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3日目:しんどい
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3日目と題して話を始めたのだが、お気づきの通り、もう僕に時間間隔などない。
ただ、一時間目、二時間目というのも、なんだか学校を思い出すので、これは採用しない。
これを聞いている誰かがいたら、これだけは知っていて欲しい。世界には僕のような人間がいるということを。
どんな人間かって?
まあ聞いてくれ……。
「あかりをつけましょ、ぼんぼりに……」
いかんいかん、視界が漆黒すぎて気が触れてしまいそうだ。
漆黒というと、そういえば、おしっこに行きたくならないな。
それについて、たった今仮説を立ててみた、この空間は僕以外のモノは存在してはいけないというのを前提とすると、尿も体外に排出されれば、自分以外のモノに該当してしまう。
よって僕は尿意を感じない。
我ながら天晴れな考察だ。
さて、今日の本題は何だったかな。
僕は脳内に仮想的に設置した、お便り箱をあさる。
ラジオネーム、
「ジト目の妹属性付き魔性のおじさん(38歳)。ぷっ……、えーお便りありがとうっ!」
なになに……。
『最近道行く潜在的お兄ちゃん達に、内股で近寄って、上目遣いで、そうなるともちろん私は相手の下方から、顔を覗き込む形になるのですが、その際どうしても自身のすね毛が動作をワンテンポ阻害します。どうしたらいいですか?』
いきなり情報量過多のお便りをいただきましたありがとう。
「……」
え、答えなきゃいけないの。
だれか、一緒に考えてくれ。
どうでも良いことかも知れないが、このクソみたいな社会では、どうでも良いことを考える余裕も大切だ。
ではまず注意から。路上にいる男性を、潜在的お兄ちゃんなんて呼んでいる危険思想を、38歳のおじさんでありながら、妹属性を自称する哀れむべき思考回路を。
「焼き切って出直してください、以上!」
******
ここから先は、私、ジト目の妹属性付き魔性のおじさん(38歳)の独白になります。
私がジト目キャラに憧れを抱いたのは、小学4年生の頃でした。
私は教室でぞうきん掛けをしていたとき、あまりに集中しすぎて、視野が狭くなり、凄い勢いで同級生のお兄ちゃん達に、突っ込んでしまいました。
聡明な皆様ならお気づきと思いますが、当時から私は妹属性を所有しておりました。
それで、突っ込んだ後の話なのですが、何しろ私の体重は120kg越えでありましたので、被害もそれなりにありました。
ひしゃげた学習机が壁や窓に突き刺さり、割れた教卓が戦慄した教室の真ん中に横たわっていました。
私はチョークの粉で遮られた視界のなかでも、自分がぶっ飛ばしたお兄ちゃんたちの小さなうめき声だけは、明瞭に聞き取ることができました。
「お兄ちゃん! お兄ちゃんっ!!!」
私は叫びました。さながら本物の家族のように心配をして、か細い声でお兄ちゃんたちを呼びました。
私が名前を呼ぶ度に、室内の空気は重く振動し、チョークの粉はなおさら宙を舞いました。
しかしそんなとき、背後から冷淡な、鈴の音の声が響きました。
「落ち着きなさい。あなたが取り乱してどうするの」
私はその声の主を見つけたとき、目が覚めました。
語気は強くとも、決して表情は崩さない。無表情系のジト目少女。
そして目が醒めました。
やっぱり、妹たるもの、ジト目は必須だと。
「お兄ちゃん……。もうだいじょうぶよ」
私は伏し目がちに、冷静にそう口にすると、全お兄ちゃんを担架で運び出しました、独りで。
ただ、一時間目、二時間目というのも、なんだか学校を思い出すので、これは採用しない。
これを聞いている誰かがいたら、これだけは知っていて欲しい。世界には僕のような人間がいるということを。
どんな人間かって?
まあ聞いてくれ……。
「あかりをつけましょ、ぼんぼりに……」
いかんいかん、視界が漆黒すぎて気が触れてしまいそうだ。
漆黒というと、そういえば、おしっこに行きたくならないな。
それについて、たった今仮説を立ててみた、この空間は僕以外のモノは存在してはいけないというのを前提とすると、尿も体外に排出されれば、自分以外のモノに該当してしまう。
よって僕は尿意を感じない。
我ながら天晴れな考察だ。
さて、今日の本題は何だったかな。
僕は脳内に仮想的に設置した、お便り箱をあさる。
ラジオネーム、
「ジト目の妹属性付き魔性のおじさん(38歳)。ぷっ……、えーお便りありがとうっ!」
なになに……。
『最近道行く潜在的お兄ちゃん達に、内股で近寄って、上目遣いで、そうなるともちろん私は相手の下方から、顔を覗き込む形になるのですが、その際どうしても自身のすね毛が動作をワンテンポ阻害します。どうしたらいいですか?』
いきなり情報量過多のお便りをいただきましたありがとう。
「……」
え、答えなきゃいけないの。
だれか、一緒に考えてくれ。
どうでも良いことかも知れないが、このクソみたいな社会では、どうでも良いことを考える余裕も大切だ。
ではまず注意から。路上にいる男性を、潜在的お兄ちゃんなんて呼んでいる危険思想を、38歳のおじさんでありながら、妹属性を自称する哀れむべき思考回路を。
「焼き切って出直してください、以上!」
******
ここから先は、私、ジト目の妹属性付き魔性のおじさん(38歳)の独白になります。
私がジト目キャラに憧れを抱いたのは、小学4年生の頃でした。
私は教室でぞうきん掛けをしていたとき、あまりに集中しすぎて、視野が狭くなり、凄い勢いで同級生のお兄ちゃん達に、突っ込んでしまいました。
聡明な皆様ならお気づきと思いますが、当時から私は妹属性を所有しておりました。
それで、突っ込んだ後の話なのですが、何しろ私の体重は120kg越えでありましたので、被害もそれなりにありました。
ひしゃげた学習机が壁や窓に突き刺さり、割れた教卓が戦慄した教室の真ん中に横たわっていました。
私はチョークの粉で遮られた視界のなかでも、自分がぶっ飛ばしたお兄ちゃんたちの小さなうめき声だけは、明瞭に聞き取ることができました。
「お兄ちゃん! お兄ちゃんっ!!!」
私は叫びました。さながら本物の家族のように心配をして、か細い声でお兄ちゃんたちを呼びました。
私が名前を呼ぶ度に、室内の空気は重く振動し、チョークの粉はなおさら宙を舞いました。
しかしそんなとき、背後から冷淡な、鈴の音の声が響きました。
「落ち着きなさい。あなたが取り乱してどうするの」
私はその声の主を見つけたとき、目が覚めました。
語気は強くとも、決して表情は崩さない。無表情系のジト目少女。
そして目が醒めました。
やっぱり、妹たるもの、ジト目は必須だと。
「お兄ちゃん……。もうだいじょうぶよ」
私は伏し目がちに、冷静にそう口にすると、全お兄ちゃんを担架で運び出しました、独りで。
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