然としていた。
そんな中、着地に成功した航空兵器へと梯子を持って兵たちが駆け寄り、扉を開けたのと同時に。
「やったぞ! 長距離飛行達成したぞ!」
「流石ドロシー様!」
「生きた心地がしなかった!」
という声が聞こえ、先ほどまで唖然としていた文武官は、今度は別の意味で唖然とし始めた。
まぁ、俺としては予想していたから仕方ないのだが。
あいつ、ぶっつけ本番で長距離飛んできたのか……。
「諸君! 到着しているのだ! 堂々としなさい!」
小太りの副所長の声が聞こえた瞬間、先ほどまで中から聞こえていた歓喜の声が止まった。
そして、次の瞬間ドロシーが梯子の前に姿を現した。
「おぉ! ドロシー様!」
「このような兵器見たこともありません!」
「流石世界一の魔道具開発者!」
「魔導兵器万歳! ドロシー様、万歳!」
ドロシーの姿を見た、文武官たちは一斉に歓声を上げた。
そして、ドロシーはその歓声を受けながら梯子を下りて俺と握手を交わした。
「ドロシー、よくやってくれた。みんな度肝を抜かれていたぞ」
「当たり前よ! これで度肝を抜かれない奴が居たら、私が泣くわ!」
「ハハハハ、確かにこれを見てそんな奴が居たら泣きたくなるな」
俺達が談笑してから、文武官たちに振り向き近くで見る事を許可すると、すぐさま全員が駆け寄った。
「これは、材質は鉄!? こんな鉄で覆われた物が飛ぶのか?」
「これ見てみろ! 筒の中に少し曲がった板が複数枚入っているぞ!」
「これは、鳥の翼の様に上下に動かさないのか? なぜあのように飛べるんだ?」
「しかし、大きい。これだけの大きさだと、数百の兵を乗せて運べるのではないか?」
全員が全員、各々の興味の示すまま航空兵器を眺め、軽く叩き、触って確かめていた。
まぁ、大きいものを見ると興奮するのは、いつの時代も何歳になっても変わらないものだ。
それが特に、見たことも無いものだとなおさらだろう。
「陛下! これは我らも空を飛べるのでしょうか!?」
「陛下! 私はこれに乗ってみとうございますぞ!」
そんなテンションが上がっている中に、普段冷静なトーマンが混じっているのを見るとなんともほほえましい。
というか、あいつ今乗って飛びたいとか言っていたぞ。
どんだけ好奇心旺盛なんだ。
「トーマン、それにはもう少し待て。これが出陣する際に一緒に乗せてやる」
「おぉ! 本当でございますか!? これは良い冥途の土産話になりましょう!」
「縁起でもない。お前にはまだまだ働いてもらわねばならないのだからな」
俺がそう言うと、トーマンは呵々と大笑して「失礼しました」と謝ってきた。
まぁ、テンションが上がっているのだろう。
「して陛下、こちらの兵器の名前は如何いたしますか?」
「……そうだな、伝説の龍の名を取ってバハムートとしたいが、どうだ?」
「なるほど! バハムートですな! 良い名かと思います」
「よし、ではこいつの名は、バハムートだ!」
それからバハムートは、近くに併設された格納庫に一旦しまわれて出番を待つのだった。
滑走路がようやく完成した。
後は、ドロシーの到着を待つばかりとなっている。
先触れの報告では、今日中にこちらに向かって来ると聞いていたので、文武官で手の空いている者全員で滑走路の近くに待機している。
「陛下、本当にこちらにドロシー様がいらっしゃるのでしょうか?」
「ドロシー様なら空を飛んでも不思議ではありませんが、いささかあの方一人にしては着地場所が大きいような……」
心配そうに文官たちが、だだっ広い滑走路を見ながら困惑している。
まぁ、心配したいのも分かる。
航空魔導兵器なんて、誰も信じられないだろう。
というか、空を飛ぶという発想すらしないだろう。
「まぁ、そう心配するな。ドロシーが持ってくるのは、そんなちんけな物ではない。きっとお前たちの度肝を抜くだろう」
俺がそう言うと、武官席に居るカレドとトリスタンが頷いているのが見えた。
そんな話をしていると、併設した物見櫓に居た兵が、声をあげる。
「陛下! こちらに向かって飛んでくるものがあります! 鳥ではありません! あれは!?」
物見の兵が、息をのんだのとほぼ同時にこちらからも肉眼で見えてきた。
地面に対して水平に伸びた翼に、明らかに鳥よりも大きな体。
