最弱な奴が実は最強?

レン

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二章 最強の叛逆

兄と妹と家族と・・・

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 遂に決行日が訪れた。
 俺はいつもと同じように変声器と仮面をつけ目的地に向かって走っていた。
 いつもなら妹が寝た後に家を出るのだが今回ばかりは少し違った。
 それは俺が家を出る前に遡る。
 ———時間になったため俺は妹が寝たのを確認して家を出ようとした。
「行ってくるよ。杏花」
 俺は杏花が居る部屋のドアを開け中には入らずその場で挨拶をした。
 返事などあるわけもなく俺は一通り準備をして家を出るため玄関に向かった。
 そしてドアを押し開け外に出ようとしている時に後ろから声が聞こえた。
「いってらっしゃい。お兄ちゃん。」
 俺が驚きながら後ろを振り返ると何とそこには寝ていたはずの杏花が立っていた。
「お前なんで?寝ていたんじゃないのか?」 
「ううん。ほんとは起きてたの。」
「その仮面。やっぱり。」
 杏花のその言葉に俺の心臓が大きく跳ね上がった。
 そして杏花は言った。
「お兄ちゃんが『レベリオー』なんだね。」
 知られていた。いつからだ?一体いつから知っていたんだ?
 動揺している俺をよそに杏花は話を続ける。
「お兄ちゃんはこれまで一度も私に両親の事とか聞かせてくれなかったよね?」
「そして思い出話も・・・。」
「何度聞いてもはぐらかされてきた。」
「だから私、調べたの。自分の親は誰なのか。」
「お兄ちゃんが出掛けている時に実際にスラムに行ったり情報屋みたいな人に調べもらったりしてね。」
「失くしていた記憶も少しずつ思い出してきた。」
「朧げだけど自分の親についても思い出した。」
「けど調べてみたら死んでたの。でも原因は病気とか寿命じゃなかった。」
 次に杏花の口から出てきた言葉は俺が今まで杏花に隠していたことそのものだった。
「お兄ちゃんが殺したんだね?私の本当の家族を。」
「・・・調べていくうちに色んなことが分かったよ。」
「過去のスラムでの事件のこと。そしてそれのせいで親は死んだこと。」
「そしてそれらの出来事がたった1人の能力者によってたった一夜の間に起こったということまでね。」
「お兄ちゃんは今まで私たち2人の親は病気で亡くなったとしか言わなかったよね?」
「でもまさかお兄ちゃんは本当の家族じゃなくて更には私の家族を殺した張本人だったとはね。」
 そして一通り話し終えたのか杏花は俺に対して質問してきた。
「ねぇ?なんでお兄ちゃんは見ず知らずの私なんかを妹として育てようとしたの?」
 俺は少しの間、思案した。
 そして思案し終えた俺は思い浮かんだ言葉をそっくりそのまま杏花に言った。
「・・・贖罪をしたいという気持ちもあった。」
 こんなこと言ったらきっと軽蔑されるだろう。
 罪滅ぼしの道具だったのかと罵倒されるだろう。
 確かに自分が不利にならないようにすること簡単だ。
 嘘をついたりはぐらかしたりと何だって出来る。
 けど俺はそんな事したくなかった。
 たとえ罵倒されたり軽蔑されたりましてやこの場で復讐されようとも。
 杏花には知る権利があるのだ。
 それからも俺の話は続く。
「俺は知っての通り過去に史上最悪のとんでもない事件を起こした。」
「瓦礫などはもちろん家などの大きい建物。」
「最終的には数多くの命でさえ消した。」
「そんな中で唯一、生き残っていたのが当時まだ小さかったお前だ。」
「俺はお前を見つけた時、泣きながら抱きしめた。」
「姉を失った悲しみや俺のせいで多くの命が失われてしまった罪悪感。」
「そんな複雑な感情が湧き出てきて泣いちまった。」
「思えばそこからだった・・・。俺がお前を育てようと心から決意したのは。」
「幸か不幸かあの時のショックによるものなのかお前は記憶を失っていた。」
「だから俺がお前の実兄だと嘘をつけば疑われる事なく育てることができると思った。」
「俺は最初、心の中ではお前を立派に育てることによって罪滅ぼしができると勘違いしていた。」
「結局、自分のことで頭が手一杯だったんだ。」
「・・・だけど今は違う。」
「一緒に暮らしてきた今日までの時間。それは俺の心を大きく変えた。」
「お前のその純粋無垢な優しさが俺の心を優しく包み癒してくれた。」
「お前が作ってくれた料理。可愛らしく輝く笑顔。」
「その全てがお前から貰ったかけがえの無いものであり俺の宝物なんだ。」
 そして俺は最後の言葉をしっかりと杏花の心に届くようにはっきりと言った。
「贖罪の為なんかじゃあない。俺はお前を妹として心から愛しているんだ!」
 思ったことをありのままに言った。
 あとは俺の出る幕はない。今後の選択は杏花が決めるものであり俺は結末が何であれ受け入れるとしよう。
 すると黙って聞いていた杏花が口を開けた。
「やっぱりお兄ちゃんは優しいね・・・。」
「え・・・?」
 予想外の返答に困惑している俺をよそに杏花はそのまま話を続ける。
「実親不在の真実を初めて知った当初、私は何も考えられなかった。」
「だって実は死んでいてその原因がお兄ちゃんだったなんて思ってもみなかったんだもん。」
「でもそんな事よりも私はお兄ちゃんを憎みきれなかったんだ。」
「だってお兄ちゃんと過ごしてきたこれまでの日々が頭にたくさん浮かんできたから。」
「私が何か失敗した時も心配してくれたり一緒にやってくれたりしてくれた。」
「その時、私は心で理解した。」
「きっとお兄ちゃんは罪悪感なんかじゃなく本当に私を愛してくれているって。」
「さらに嘘をつけた場面だったのにちゃんと心の内をしゃべってくれた。」
「少し抜けてておバカなところはあるけど心の奥底では他人を思い同時に自分が信じるの正義を貫く。」
「そんなお兄ちゃんが私は大好き・・・。」
「だからね・・・。」
 そして杏花は抱きついてきて俺の胸に顔を埋めながら言った。
「死なないで・・・。私のお兄ちゃん。」  
 杏花の顔を覗くと泣いていた。
 まるで悟られないように必死に隠そうと耐えながら泣いていたのだ。
 それを見た俺は杏花の頭を優しく抱き言った。
「あぁ。約束する。どんな時も必ず帰ってくる。」
 そしてこの瞬間、俺たちは本当の意味で家族になれたのであった。
 
 






 
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