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生まれながらの姫と作り上げられた皇帝
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「しばらく様子を見ようだって?」
紗々姫は、声を荒げた。
「そうそう、ヤキモチやくなって」
事の次第を、見守っていた阿と吽も、紗々姫の苛立ちがわかって、困惑していた。紫鳳の腕に抱かれて、頭を撫でられていたが、窮屈な思いだ。紗々姫は、何か、不吉な感じがして止まらない。瑠璃光は、解毒出来たはず、が、一向に目を覚ます気配がない。陽の元の国とは、違うのか。紗々姫は、眠りに落ちた瑠璃光の顔を見下ろす。
「瑠璃光。いい加減、目覚めていい筈」
人差し指を、瑠璃光の両瞼の上にかざす。左右に、動かし額に指を立てる。紗々姫には、元々、妖の気があった。幼い頃から、人質として、城郭の奥に囚われ、三華の塔の中だけが、彼女の世界だった。長く妖の中で、育った為、妖を見る目は、瑠璃光よりあったのかもしれない。
「紫鳳。瑠璃光の中に入って」
紫鳳は、首を振った。
「できるなら、行っている。瑠璃光の意思がなければ変わらない」
「役に、たたない。式神ね」
紗々姫の苛立ちは、最高潮だった。
「瑠璃光が目覚めないと、動けないなんて」
紫鳳は、申し訳なさそうに、眉を顰めた。
「今度は、そうしておく・・・」
紫鳳が言いかけた時だった。瑠璃光の隣に横たわっていた風蘭が、目を開けた。
「風蘭!」
青嵐が、飛びつきそうになったのを紗々姫が止めた。
「危ない」
止める紗々姫の腕を、しっかりと握る風蘭の目は、虚だった。
「離しなさい!早く」
紗々姫は、きつく握る風蘭の手を、剥がそうとするが、力が強く、叶わない。骨が、ミシミシと言っている。
「紗々姫!」
紫鳳が、紗々姫を救い出そうとし、変化する。勢いよく両翼が、背中から飛び出すが、紗々姫は、捕まった腕とは、逆の腕で瑠璃光の体を押し出した。
「瑠璃光を守って!」
力無く瑠璃光の体は、寝台から崩れ落ち、青嵐が駆け寄り抱え上げる。紫鳳の楊翼は、風蘭を仕留めようと、体の両側から狙うが、躊躇してしまう。
「どうすればいい」
「迷わないで!裂いておしまい!」
紗々姫は、怒りのあまり変化寸前だった。
「無理言うなよ。」
ゆっくりと起きあげる風蘭を前に、紫鳳は、何も出来ずにいる。
「何も出来るわけないな」
風蘭の開いた口から聞こえてきたのは、聚周の声だった。
「その声は・・」
紫鳳と青嵐は、顔を見合わせた。
「成徳の呪術だと思っていたが・・・まさか、お前までもが、絡んでいたなんて」
「いつの間に、風蘭を・・・」
瑠璃光の潜在意識を知っている紫鳳の声は、震えていた。
「目的が一致しただけだよ。この体を、目的の為に使うだけ。みんな、うまく、目的を果たせるではないか」
風蘭は、紗々姫の腕を押さえ込み、ゆっくりと紗々姫の顔を覗き込んだ。
「私に、瑠璃光を渡しなさい。もっと、早くそうすればよかった」
紗々姫の体を、押さえ込み、人質にすべく、寝台の上に引き摺り込む。目は、赤く輝き、体の背後からは、いく筋もの、蛟の精が湧き上がっていた。
「早く渡さねば、この女の」
風蘭が、紗々姫の腕から、手を滑らせ、首を絞めようとした時に、紗々姫は、笑った。
「愚かな」
紗々姫の髪は伸び、風蘭の首に絡みつく。紗々姫の容貌は、もはや、人間ではなく、恐ろしく長い、白い蛇と化していた。
紗々姫は、声を荒げた。
「そうそう、ヤキモチやくなって」
事の次第を、見守っていた阿と吽も、紗々姫の苛立ちがわかって、困惑していた。紫鳳の腕に抱かれて、頭を撫でられていたが、窮屈な思いだ。紗々姫は、何か、不吉な感じがして止まらない。瑠璃光は、解毒出来たはず、が、一向に目を覚ます気配がない。陽の元の国とは、違うのか。紗々姫は、眠りに落ちた瑠璃光の顔を見下ろす。
「瑠璃光。いい加減、目覚めていい筈」
人差し指を、瑠璃光の両瞼の上にかざす。左右に、動かし額に指を立てる。紗々姫には、元々、妖の気があった。幼い頃から、人質として、城郭の奥に囚われ、三華の塔の中だけが、彼女の世界だった。長く妖の中で、育った為、妖を見る目は、瑠璃光よりあったのかもしれない。
「紫鳳。瑠璃光の中に入って」
紫鳳は、首を振った。
「できるなら、行っている。瑠璃光の意思がなければ変わらない」
「役に、たたない。式神ね」
紗々姫の苛立ちは、最高潮だった。
「瑠璃光が目覚めないと、動けないなんて」
紫鳳は、申し訳なさそうに、眉を顰めた。
「今度は、そうしておく・・・」
紫鳳が言いかけた時だった。瑠璃光の隣に横たわっていた風蘭が、目を開けた。
「風蘭!」
青嵐が、飛びつきそうになったのを紗々姫が止めた。
「危ない」
止める紗々姫の腕を、しっかりと握る風蘭の目は、虚だった。
「離しなさい!早く」
紗々姫は、きつく握る風蘭の手を、剥がそうとするが、力が強く、叶わない。骨が、ミシミシと言っている。
「紗々姫!」
紫鳳が、紗々姫を救い出そうとし、変化する。勢いよく両翼が、背中から飛び出すが、紗々姫は、捕まった腕とは、逆の腕で瑠璃光の体を押し出した。
「瑠璃光を守って!」
力無く瑠璃光の体は、寝台から崩れ落ち、青嵐が駆け寄り抱え上げる。紫鳳の楊翼は、風蘭を仕留めようと、体の両側から狙うが、躊躇してしまう。
「どうすればいい」
「迷わないで!裂いておしまい!」
紗々姫は、怒りのあまり変化寸前だった。
「無理言うなよ。」
ゆっくりと起きあげる風蘭を前に、紫鳳は、何も出来ずにいる。
「何も出来るわけないな」
風蘭の開いた口から聞こえてきたのは、聚周の声だった。
「その声は・・」
紫鳳と青嵐は、顔を見合わせた。
「成徳の呪術だと思っていたが・・・まさか、お前までもが、絡んでいたなんて」
「いつの間に、風蘭を・・・」
瑠璃光の潜在意識を知っている紫鳳の声は、震えていた。
「目的が一致しただけだよ。この体を、目的の為に使うだけ。みんな、うまく、目的を果たせるではないか」
風蘭は、紗々姫の腕を押さえ込み、ゆっくりと紗々姫の顔を覗き込んだ。
「私に、瑠璃光を渡しなさい。もっと、早くそうすればよかった」
紗々姫の体を、押さえ込み、人質にすべく、寝台の上に引き摺り込む。目は、赤く輝き、体の背後からは、いく筋もの、蛟の精が湧き上がっていた。
「早く渡さねば、この女の」
風蘭が、紗々姫の腕から、手を滑らせ、首を絞めようとした時に、紗々姫は、笑った。
「愚かな」
紗々姫の髪は伸び、風蘭の首に絡みつく。紗々姫の容貌は、もはや、人間ではなく、恐ろしく長い、白い蛇と化していた。
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