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悪
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俺は元々「スラム」に住んでいた。
親は知らない。自分の名前さえも知らない。捨てられたのだと自覚した。
でも周りが俺のことを『クレア』と呼ぶのでその呼び名をそのまま俺の名前にした。
そんな俺だが「スラム」で生きていく上で一番大事なものが欠落していた。
それは力である。生き抜くための力。
当時の俺は力がなかった。なんなら「最弱」とまで呼ばれていた。
そんな蔑まれてばかりの人生だが絶望はしなかった。
いや全てを諦めていたと言った方が正しいと言えよう。
ゴミ箱を漁り地べたを這いつくばるような人生。
こんな生活が一生続くと思いながらも生きることさえ諦めていた俺の生活に突如として変化が生まれた。
しかしそれは良い変化ではなく悪い変化になるのだが・・・。
ある日、一人の能力者がこの街に来た。
そいつ曰く何かしらの人体実験に無能力者が使われるらしい。
そして俺を含めた50人近い無能力者が奴隷のように連れて行かれた。
同時に確かその頃だっただろうか・・・?
ある一人の少年がスラム全体において「最強」と呼ばれ畏怖されるようになったのは・・・。
連れてこられた無能力者達は独房に入れられ時間になると外に出てその度に薬物などが投与されたりなど様々な人体実験が行われた。
そして俺は偶然にも実験用のベットに横たわるとき部屋に書いてある文字が目に入った。
その頃、俺は子供ではあるが漢字などの文字は読めることが出来た。
そして部屋に書かれてあった言葉は。衝撃のものだった。
『能力者創生計画』
この言葉を簡単に言ってしまえば能力者を作る計画である。
能力による犯罪や他国との戦争が絶えないこの社会で絶対的な権力を得るために必要なのは力。
そしてこの国のトップは能力者を増やし自国を強くしようと考えた。
けどその実験も簡単なものではなかった。
薬剤などを投与された無能力者は苦痛に苛まれ叫び声をあげたりもした。
身体の中に何かが入り込んでくるような感覚。
その感覚が無能力者に苦痛と恐怖を与えていた。
日々繰り返される実験に耐えかね独房の中で自殺をし自ら命を絶つ者もいた。
けどそんな実験の日々も終わりを告げた。
能力者に覚醒したものが現れたのだ。
しかし能力者に覚醒したのはわずか2人。
俺と隣に居た奴だけだった。
そいつの名は「ロキ」と言った。ロキも無能力者だったのだ。
そして俺は次の瞬間、実験の時に使用していたやつとはまた違う何かを首筋に注射された。
それからのことはあまり覚えていない。
ただ一つ覚えているのは次の俺が目を覚ました時、眼下にあったのは鉄剣に貫かれた大量の死体だけだ。
それからと言うもの俺とロキは軍に所属し国からの命令でいろんな仕事をした。
自ら進んでこの道を選んだわけではない。
「スラム」には攻撃しないことを条件に俺たちは半ば強制的にこの道を選ばせられた。
「スラム」は俺たちにとって故郷も同然。だからこそ守りたかった。
けどアイツらはそんな事、どうでも良かった。
ある日の夜、俺たちに命令が下った。
それは「スラムを消せ」とのことだった。
俺たちは抗議した。
「おい!!約束が違うぞ!!」と。
けどその行為も虚しくまた首筋に前と同じようなものを注射された。
視界が暗転する。意識が暗闇に沈む。
薄れ行く意識の中、俺は目の前の男の顔を忘れない。
あの汚く下卑た笑い声をあげ不気味なほど口角を釣り上げたあの顔は。
今思えばあれは俺たちの意識を操るための薬だったのかもしれない。
そういった薬を作ることができる能力を持った奴でもいるのだろうか?
なぜ今までされてこなかったかと言うと能力というのは自分の意思で操った方が強いと言う点からだろう。
薬などによる洗脳を受けながら能力を発動してもそれは自分の意思ではないので操作精度や威力が幾分劣る。
けど無能力者にとって威力が劣ろうとも能力は十分すぎるほど危険なものだった。
それから俺とロキは洗脳下で無能力者の蹂躙を始めてしまった。
その時は俺たちだけでなく軍の奴らも一緒に派遣された。
そして殲滅を始め数時間が経過した時、俺とロキは正気を取り戻した。
そして街の惨状を見て俺は嘆いた。叫んだ。
隣のロキも泣いてはいなかったが渋い顔をしている。
空が紅くなり大地が揺れ聞こえていた人々の悲鳴がさらに大きく聞こえてくる。
そして俺は知ることになる。この騒ぎの元凶を。
元凶は一人の男だった。たった一人の男が世界を破滅へと導いている。
俺はロキを連れてその場を離れた。
離れようと走っていると背中の方で轟音が鳴った。
振り向くと地獄のような風景が広がっていた。
人が次々に消えていきそれと同時に身の回りの建物も消えていった。
あとは斗真の話していた通りだ。
街は消え生き残った俺とロキは薄暗い夜の中、息を切らしていた。
そして俺は虐殺された無能力者の死体を思い返した。
「この国が悪いんだ。能力なんてもんがあるからダメなんだ。だったら・・・。」
そして俺は人々が消えていく光景を頭に浮かべ微笑を浮かべた。
「俺がこの力を使ってこの国の腐った人間たちを一人残らず殺してやる。」
俺は声高らかに告げた。
「ここからは楽しい復讐劇の始まりだ。」
俺はその時、全ての原因であるこの国に対して復讐を誓ったのであった。
親は知らない。自分の名前さえも知らない。捨てられたのだと自覚した。
でも周りが俺のことを『クレア』と呼ぶのでその呼び名をそのまま俺の名前にした。
そんな俺だが「スラム」で生きていく上で一番大事なものが欠落していた。
それは力である。生き抜くための力。
当時の俺は力がなかった。なんなら「最弱」とまで呼ばれていた。
そんな蔑まれてばかりの人生だが絶望はしなかった。
いや全てを諦めていたと言った方が正しいと言えよう。
ゴミ箱を漁り地べたを這いつくばるような人生。
こんな生活が一生続くと思いながらも生きることさえ諦めていた俺の生活に突如として変化が生まれた。
しかしそれは良い変化ではなく悪い変化になるのだが・・・。
ある日、一人の能力者がこの街に来た。
そいつ曰く何かしらの人体実験に無能力者が使われるらしい。
そして俺を含めた50人近い無能力者が奴隷のように連れて行かれた。
同時に確かその頃だっただろうか・・・?
