英傑奇譚

レン

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弱者

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 先に仕掛けてきたのはクリミナの方だった。
 一瞬姿が消えたと思ったらいきなり後ろにいて驚いたが俺は何とか対応し防御する。
「クッ・・・!」
 なんて重い一撃だ。腕が痺れてしまいそうだ。
 俺も攻撃に転じようと殴ろうとしたが当たらず距離を取られてしまった。
 次は俺から攻撃を仕掛けようとクリミナに向かって全力で走った。
 能力者との戦いでしてはいけないのは冷静さを欠くという事と距離を取られてしまうということ。
 冷静にならなければ勝てる戦いも勝てなくなる。
 能力者を相手にしているのであれば尚更だ。
 コンマ何秒の世界で命のやり取りをしているのだ。
 怒りや憎悪に身を任せただ闇雲に戦っても命を落とすのは火を見るより明らかである。
 ピンチの時ほど冷静であるべきなのである。
 そしてもう一つは相手との距離。
 現段階は相手の能力はもちろん遠距離系か近距離系などの使用範囲やデメリットなど詳細がわからない。
 だから下手に距離をとって遠距離から一方的にやられるのは何としても防ぎたい。
 しかも俺は無能力者。
 攻撃手段もただ相手を殴るだけと結局のところ近接戦闘しかできない。
 だから俺は走ったのだ。
 そこからは壮絶な戦いが繰り広げられた。
 お互いに地を蹴り壁を蹴りまるで地面も壁も全てが足場だと言わんばかりに部屋中を駆け回っていた。
 攻撃が皮膚を掠めそこから血が滲み出してくる。
 そんなギリギリの攻防をしていると不意にクリミナの口からため息が聞こえた。
「はぁ~~~~~。」
 ため息が聞こえた同時に俺の攻撃が受け止められ両者ともその場に止まる形になった。
 俺がクリミナを睨んでいると不意に声を上げた。
「体術は五分だな。これじゃあ勝負がつかない。」
 そしてクリミナは先ほどよりも大きなため息をついたあと言った。
「仕方ない。能力を使うか・・・。」
 その言葉に俺は即座に反応し能力を使われる前に叩こうと拳を振り上げたが遅かった。
「パチン・・・。」
 クリミナは俺の拳など受け止める素振りも見せず指パッチンをした。
 すると次の瞬間、俺の腹部あたりの空間が突如として爆ぜたのだ。
「は・・・・?」
 その言葉と同時に俺は吹き飛ばされた。
 爆発の威力は凄まじく俺は何回かバウンドした後に壁に激突しようやく止まった。
「ガハァ!ゲホ!?グゥ・・・!」
 爆発に巻き込まれた腹部を見ると服は燃え尽き肌も火傷を負っている。
 不意打ちとはいえ俺の皮膚に怪我を負わせるとはどんでもない能力だ。
 そこからは一方的に仕掛けられた。
 パチンと指が鳴ったと同時に爆発。
 それの繰り返しだった。
 負傷した俺は必死に爆発から逃げ別室に辿り着いた。
 そこは爆発のせいか天井が崩れ落ちておりそこから月が見える。
 満身創痍で苦しげな俺を見て追ってきたクリミナは悲しそうな表情を浮かべながら声を上げた。
「まさかもう終わりなのか?」
「オクタプル最弱の『No.8』でも最強の8人の1人なんだから期待してみたんだが正直、失望した。」
「体術面では互角でも能力を前にしてお前の体術など無いに等しい。」
「しかもお前。無能力者だろ?」
「まさかオクタプルの中に無能力者が混じっているとはな。驚いたぜ。」
「はぁ~。にしても弱すぎる。他のオクタプルの奴らもこんな感じなのか?」
「・・・まあいい。もう飽きた。」
「お前みたいな弱い奴は殺す価値もないが雑魚でもオクタプル。ここで殺しておいて損はない。」
 殺す事にしたのかクリミナは俺のそばまで近寄り指を鳴らそうとしていた。
「お前を殺した後は他の研究所も潰しに行こうかな。」
「じゃあな。オクタプル『No.8』。」
 そうしてクリミナは指を鳴らすのであった。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
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