それを見た文武官は、全員が唖然としていた。
「な、なんだあれは!?」
「へ、陛下! まさかあれがドロシー様の作ったものですか!?」
全員が唖然とする中、その飛行物体は徐々に高度を下げ、こちらの滑走路を目指して降りてきた。
それと同時に、推進力にしている魔力の放射が見えてくる。
その圧倒的な魔力量に、文官の中には気を失った者も居た。
そんな混乱があるなか、航空魔導兵器は滑走路に降り立つと、車輪がきしむ音を上げながら止まった。
「流石は、ディー……」
「これはまた、度肝を抜かれる大きさですね……」
航空兵器を前に、カレドとトリスタンも流石に唖然としていた。
そんな中、着地に成功した航空兵器へと梯子を持って兵たちが駆け寄り、扉を開けたのと同時に。
「やったぞ! 長距離飛行達成したぞ!」
「流石ドロシー様!」
「生きた心地がしなかった!」
という声が聞こえ、先ほどまで唖然としていた文武官は、今度は別の意味で唖然とし始めた。
まぁ、俺としては予想していたから仕方ないのだが。
あいつ、ぶっつけ本番で長距離飛んできたのか……。
「諸君! 到着しているのだ! 堂々としなさい!」
小太りの副所長の声が聞こえた瞬間、先ほどまで中から聞こえていた歓喜の声が止まった。
そして、次の瞬間ドロシーが梯子の前に姿を現した。
「おぉ! ドロシー様!」
「このような兵器見たこともありません!」
「流石世界一の魔道具開発者!」
「魔導兵器万歳! ドロシー様、万歳!」
ドロシーの姿を見た、文武官たちは一斉に歓声を上げた。
そして、ドロシーはその歓声を受けながら梯子を下りて俺と握手を交わした。
「ドロシー、よくやってくれた。みんな度肝を抜かれていたぞ」
「当たり前よ! これで度肝を抜かれない奴が居たら、私が泣くわ!」
「ハハハハ、確かにこれを見てそんな奴が居たら泣きたくなるな」
俺達が談笑してから、文武官たちに振り向き近くで見る事を許可すると、すぐさま全員が駆け寄った。
「これは、材質は鉄!? こんな鉄で覆われた物が飛ぶのか?」
「これ見てみろ! 筒の中に少し曲がった板が複数枚入っているぞ!」
「これは、鳥の翼の様に上下に動かさないのか? なぜあのように飛べるんだ?」
「しかし、大きい。これだけの大きさだと、数百の兵を乗せて運べるのではないか?」
全員が全員、各々の興味の示すまま航空兵器を眺め、軽く叩き、触って確かめていた。
まぁ、大きいものを見ると興奮するのは、いつの時代も何歳になっても変わらないものだ。
それが特に、見たことも無いものだとなおさらだろう。
「陛下! これは我らも空を飛べるのでしょうか!?」
「陛下! 私はこれに乗ってみとうございますぞ!」
そんなテンションが上がっている中に、普段冷静なトーマンが混じっているのを見るとなんともほほえましい。
というか、あいつ今乗って飛びたいとか言っていたぞ。
どんだけ好奇心旺盛なんだ。
「トーマン、それにはもう少し待て。これが出陣する際に一緒に乗せてやる」
「おぉ! 本当でございますか!? これは良い冥途の土産話になりましょう!」
「縁起でもない。お前にはまだまだ働いてもらわねばならないのだからな」
俺がそう言うと、トーマンは呵々と大笑して「失礼しました」と謝ってきた。
まぁ、テンションが上がっているのだろう。
「して陛下、こちらの兵器の名前は如何いたしますか?」
「……そうだな、伝説の龍の名を取ってバハムートとしたいが、どうだ?」
「なるほど! バハムートですな! 良い名かと思います」
「よし、ではこいつの名は、バハムートだ!」
それからバハムートは、近くに併設された格納庫に一旦しまわれて出番を待つのだった。
0
お気に入りに追加
170
あなたにおすすめの小説
余命宣告を受けたので私を顧みない家族と婚約者に執着するのをやめることにしました
結城芙由奈
恋愛
【余命半年―未練を残さず生きようと決めた。】
私には血の繋がらない父と母に妹、そして婚約者がいる。しかしあの人達は私の存在を無視し、空気の様に扱う。唯一の希望であるはずの婚約者も愛らしい妹と恋愛関係にあった。皆に気に入られる為に努力し続けたが、誰も私を気に掛けてはくれない。そんな時、突然下された余命宣告。全てを諦めた私は穏やかな死を迎える為に、家族と婚約者に執着するのをやめる事にした―。
