雪別れ道のモフモフ王〜妖鬼冥婚編〜

儚い夢とガラスの塔

逃げ出した鼠。
からくり箱に閉じ込められていた鼠が、逃げ出し。
塔は、侵入者を許している。
終わりのない階段。
壁画。
リファルは、最後に現れた桂華に言った。
「君は、彼女を覚えているの？」
敵意むき出しの陽蒼を指す。
「全く、覚えていないわ」
「それは、そうね」
桂華の答えに応じる。
「覚えている訳がない。全く記憶を失くしているんだから」
陸羽が答える。
「余計な事に巻き込むな。兎っこ。俺達に、関わるな」
「俺達？」
陸羽は、桂華の肩に手を掛ける。
「このままだった、お前の思う通りになるよ」
桂華は、思わず、陸羽の手を払う。
「どうして、私に敵意をむき出しにするの」
「桂華。それは、深い因縁があるんだよ」
リファルは、答えた。
「僕らが、ここに集まっているのも、そのせいだし・・・」
「関係のある人達？」
リファルは、そっと並べられた壁絵を刺した。
「意味なく、集められた訳ではないんだ」
リファルが、さす壁絵び何の意味があるのか、わからなかった。
「ただ・・・からくり箱の鼠を探し出すだけではないんだ。鼠は、僕らだったんだ」
「箱に閉じ込められていたのは、鼠の獣神と聞いているわ。という事は、私達が、このまま、閉じ込められてしまうって事？」
「だから、簡単に入れたのか？」
陸羽は、ぐるっと階段の上を見上げた。
「ここは、本当に古城の中心なのか？」
「中心だよ。僕は、わかる」
「何だよ。わざわざ、遠くまで来た上に、謎解きに参加か」
「これは、よくある術だから・・・陽葵。君が現れたのが、決定的だったな」
「私？」
「君が、狂わして行ったからだ」
リファルの目が少し、光っていた。
エルタカーゼが天を見上げると、一瞬で、ガラスのカーテンが降ってくるのが、見えた。
「ほら・・始まったか・・」
陸羽は、身構える。
一瞬のうちに、古城ではない所に、飛ばされた。