ある一人の少年がスラム全体において「最強」と呼ばれ畏怖されるようになったのは・・・。
連れてこられた無能力者達は独房に入れられ時間になると外に出てその度に薬物などが投与されたりなど様々な人体実験が行われた。
そして俺は偶然にも実験用のベットに横たわるとき部屋に書いてある文字が目に入った。
その頃、俺は子供ではあるが漢字などの文字は読めることが出来た。
そして部屋に書かれてあった言葉は。衝撃のものだった。
『能力者創生計画』
この言葉を簡単に言ってしまえば能力者を作る計画である。
能力による犯罪や他国との戦争が絶えないこの社会で絶対的な権力を得るために必要なのは力。
そしてこの国のトップは能力者を増やし自国を強くしようと考えた。
けどその実験も簡単なものではなかった。
薬剤などを投与された無能力者は苦痛に苛まれ叫び声をあげたりもした。
身体の中に何かが入り込んでくるような感覚。
その感覚が無能力者に苦痛と恐怖を与えていた。
日々繰り返される実験に耐えかね独房の中で自殺をし自ら命を絶つ者もいた。
けどそんな実験の日々も終わりを告げた。
能力者に覚醒したものが現れたのだ。
しかし能力者に覚醒したのはわずか2人。
俺と隣に居た奴だけだった。
そいつの名は「ロキ」と言った。ロキも無能力者だったのだ。
そして俺は次の瞬間、実験の時に使用していたやつとはまた違う何かを首筋に注射された。
それからのことはあまり覚えていない。
ただ一つ覚えているのは次の俺が目を覚ました時、眼下にあったのは鉄剣に貫かれた大量の死体だけだ。
それからと言うもの俺とロキは軍に所属し国からの命令でいろんな仕事をした。
自ら進んでこの道を選んだわけではない。
「スラム」には攻撃しないことを条件に俺たちは半ば強制的にこの道を選ばせられた。
「スラム」は俺たちにとって故郷も同然。だからこそ守りたかった。
けどアイツらはそんな事、どうでも良かった。
ある日の夜、俺たちに命令が下った。
それは「スラムを消せ」とのことだった。
俺たちは抗議した。
「おい!!約束が違うぞ!!」と。
けどその行為も虚しくまた首筋に前と同じようなものを注射された。
視界が暗転する。意識が暗闇に沈む。
薄れ行く意識の中、俺は目の前の男の顔を忘れない。
あの汚く下卑た笑い声をあげ不気味なほど口角を釣り上げたあの顔は。
今思えばあれは俺たちの意識を操るための薬だったのかもしれない。
そういった薬を作ることができる能力を持った奴でもいるのだろうか?
なぜ今までされてこなかったかと言うと能力というのは自分の意思で操った方が強いと言う点からだろう。
薬などによる洗脳を受けながら能力を発動してもそれは自分の意思ではないので操作精度や威力が幾分劣る。
けど無能力者にとって威力が劣ろうとも能力は十分すぎるほど危険なものだった。
それから俺とロキは洗脳下で無能力者の蹂躙を始めてしまった。
その時は俺たちだけでなく軍の奴らも一緒に派遣された。
そして殲滅を始め数時間が経過した時、俺とロキは正気を取り戻した。
そして街の惨状を見て俺は嘆いた。叫んだ。
隣のロキも泣いてはいなかったが渋い顔をしている。
空が紅くなり大地が揺れ聞こえていた人々の悲鳴がさらに大きく聞こえてくる。
そして俺は知ることになる。この騒ぎの元凶を。
元凶は一人の男だった。たった一人の男が世界を破滅へと導いている。
俺はロキを連れてその場を離れた。
離れようと走っていると背中の方で轟音が鳴った。
振り向くと地獄のような風景が広がっていた。
人が次々に消えていきそれと同時に身の回りの建物も消えていった。
あとは斗真の話していた通りだ。
街は消え生き残った俺とロキは薄暗い夜の中、息を切らしていた。
そして俺は虐殺された無能力者の死体を思い返した。
「この国が悪いんだ。能力なんてもんがあるからダメなんだ。だったら・・・。」
そして俺は人々が消えていく光景を頭に浮かべ微笑を浮かべた。
「俺がこの力を使ってこの国の腐った人間たちを一人残らず殺してやる。」
俺は声高らかに告げた。
「ここからは楽しい復讐劇の始まりだ。」
俺はその時、全ての原因であるこの国に対して復讐を誓ったのであった。
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