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幼帝風蘭と青瑠璃院の若き主
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鏡に映る姿は、まだ、若い女性の姿だった。信頼できる宦官は、成徳を含め、ほんの2~3名。他の公主達の様に侍女に髪を梳いてもらう事もない。いつから、ここに閉じ込められているのだろう。風蘭は、枕元にある引き出しをそっと開けてみた。小さな引き出しの奥には、髪飾りが入っていて、それは、誰にも言えない瑠璃光との思い出があった。
皇宮の奥、東宮には、誰も、入れない園庭があった。幼い頃から、男子として育てられていた風蘭が、宦官達と一緒に遊ぶのは、鞠蹴りや凧揚げだった。その日、園庭で、凧揚げした風蘭は、風に煽られ、園庭の西側奥に凧を落としてしまった。普段であれば、宦官達は、凧を拾いに行くのだが、今回は、様子が違った。
「困りました」
宦官達は、顔を見合わせた。
「よりによって。。。あそことは」
風蘭が、自分で、取りに行こうとするのを、1人の宦官は止めた。
「おやめなさい。あそこは、行ってはいけません」
「もう、誰も、住んでいない。廃妃となった院だから、誰も、行かないんだよ」
もう、一人が言うと、東宮に渡る長い廊下を歩く1人の少年を見つめながら、口を開いた。
「星暦寮の瑠璃光様だ」
何事か、星暦寮の主と急足で、通り過ぎていく。園庭には、さほど、奴婢達は、いない様子であったが、瑠璃光が、歩く姿を見に、何人もの人が、集まってきていた。まだ、幼さの残るふっくらとした顔つきでも、現在と変わらない凛とした輝く美しさが、その頃も、秘めていた。
「青瑠璃院に捨てられていたのを、現在の星暦寮で、引き取ったそうだな」
一人が言った。青瑠璃院には、廃妃が長年住んでいたが、子供を持つような年齢の者は、おらず、よく、獣が出入りしていたから、瑠璃光は、獣の子ではないかと、噂されていた。それでも。。風蘭は、幼いながらも、瑠璃光に心惹かれた。宦官達の影口にも、動じず、なんと、輝いている事か。
「凧は、もう良い」
風蘭は、駆け出していた。
「風蘭様!」
瑠璃光が、向かった東宮に、向かっていった。
「話してみたい」
風蘭は、思っていた。あいにく、その時は、瑠璃光にあう事はできなかった。何度か、ニアミスを試みたが、瑠璃光と話す機会は、訪れなかった。そんな雨の降ったある日の事。風蘭は、課題を解けずにいた。成徳からは、何人もの師を与えられ、幾つもの課題を与えられていた。雨のせいで、湯鬱で気分が、盛り上がらず、一人、書庫でこもって課題を解く事にしていた。埃にまみれた書棚の奥に、その人はいた。
「瑠璃光?」
風蘭は、口を抑えた。憂鬱な雨の中、埃臭い書庫の奥に、その人は居た。燭台を掲げ、いくつかの巻物を手に取っていた。
「何か、ありましたか?」
口を抑え立ち尽くす風蘭に、気付き、瑠璃光の方から、声をかけてきた。
「あの。。」
話をしたいと思って駆け出したあの日から、何年も経っていた。瑠璃光は、獣の子と噂されているが、人間の美ではないと思った。薄い灰色の瞳に、吸い込まれそうになった。
「大丈夫?」
瑠璃光は、顔を覗き込むと声をかけ、返事に詰まっている間に、急ぐように去っていった。そこから、何度か、風蘭は、瑠璃光に会う為に、書庫に通う様になった。決まって、会えるのは、雨の午後だった。
皇宮の奥、東宮には、誰も、入れない園庭があった。幼い頃から、男子として育てられていた風蘭が、宦官達と一緒に遊ぶのは、鞠蹴りや凧揚げだった。その日、園庭で、凧揚げした風蘭は、風に煽られ、園庭の西側奥に凧を落としてしまった。普段であれば、宦官達は、凧を拾いに行くのだが、今回は、様子が違った。
「困りました」
宦官達は、顔を見合わせた。
「よりによって。。。あそことは」
風蘭が、自分で、取りに行こうとするのを、1人の宦官は止めた。
「おやめなさい。あそこは、行ってはいけません」
「もう、誰も、住んでいない。廃妃となった院だから、誰も、行かないんだよ」
もう、一人が言うと、東宮に渡る長い廊下を歩く1人の少年を見つめながら、口を開いた。
「星暦寮の瑠璃光様だ」
何事か、星暦寮の主と急足で、通り過ぎていく。園庭には、さほど、奴婢達は、いない様子であったが、瑠璃光が、歩く姿を見に、何人もの人が、集まってきていた。まだ、幼さの残るふっくらとした顔つきでも、現在と変わらない凛とした輝く美しさが、その頃も、秘めていた。
「青瑠璃院に捨てられていたのを、現在の星暦寮で、引き取ったそうだな」
一人が言った。青瑠璃院には、廃妃が長年住んでいたが、子供を持つような年齢の者は、おらず、よく、獣が出入りしていたから、瑠璃光は、獣の子ではないかと、噂されていた。それでも。。風蘭は、幼いながらも、瑠璃光に心惹かれた。宦官達の影口にも、動じず、なんと、輝いている事か。
「凧は、もう良い」
風蘭は、駆け出していた。
「風蘭様!」
瑠璃光が、向かった東宮に、向かっていった。
「話してみたい」
風蘭は、思っていた。あいにく、その時は、瑠璃光にあう事はできなかった。何度か、ニアミスを試みたが、瑠璃光と話す機会は、訪れなかった。そんな雨の降ったある日の事。風蘭は、課題を解けずにいた。成徳からは、何人もの師を与えられ、幾つもの課題を与えられていた。雨のせいで、湯鬱で気分が、盛り上がらず、一人、書庫でこもって課題を解く事にしていた。埃にまみれた書棚の奥に、その人はいた。
「瑠璃光?」
風蘭は、口を抑えた。憂鬱な雨の中、埃臭い書庫の奥に、その人は居た。燭台を掲げ、いくつかの巻物を手に取っていた。
「何か、ありましたか?」
口を抑え立ち尽くす風蘭に、気付き、瑠璃光の方から、声をかけてきた。
「あの。。」
話をしたいと思って駆け出したあの日から、何年も経っていた。瑠璃光は、獣の子と噂されているが、人間の美ではないと思った。薄い灰色の瞳に、吸い込まれそうになった。
「大丈夫?」
瑠璃光は、顔を覗き込むと声をかけ、返事に詰まっている間に、急ぐように去っていった。そこから、何度か、風蘭は、瑠璃光に会う為に、書庫に通う様になった。決まって、会えるのは、雨の午後だった。
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