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陣の中の山神
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何度も痛みの波が襲ってきている。陸鳳は、鏡に自分の傷跡を映してみた。左首筋から、胸。胸から背中にかけて、赤い傷跡が続いている。赤い傷の上は、黒く瘡蓋になっては、いるが、所々、膿んでいて緑色になっている。
「王・・」
先程の甲高い声の看護師が、後ろから覗き込んでいた。陸羽と会っていた時とは、様子が違っていた。派手なメイクで、髪を一つに纏めていた姿が、裏のスタッフルームでは、別の顔をしていた。短い髪に、華奢なピアスを付けた静かな女性だった。
「私のせいで、呪いを受けてしまった」
陽葵という看護師は、そっと、陸鳳の背中に手を寄せたが、それを払う陸鳳。
「気にしなくて良い」
「でも・・・こんなに弱ってしまって。陸羽に本当の事を言った方が」
「いや・・・あいつを巻き込む事はない」
陸鳳は、シャツのボタンを閉めていた。
「陸羽は、一人でも大丈夫だ。代わりに」
「あの娘達を警護しろ!でしょ?」
少し、不満げだった。
「まさか、T国の帰りに飛行機の中で、会うとはね。最低限の敬語しかしないわよ。私は」
「いいよ。それで、陸羽もいるし」
陸鳳は、白衣を掴むと、診察室裏のゲージに、入れられた動物達の様子を見に戻って行った。
「陸鳳!私も、手伝う」
陽葵が走ると、今までの姿とは、変わり、陸羽が、診察室で会った姿に変わる。
「気をつけろよ。誰かに見られるとまた、引っ越しする様になる」
「ううう」
陽葵は、鼻を擦る。気を抜くと長い耳が飛び出しそうになる。
「丸裸の兎め!」
「ううう」
陽葵は、兎の妖らしく、話の内容からすると、陸鳳に助けられ恩を感じて、医院を手伝っている様だった。陸鳳の首の傷跡も、強力な呪術らしく、その時にできた様だった。
「皆・・・傷が深いな」
ゲージの中には、犬や猫にも見える四つ足の生き物達が、管に繋がれていた。
「なかなか、治る様子が見えませんね」
ゲージの中の生き物達は、ようやく、息をしている状態で、美しい被毛の下は、赤く爛れた陸鳳と同じ、傷跡が、赤黒い膿を排出していた。
「この陣の中でも、なかなか治らないか」
「陣が、揺れているって、陸鳳が言っていたけど、何かあったんじゃ・・・」
「あいつが、ここに現れたしな」
陸羽と入れ違いに現れた男。片腕に抱いたキャリーバックには、何か違和感を感じていた。
「陽葵。陣が壊れ始まっている・・・」
振り向く陽葵の双眸が、大きく見開かれていた。
「王・・」
先程の甲高い声の看護師が、後ろから覗き込んでいた。陸羽と会っていた時とは、様子が違っていた。派手なメイクで、髪を一つに纏めていた姿が、裏のスタッフルームでは、別の顔をしていた。短い髪に、華奢なピアスを付けた静かな女性だった。
「私のせいで、呪いを受けてしまった」
陽葵という看護師は、そっと、陸鳳の背中に手を寄せたが、それを払う陸鳳。
「気にしなくて良い」
「でも・・・こんなに弱ってしまって。陸羽に本当の事を言った方が」
「いや・・・あいつを巻き込む事はない」
陸鳳は、シャツのボタンを閉めていた。
「陸羽は、一人でも大丈夫だ。代わりに」
「あの娘達を警護しろ!でしょ?」
少し、不満げだった。
「まさか、T国の帰りに飛行機の中で、会うとはね。最低限の敬語しかしないわよ。私は」
「いいよ。それで、陸羽もいるし」
陸鳳は、白衣を掴むと、診察室裏のゲージに、入れられた動物達の様子を見に戻って行った。
「陸鳳!私も、手伝う」
陽葵が走ると、今までの姿とは、変わり、陸羽が、診察室で会った姿に変わる。
「気をつけろよ。誰かに見られるとまた、引っ越しする様になる」
「ううう」
陽葵は、鼻を擦る。気を抜くと長い耳が飛び出しそうになる。
「丸裸の兎め!」
「ううう」
陽葵は、兎の妖らしく、話の内容からすると、陸鳳に助けられ恩を感じて、医院を手伝っている様だった。陸鳳の首の傷跡も、強力な呪術らしく、その時にできた様だった。
「皆・・・傷が深いな」
ゲージの中には、犬や猫にも見える四つ足の生き物達が、管に繋がれていた。
「なかなか、治る様子が見えませんね」
ゲージの中の生き物達は、ようやく、息をしている状態で、美しい被毛の下は、赤く爛れた陸鳳と同じ、傷跡が、赤黒い膿を排出していた。
「この陣の中でも、なかなか治らないか」
「陣が、揺れているって、陸鳳が言っていたけど、何かあったんじゃ・・・」
「あいつが、ここに現れたしな」
陸羽と入れ違いに現れた男。片腕に抱いたキャリーバックには、何か違和感を感じていた。
「陽葵。陣が壊れ始まっている・・・」
振り向く陽葵の双眸が、大きく見開かれていた。
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