上 下
54 / 83

山神の許嫁

しおりを挟む
リファルとエルタカーゼは、恐る恐る古城の階段を降りていった。長く古い回廊は、朽ち果て、いつ、下に落ちるかわからない。所々、土肌が見え、間には、積み上げられた石壁に、謎の絵が描かれていた。
「一体、なんの絵を現しているんでしょうか」
エルタカーゼは、蝋燭の灯りを充ててみた。
長い年月が、その絵を一層、謎の絵に変えていた。
「ずっと、見てきたが・・」
リファルは、考え込む。
「一つの物語になっている気がする」
「物語ですか?誰の?」
「それは、この城の本当の主だろう」
「途中から、空気が変わりましたね」
「城の上に、城を重ねているからな」
地底から、噴き上がる風は、湿気を帯び、カビ臭い。
「この下に、いるのでしょうか?」
「さぁな。ただ、手がかりだけは、見つけたい」
同じ鼠が鍵の謎解き。巻き込まれてしまった異国の謎解きに、リファルは、興味が湧いていた。
「リファル様・・・」
突然、エルタカーゼが、顔を上げた。
何か、遠くから灯りが、チラホラ見える。
階下から、巻き上がる風が、また、変わった。
「誰か、来ます」
「う・・・ん」
リファルは、持っていた蝋燭の炎を吹き消した。


それより、少し前、陸羽に助け出された桂華は、焦っていた。
希望を助け出さなければならない。
なのに、自分だけ、陸羽に、連れ去られてしまったのだ。
「早く、元に戻して」
「今、戻っても、危険だ」
陸羽は、山神の許嫁と言われる桂華の相手は、自分だと思い込んでいた。
陸鳳は、事件の後、姿をくらませていた。
だから、山神は、自分なのである。
古き神々の住む、神室山は、自分の守る山なのだ。
陸鳳のものではない。
「六芒星の争いに巻き揉まれるのは、ごめんだ。山に帰ろう」
兄の消息を探して、杜の都まで、来ていたが、桂華まで、争いに巻き込まれたのでは、意味もない。
「ここにいては、危険だ」
「希望を助け出して。そうしたら、考える」
「考える?」
「えぇ。あなたの言う通りにする」
「本当に?」
陸羽の顔が明るくなった。兄の陸鳳と違い、陸羽は、山神と人間の子だ。兄とは、違い、親しみやすく、単純な所が、玉に傷だ。しかも、兄に対して、コンプレックスが強い。山神の許嫁として、口伝えされている桂華を、兄ではなく、自分のものにしたかった。
「希望は、あいつらが、連れて行ったのか?」
「えぇ・・・海外から、付いてきたあの二人だわ」
あの2人には、使い魔達も手を焼いていた。ただの者ではない。
「任せろ。すぐ、連れてくる」
駆け出そうとする陸羽の、片腕を桂華は、掴んだ。
「待って、私もいくわ」
「どこに行くか、わかるのか?」
「わかるわ。あの2人の行く所・・・」
桂華は、陸羽に付いていく事にした。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

隠された第四皇女

山田ランチ
ファンタジー
 ギルベアト帝国。  帝国では忌み嫌われる魔女達が集う娼館で働くウィノラは、魔女の中でも稀有な癒やしの力を持っていた。ある時、皇宮から内密に呼び出しがかかり、赴いた先に居たのは三度目の出産で今にも命尽きそうな第二側妃のリナだった。しかし癒やしの力を使って助けたリナからは何故か拒絶されてしまう。逃げるように皇宮を出る途中、ライナーという貴族男性に助けてもらう。それから3年後、とある命令を受けてウィノラは再び皇宮に赴く事になる。  皇帝の命令で魔女を捕らえる動きが活発になっていく中、エミル王国との戦争が勃発。そしてウィノラが娼館に隠された秘密が明らかとなっていく。 ヒュー娼館の人々 ウィノラ(娼館で育った第四皇女) アデリータ(女将、ウィノラの育ての親) マイノ(アデリータの弟で護衛長) ディアンヌ、ロラ(娼婦) デルマ、イリーゼ(高級娼婦) 皇宮の人々 ライナー・フックス(公爵家嫡男) バラード・クラウゼ(伯爵、ライナーの友人、デルマの恋人) ルシャード・ツーファール(ギルベアト皇帝) ガリオン・ツーファール(第一皇子、アイテル軍団の第一師団団長) リーヴィス・ツーファール(第三皇子、騎士団所属) オーティス・ツーファール(第四皇子、幻の皇女の弟) エデル・ツーファール(第五皇子、幻の皇女の弟) セリア・エミル(第二皇女、現エミル王国王妃) ローデリカ・ツーファール(第三皇女、ガリオンの妹、死亡) 幻の皇女(第四皇女、死産?) アナイス・ツーファール(第五皇女、ライナーの婚約者候補) ロタリオ(ライナーの従者) ウィリアム(伯爵家三男、アイテル軍団の第一師団副団長) レナード・ハーン(子爵令息) リナ(第二側妃、幻の皇女の母。魔女) ローザ(リナの侍女、魔女) ※フェッチ   力ある魔女の力が具現化したもの。その形は様々で魔女の性格や能力によって変化する。生き物のように視えていても力が形を成したもの。魔女が死亡、もしくは能力を失った時点で消滅する。  ある程度の力がある者達にしかフェッチは視えず、それ以外では気配や感覚でのみ感じる者もいる。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

悪役令嬢の騎士

コムラサキ
ファンタジー
帝都の貧しい家庭に育った少年は、ある日を境に前世の記憶を取り戻す。 異世界に転生したが、戦争に巻き込まれて悲惨な最期を迎えてしまうようだ。 少年は前世の知識と、あたえられた特殊能力を使って生き延びようとする。 そのためには、まず〈悪役令嬢〉を救う必要がある。 少年は彼女の騎士になるため、この世界で生きていくことを決意する。

幼い公女様は愛されたいと願うのやめました。~態度を変えた途端、家族が溺愛してくるのはなぜですか?~

朱色の谷
ファンタジー
公爵家の末娘として生まれた6歳のティアナ お屋敷で働いている使用人に虐げられ『公爵家の汚点』と呼ばれる始末。 お父様やお兄様は私に関心がないみたい。愛されたいと願い、愛想よく振る舞っていたが一向に興味を示してくれない… そんな中、夢の中の本を読むと、、、

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

髪の色は愛の証 〜白髪少年愛される〜

あめ
ファンタジー
髪の色がとてもカラフルな世界。 そんな世界に唯一現れた白髪の少年。 その少年とは神様に転生させられた日本人だった。 その少年が“髪の色=愛の証”とされる世界で愛を知らぬ者として、可愛がられ愛される話。 ⚠第1章の主人公は、2歳なのでめっちゃ拙い発音です。滑舌死んでます。 ⚠愛されるだけではなく、ちょっと可哀想なお話もあります。

処理中です...