私達、怪奇研究部!!

たけまる

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真野編

第16怪

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「はぁ、居なくなった子供を探すためにボクまで……」

 まさきは助っ人、フレアを呼んだ。部長は先程からスマホで真野と美玲にメッセージを送っているが、反応がない。

「電波の届かないところにいるのか……」

 するとフレアが言った。

「これから何を見ても、何があっても驚かないと約束出来ますか?」

「あぁ! 怪奇研究部の部長である俺が並大抵のことで驚くはずがない!」

「それは安心しました。では着いてきて下さい」

 と言うとフレアは空中にフワリと浮き始めた。絶句する部長。まさきは当たり前といわんばかりに「追っかけるぞ!」と言い、部長を掴み上げて空へ旅立つ。

「うわぁぁぁぁぁぁ!!」

「おっ! 街の明かりが綺麗だな!」

「今そんな余裕ない!」

 まるで鷹に捕まった獲物のような気分だ。フレアが何かを感じ取る。

「地上には居るはずのない天使族の気配……となるとあれは真野岬の……近くなってきました」

 しかし、付近に建物も人の姿もない。すると、何もなかったはずの空間から突如として人が現れた。

「なるほど……あそこに亜空間に繋がる入り口が。恐らくあの空間にお探しの人はいるでしょうね」

 その入り口まで降り立つ。しかし、目印も何も残っていない。

「よし、開けるぞ…………どうやって?」

 まさきは一人でぶつぶつと開ける方法を考えている。部長は呆れたようにボソッと言った。

「開けゴマとか……」

 すると黒い渦が徐々に現れ始めた。だんだん大きくなり、人が一人通れるほどになって止まった。

「まさか本当に開けゴマだとは」

「とにかく入ってミサキを探そうぜ!」

 二人が意気揚々と煙の中へ入っていく。フレアは一人外に残り、考えていた。

「今のは言霊ことだまか。言葉に霊力を込めたもの……その影響で扉が開いた」

 その後、フレアは二人の後に続き、煙の中に入る。煙は徐々に小さくなって消えていった。





 中は薄暗い地下の倉庫のようだった。コンクリートで出来た壁に囲まれ、閉塞感がある。

「おぉーい! ミサキー!」

 大声でまさきが呼ぶ。部長が後ろからまさきを蹴り上げた。

「バッカ野郎! 敵がいたらどうすんだ!」

「ハッ! すまんつい……」

 しかし、遅かった。奥から「誰だっ!」と人が走ってくる音が聞こえる。

「あぁ……もう知らねぇ」

「任せろ! 人間一人守るくらい簡単だ!」

 まさきは腰から剣を取り出し、構える。





 フレアが二人に追いついた頃には既に片が付いていた。

「一体何が……」

 辺りに倒れる人の姿に血のついた壁。部長はそっとまさきを指差した。

「フレア! 遅いじゃないか!」

「アンタねぇ、子供の前ですることじゃないでしょう」

「イイヨ、キニシナイデ。もう何見ても驚かないから。そう言ったのはそっちだろ」

 三人は建物の先へ進む。





 その頃、真野たちの閉じ込められた部屋は騒がしかった。

「侵入者です、剣を振りかざす変な男とガキです! 見張りはほとんどやられました!」

「何だとっ?!」

 ブローカーたちは部屋を後にし、騒がしく走り回る。

「ねぇ……侵入者だって。もしかしたら誰かが助けに来たのかも」

 美玲が真野に話しかけると、真野は希望が見え始めたようだった。

「この騒ぎに乗じて逃げ出せないでしょうか?」

「無理だよ、鍵がないと檻が開かない」

「僕に出来るかも知れない……美玲さん、危ないので僕の後ろにいて下さい」

 そう言うと真野は左手から出る黄金に光る煙を右手に集め出した。中心がだんだんと白く、輝き出したその時。真野は光の玉を檻の鍵穴にぶつけ、ガシャンと檻は壊れた。

「す、凄い……凄いよ真野くん!」

「天使の力を少しだけ使いました……使ってしまったのでもう何も出来ません! さぁ早く行きましょう!」





 廊下を移動する真野と私。どこに向かっているかは分からないが、敵に遭遇することはなかった。

「このまま逃げ切れれば……!」

 すると廊下の奥から足音が聞こえる。周りに隠れられそうな場所はない。真野が美玲をを後ろに隠す。

「真野、美玲!」

 出てきたのは部長だった。二人は安堵する。

「部長、どうやってここまで……!」

 感動の再会もここまでだった。

「動くなっ! この女がどうなっても良いのか?!」

 ブローカーだった。美玲を人質に刃物を向ける。空気が凍てついたが束の間。部長がブローカーの後ろを指差した。

「な、何だっ!」

「お前がミサキに手を出したんだな!」

 背後からまさきがブローカーに剣を向けた。フレアが叫んだ。

「お子様たち、目をつぶって!」

 ザシュっという音が……聞こえなかった。

「はぁ、子供の前では殺さない、だろ? 生け取りにした」

 目を開けるとブローカーは気絶して倒れていた。美玲は足の力が抜けてその場に座り込む。

「はぁぁぁ……怖かった……」

「まさきさん……何で……」

 真野が緊張しながら訴えた。声が震えている。今まで極限状態にいたので不安だったのだろう。

「俺はミサキの父親だ。息子を助けに行くのは当たり前だろ?」

「もしかしたらコイツ、そんなに悪いやつじゃないかも知れないぜ」

 部長がまさきを突っつく。真野は泣きそうになりながら笑った。





「このブローカーは連れ帰ります」

 フレアが掴んで引きずる。建物の玄関らしきものを見つけ、外に出ると普段の道路が目の前に広がり、帰ってきたのだと実感した。

「……じゃあ、またな。ミサキ」

 まさきが名残惜しそうに言う。それに部長が返答する。

「今から花火大会やるんだ。お前もこいよ」

 その言葉にまさきの顔がパァっと明るくなる。フレアはやれやれ、という顔をし「失礼のないようにして下さいね」と言い、空へ飛び立った。

「なっ……!?」

 真野と美玲は言葉を失う。豪快にブローカーを背負い、夜空へ旅立つフレアはまるで。

「あいつは死神なんだ。気にすんな!」

 さも当然とまさきが笑った。

「しかも一類死神だよな……」

「は、はは……混血ぼくの母が天使ですから……天使と再婚したまさきさんも、まさきさんの知り合いのフレアさんも、そりゃ普通の人じゃないですよね」

 「さぁ、花火しようぜ!」と我関せずまさきが催促する。美玲たち三人組みは呆然としながら歩き出した。
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