最弱な奴が実は最強?

レン

文字の大きさ
上 下
36 / 53

凌駕

しおりを挟む
 その言葉を聞いたクレアはまるで無邪気な子供のような笑みを浮かべた。
「やっとその気になったか!!面白い!!」
「血で血を洗う死と隣り合わせの闘いを楽しもう!!」
 その言葉を聞いたあと俺はすぐさまクレアの懐に飛び込みナイフを突きつけた。
 クレアも対応して俺の腕を鷲掴みにして止めた。
 お互いが頭突きを繰り出し再び距離が開いた。
「チッ・・・」
 このままじゃいつまで経っても勝負がつかない。しかも怪我を負っている分こっちの方が不利。
 長時間の戦闘はあまりにもリスキーである。
 だからと言って俺が負けることはない。
 俺は冷静に相手のことを分析した。
 能力同士で戦おうにもお互いに相性が悪い。それはクレアもわかっていることだろう。
 そして俺にはもう一つ切り札がある。
 先程「これ以上の力はない」と言った。
 けどそれは俺が俺でいられる力の上限の話である。
 たがまたあの夜のように使用率100%を超えることが出来たら?
 俺は今度こそ普通の世界に戻れなくなるかも知れない。
 でもそれでも良い・・・。仲間を救えるなら。奈津の好きだった世界が守れるのなら。
 俺は懐から一つの錠剤を出しそれを口の中に放り込んだ。
       ・・・・・・・能力使用率200%・・・・・・・   
 ———俺は斗真の変化に驚きを隠せなかった。
 もう一段階、上のステージがあるとは思わなかった。
 俺の限界は能力使用率100%までだった。そうここまでが俺の全力だ。
 なのに!?この男は更に上をいく。軽々と凌駕していく。それが許せなかった。
「何故!?お前がそこまでの力を有している!?」
「本当の絶望を知らずただのうのうと生きて来たお前が!!!」
 俺は斗真に向かって叫んだと同時に瞬時に斗真の上空に移動してそのまま拳を振り下ろした。
 土煙が立ち視界が遮られる。そして数秒が経つとだんだん土煙も引いていき視界が明瞭になっていく。
 するとそこには俺の全力の拳を軽々しく片手で受け止めている斗真が立っていた。
 すると斗真の口が開く。
「絶望を知らないだと?そんなものとうの昔に経験した。たくさん泣いたりもした。」
 そして斗真は続きを口にした。
「けどな。悲しみや絶望その全てをひっくるめて今の俺がいる。」
「だから絶望を乗り越えることも知らないお前なんかに負けるなんてことはあり得ないんだ。」
 そして俺はクレアの横腹を思いっきり蹴り上げた。
「ガハッ・・・!!!???」
 クレアが遥か上空に打ち上げられていく。
 それを見て俺も力強く大地を踏み締め飛んだ。
 クレアに追いつき最後の一撃を放った。
 クレアはその凄いスピードで地面叩きつけられその衝撃で地面が陥没した。
 着地しクレアを見ると髪の毛などが元に戻っていた。
 どうやら能力が解けたらしい。
 クレアは呻き声を上げながら血を吐いた。
「まだ終わりじゃない!!!」
 そしてクレアは最後の攻撃を俺に仕掛けて来た。
「『雷砲』!!!」
 けどそれが顕現することはなかった。
「何故だ!?なぜ顕現できない。」
 狼狽しているクレアに俺は告げた。
「時間は掛かったが成し遂げたぞ。」
 その言葉を聞いてクレアは俺を睨む。
「何をした!?」
 俺はその問いに冷静に告げた。
「お前の『能力』自体を消滅させた。」
「なっ・・・!!!!」
 俺は消滅させるまでに時間は掛かったが能力の消滅を完了した。
 だが完全なる消滅には至らなかった。
 ほとんどの力を消し去ることが出来たがまだ力の断片はクレアの中に残っている。
 それほど強大な力だった。
 けどそこまで力を失っていると言うことはそれだけでも十分なデメリットとなりうる。
 もう無理だと悟ったのかクレアは笑い声を上げた。
「これが最強か・・・。ハハハハハ!!!」
 そして俺は殺す前にクレアに質問をした。
「何故お前はそんなにも最強に拘ったんだ?」
 その問いにクレアは微笑と衝撃の一言を返した。
「語られることのなかったあの日のもう一つの真実を教えてやろう。」
 そうして語られる。俺が知らなかったあの日のもう一つの真実について・・・。
 
 
しおりを挟む

処理中です...