2021年9月26日:小説部門、HOTランキング部門1位になりました。ありがとうございます
*「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
※2023年8月 書籍化
旦那様、前世の記憶を取り戻したので離縁させて頂きます
結城芙由奈
恋愛
【前世の記憶が戻ったので、貴方はもう用済みです】
ある日突然私は前世の記憶を取り戻し、今自分が置かれている結婚生活がとても理不尽な事に気が付いた。こんな夫ならもういらない。前世の知識を活用すれば、この世界でもきっと女1人で生きていけるはず。そして私はクズ夫に離婚届を突きつけた―。
キャンピングカーで往く異世界徒然紀行
タジリユウ
ファンタジー
《第4回次世代ファンタジーカップ 面白スキル賞》
【書籍化!】
コツコツとお金を貯めて念願のキャンピングカーを手に入れた主人公。
早速キャンピングカーで初めてのキャンプをしたのだが、次の日目が覚めるとそこは異世界であった。
そしていつの間にかキャンピングカーにはナビゲーション機能、自動修復機能、燃料補給機能など様々な機能を拡張できるようになっていた。
道中で出会ったもふもふの魔物やちょっと残念なエルフを仲間に加えて、キャンピングカーで異世界をのんびりと旅したいのだが…
※旧題)チートなキャンピングカーで旅する異世界徒然紀行〜もふもふと愉快な仲間を添えて〜
※カクヨム様でも投稿をしております
異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた
りゅう
ファンタジー
異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。
いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。
その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。
冷宮の人形姫
りーさん
ファンタジー
冷宮に閉じ込められて育てられた姫がいた。父親である皇帝には関心を持たれず、少しの使用人と母親と共に育ってきた。
幼少の頃からの虐待により、感情を表に出せなくなった姫は、5歳になった時に母親が亡くなった。そんな時、皇帝が姫を迎えに来た。
※すみません、完全にファンタジーになりそうなので、ファンタジーにしますね。
※皇帝のミドルネームを、イント→レントに変えます。(第一皇妃のミドルネームと被りそうなので)
そして、レンド→レクトに変えます。(皇帝のミドルネームと似てしまうため)変わってないよというところがあれば教えてください。
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
性格が悪くても辺境開拓できますうぅ!
エノキスルメ
ファンタジー
ノエイン・アールクヴィストは性格がひねくれている。
大貴族の妾の子として生まれ、成人するとともに辺境の領地と底辺爵位を押しつけられて実家との縁を切られた彼は考えた。
あのクソ親のように卑劣で空虚な人間にはなりたくないと。
たくさんの愛に包まれた幸福な人生を送りたいと。
そのためにノエインは決意した。誰もが褒め称える理想的な領主貴族になろうと。
領民から愛されるために、領民を愛し慈しもう。
隣人領主たちと友好を結び、共存共栄を目指し、自身の幸福のために利用しよう。
これはちょっぴり歪んだ気質を持つ青年が、自分なりに幸福になろうと人生を進む物語。
※小説家になろう様、カクヨム様でも掲載させていただいています
婚約破棄の後始末 ~息子よ、貴様何をしてくれってんだ!
タヌキ汁
ファンタジー
国一番の権勢を誇る公爵家の令嬢と政略結婚が決められていた王子。だが政略結婚を嫌がり、自分の好き相手と結婚する為に取り巻き達と共に、公爵令嬢に冤罪をかけ婚約破棄をしてしまう、それが国を揺るがすことになるとも思わずに。
これは馬鹿なことをやらかした息子を持つ父親達の嘆きの物語である。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる