上 下
2 / 79

2

しおりを挟む
マイヤーズ男爵家のタウンハウスは、王立学園の直ぐ近くにある。


というのも、長兄たちが通学の為に馬車や従者、侍女を伴うのは不経済であると父に訴えたからである。


その為、学園の表門から見える場所にあるのだ。


ちなみに、マイヤーズ商会の王都店舗もタウンハウスから徒歩圏内にある。


マイヤーズ家では、時間はお金である!も家訓に入っているのだ。


移動する時間でひと仕事出来るじゃないか?


それなら、住居と職場は近い方が良いに決まっているという考えなのだ。


ちなみに、マイヤーズ商会に勤める者達が住む寮は商会の裏にある。


家族用と単身用の部屋に分かれていて、家賃は商会持ちでお昼1食は商会内の食堂で食べる事が出来るので寮は常に空き待ちになっている。


商会内の食堂では、長兄が異国から仕入れてきた香料や食材を使った料理を従業員に試食してもらっているのだ。


従業員たちは、これから王国で流行するモノを先に知れる事をとても楽しみにしている。


マイヤーズ商会は人気の商会という事もあり、時にはライバル商会のスパイが従業員として紛れ込む事もあるのだが…


従業員を家族のように扱うマイヤーズ商会のやり方に感動して、マイヤーズ商会に骨を埋める事にしたという話をよく聞くのだ。


マイヤーズ商会は、お客様が楽しんでお買い物をしてくれる事を1番に考えているので、お客様に寄り添える接客が出来る事が従業員になる第1条件である。


末娘であるアイラは、幼少期から領地にあるマイヤーズ商会の本店で乳母に抱っこされながら商品を眺めたり、お客様を接客している従業員の様子を見て育ってきた事もあり、接客が大好きで天職だと思っているのだ。


アイラは、王都で店長としての新しい生活が始まる事への期待で胸がいっぱいで王立学園に通うのはオマケとしか考えていないようだ。


最初、アイラは王立学園には通わずに領地にある学園に通いながら本店で働きたいと父に言ったのだが、父から王都店舗を全国1位にするのがお前の初仕事だと言われて王都に来る事になったのだ。


アイラは、自然に恵まれ牧歌的な領地を愛していたので最初は王都に来るのが不満だったのだが…


父から学園に通う3年間は王都店舗の経営には口出しはしないから好きにしていいと言われ嬉々として王都にやってきたのだ。


現在の王都の店長代理は、アイラが小さい頃から憧れている従兄弟のザイラスである事もあり、アイラは早く王都店に行きたいのだが…


侍女のエリや執事のベンから学園生活の準備が先です!と言われ、仕方なく制服の試着や学園生活に必要だと揃えてもらった物を確認しているのだ。


「よいですか!

アイラお嬢様が身に付けている物全てが王都の流行になるのですからね?

しっかり吟味してうちの商会で揃えておりますが、今1度足りない物がないか確認して下さいよ?

商会には、明日行くと伝えてありますからね?

今日は、マナーチェックに来てもらいますから学園での貴族令嬢としてのマナーも再確認お願いしますよ?

お嬢様が学園で人気にならなければうちの商品も売れませんからね!

お嬢様が広告塔だと言う事をくれぐれも忘れないで行動して下さいね?」


タウンハウスに着いて着替えた後に、こっそりマイヤーズ商会に行こうとしたアイラは、執事のベンに捕まってしまったようだ。


アイラが苦手としているマナー講師も後から来るようだし…


最悪だぁ…


アイラはため息をつきながら、ベンから渡された学園でのマナーのテキストをチェックするのだった。





しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

どう頑張っても死亡ルートしかない悪役令嬢に転生したので、一切頑張らないことにしました

小倉みち
恋愛
 7歳の誕生日、突然雷に打たれ、そのショックで前世を思い出した公爵令嬢のレティシア。  前世では夥しいほどの仕事に追われる社畜だった彼女。  唯一の楽しみだった乙女ゲームの新作を発売日当日に買いに行こうとしたその日、交通事故で命を落としたこと。  そして――。  この世界が、その乙女ゲームの設定とそっくりそのままであり、自分自身が悪役令嬢であるレティシアに転生してしまったことを。  この悪役令嬢、自分に関心のない家族を振り向かせるために、死に物狂いで努力し、第一王子の婚約者という地位を勝ち取った。  しかしその第一王子の心がぽっと出の主人公に奪われ、嫉妬に狂い主人公に毒を盛る。  それがバレてしまい、最終的に死刑に処される役となっている。  しかも、第一王子ではなくどの攻略対象ルートでも、必ず主人公を虐め、処刑されてしまう噛ませ犬的キャラクター。  レティシアは考えた。  どれだけ努力をしても、どれだけ頑張っても、最終的に自分は死んでしまう。  ――ということは。  これから先どんな努力もせず、ただの馬鹿な一般令嬢として生きれば、一切攻略対象と関わらなければ、そもそもその土俵に乗ることさえしなければ。  私はこの恐ろしい世界で、生き残ることが出来るのではないだろうか。

【完結】くま好き令嬢は理想のくま騎士を見つけたので食べられたい

楠結衣
恋愛
お転婆だけど超絶美少女の伯爵令嬢アリーシアは、ある日宝物のくまのぬいぐるみにそっくりなガイフレートに出逢い、恋に落ちる。 けれど、年下のアリーシアを妹のように扱うガイフレートとの恋は、一筋縄ではいかないようで。 さらに、アリーシアを溺愛する兄の妨害や、真実の愛をぐいぐいアピールする王太子も現れて、アリーシアの恋はますます前途多難! 「アリー、大人を揶揄うのは良くないな」 歳の差を理由に距離を置く侯爵令息のガイフレートと、一途なアリーシアの恋の結末は?! ちょっぴり天然な美少女伯爵令嬢と、伯爵令嬢を大切に守ってきた大柄騎士の溺愛あまあまハッピーエンドストーリーです。 ◇期間限定でR18を公開しています(♡の話) ◇表紙と作中イラスト/貴様二太郎さま ◇題名に※表記があるものは挿し絵があります *本編、番外編完結(番外編を気まぐれに投稿しています) *アルファポリス第14回恋愛小説大賞「奨励賞」 *第9回ネット小説大賞一次選考通過作品

処刑直前ですが得意の転移魔法で離脱します~私に罪を被せた公爵令嬢は絶対許しませんので~

インバーターエアコン
恋愛
 王宮で働く少女ナナ。王様の誕生日パーティーに普段通りに給仕をしていた彼女だったが、突然第一王子の暗殺未遂事件が起きる。   ナナは最初、それを他人事のように見ていたが……。 「この女よ! 王子を殺そうと毒を盛ったのは!」 「はい?」  叫んだのは第二王子の婚約者であるビリアだった。  王位を巡る争いに巻き込まれ、王子暗殺未遂の罪を着せられるナナだったが、相手が貴族でも、彼女はやられたままで終わる女ではなかった。  (私をドロドロした内争に巻き込んだ罪は贖ってもらいますので……)  得意の転移魔法でその場を離脱し反撃を始める。  相手が悪かったことに、ビリアは間もなく気付くこととなる。

こんな出来の悪い乙女ゲーなんてお断り!~婚約破棄された悪役令嬢に全てを奪われ不幸な少女になってしまったアラサー女子の大逆転幸福論~

釈 余白(しやく)
恋愛
 貴族の長女として生を受けたルルリラ・シル・アーマドリウスは、七歳の頃ブレパラディア王国第七皇子ハマルカイト・クルシュ・マカドレ・プレパラディアと婚姻の約束を交わした。やがて十二歳になり、二人は王国国立校であるフィナルスティア学園へと入学した。    学園では高度な学問や紳士淑女になるために必要なマナーはもちろん、過剰な階級意識や差別感情を持たぬよう厳しく教育される。そのため王族や貴族と同人数の平民を受け入れ、同等の教育を施すことで将来の従者候補者の養成を同時に行っていた。  学園入学後は様々な苦難が待ち受けている。決して一筋縄ではいかない日々を通じて立派な皇太子妃を目指そう。  こんなあらすじから始まる乙女ゲームでモブキャラのキャラクターボイスを担当した矢田恋(やた れん)は、主人公ルルリラとなってゲームを開始した。しかし進めて行くうちにトンデモないことに巻き込まれてしまう。  この物語は、悲運に見舞われた矢田恋が数々の苦難、試練を乗り越え、ハッピーエンドを迎えるために奔走する物語である。

女官になるはずだった妃

夜空 筒
恋愛
女官になる。 そう聞いていたはずなのに。 あれよあれよという間に、着飾られた私は自国の皇帝の妃の一人になっていた。 しかし、皇帝のお迎えもなく 「忙しいから、もう後宮に入っていいよ」 そんなノリの言葉を彼の側近から賜って後宮入りした私。 秘書省監のならびに本の虫である父を持つ、そんな私も無類の読書好き。 朝議が始まる早朝に、私は父が働く文徳楼に通っている。 そこで好きな著者の本を借りては、殿舎に籠る毎日。 皇帝のお渡りもないし、既に皇后に一番近い妃もいる。 縁付くには程遠い私が、ある日を境に平穏だった日常を壊される羽目になる。 誰とも褥を共にしない皇帝と、女官になるつもりで入ってきた本の虫妃の話。 更新はまばらですが、完結させたいとは思っています。 多分…

婚約「解消」ではなく「破棄」ですか? いいでしょう、お受けしますよ?

ピコっぴ
恋愛
7歳の時から婚姻契約にある我が婚約者は、どんな努力をしても私に全く関心を見せなかった。 13歳の時、寄り添った夫婦になる事を諦めた。夜会のエスコートすらしてくれなくなったから。 16歳の現在、シャンパンゴールドの人形のような可愛らしい令嬢を伴って夜会に現れ、婚約破棄すると宣う婚約者。 そちらが歩み寄ろうともせず、無視を決め込んだ挙句に、王命での婚姻契約を一方的に「破棄」ですか? ただ素直に「解消」すればいいものを⋯⋯ 婚約者との関係を諦めていた私はともかく、まわりが怒り心頭、許してはくれないようです。 恋愛らしい恋愛小説が上手く書けず、試行錯誤中なのですが、一話あたり短めにしてあるので、サクッと読めるはず? デス🙇

悪役王女に転生しました。でも、パパは何故か私を溺愛してきます。

下菊みこと
恋愛
父親からの激しい虐待の末死に至った少女、空道伶奈は大好きだった乙女ゲームの世界に異世界転生!しかし転生したのは悪役王女で!?あれ、なんで私を毛嫌いするはずのパパが私を溺愛してるの? これは愛されなかった少女が愛されまくるよくある?異世界転生の話。 小説家になろう様でも掲載しています。

我慢してきた令嬢は、はっちゃける事にしたようです。

和威
恋愛
侯爵令嬢ミリア(15)はギルベルト伯爵(24)と結婚しました。ただ、この伯爵……別館に愛人囲ってて私に構ってる暇は無いそうです。本館で好きに過ごして良いらしいので、はっちゃけようかな?って感じの話です。1話1500~2000字程です。お気に入り登録5000人突破です!有り難うございまーす!2度見しました(笑)

処理中です...