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歪んだ六芒星

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陸羽が、兄である陸鳳を訪ねる少し前、妖達を倒し、図書館と大蔵の裏山に駆け上がって行った。走り出すと陸羽の姿は、次第に、人とはかけ離れた四つ足の妖へと変わっていく。鬱蒼とした裏山は、その先が、大社となっている。さらにその延長上には、海岸があり、戦国の時代には、大砲が並び、海からの侵入者を撃っていたという。大社には、海の航路の無事を祈願した札や侵入者を塞ぐ呪物が、多く納められていると聞く。そもそも、六芒星の中心には、戦国の大城があり、各拠点には、神社や寺が並び、城下への侵入を阻止していた。大城には、未だに発見されていない六芒星の陣を敷いた戦国武将が眠っているとの伝説があり、場内の井戸の中に遺体があるのではないかと、一時は、テレビ局が入って、捜索隊が、構成されtが、事故が相次ぎ、中止となった事がある。なんとも、希空の言う通りに、史学というより都市伝説に近い話である。ただ、陸羽は、自分の存在が、そうであるように、六芒星の陣が敷かれている話を信じてもいたし、兄がその中で、生活している事も、何か、理由があると思っていた。
「理由があるなら、それは、教えてくれてもいいじゃないか?」
雪山に消えた陸鳳は、忽然と消え、風の便りに、この街に来ていると聞いた。深手を負い、人間の中で、生活していると。なら、どうして、六芒星の中なのか?侵入者を嫌う六芒星がどうして、兄を受け入れたのか?手負の為か。兄に逢って、確かめたい気がする。
「うわっ!」
突然、耳元を一羽の鳥が横切ったので、慌てて、陸羽は、スピードを落とした。いつもなら、何か、小動物と衝突しそうになるなんて事はない。耳障りな波長が続き頭が割れそうだった。
「空間が歪んでいるでしょ?」
ぶつかりそうに、飛んで来たのは、あのシマエナガ。陸鳳の執事の同族だった。
「埃玉の一族か?」
「僕らはね・・・まあ、いい」
何か、言いたそうだったが、言葉を飲み込んだ。
「変な音がしないか?」
陸羽は、聞いた。
「鳥なら、わかるだろう?」
裏山から、たくさんの鳥達が逃げ惑うように、飛び立っていく。
「狂って、いるんだよ」
「狂って?陣が?」
埃玉の一族が言う
「狂い出した陣が歪んで、落ちた者がいたって」
「まさか・・・桂華では?」
「違うみたいだよ。だけど、陣が壊れてしまう・・・そうなると」
「抑えていた者が一度に目覚める」
「千年近く、押さえてきた陣だ。街がなくなるぞ」
埃玉は、止まっていた陸羽の肩から、飛び立つ。
「陸鳳が、協力してくれるといいが、もう、すっかり、別人だ。どうする?陸羽」
陸羽は、少し、考える。
「その時は、俺がやるまで・・・あいつがいなくても、大丈夫」
陣を元に、戻すには、最初に陣を作り上げたあの戦国武将を探し出す他はない。陸羽は、兄を探して、裏山を抜けていった。
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