25 / 86
彼を語る声は、何色?
しおりを挟む
シーイに逢える事。
迷いながら、決断したのに。
直接、逢える事は、叶わないようだ。
目の前に、現れたのは、黒いマスク姿の、ウェーブがかった髪を後ろで、一つにまとめた男だった。首の伸び切ったTシャツの上に、羽織ったパカーも、くたびれていて、あまり、人目を気にしないのかと、訝しんでしまう。
「どうも」
男は、軽く会釈した。
こういう場には、慣れていないのか、えらく無愛想だ。
「ごめんなさい。見ての通り、視覚での情報は、得意でないから」
澪は、おどけて見せた。
自分に視覚障害がある事を知ると、みんな、遠慮してしまう。
声の感じからすると、そんなに、世間離れした雰囲気はないが、同室のスタッフの雰囲気が戸惑っているのが、わかる。
「今回は、聞いている通り、うちのサロンのCMを出すという事で、シーイさんの歌声を入れたいと思って。。」
高岡の声がしどろもどろで、相手の雰囲気に戸惑っているのが、わかる。
「所で、肝心のシーイさんは?」
上擦った声を後輩が上げる。
「ズームでのお話でいいですか?」
寧大と名乗った男が話す。
声は、樹木の様な色ね。
澪は、クスッと笑ってしまった。
別に、おかしい訳ではない。
シーイが、若葉色だから、相棒の青年が、樹木と言うのが、うまい具合に、バランスが良い。
仲が良いのか、生まれながらのコンビなのか。
澪の反応に寧大が、怪訝な顔をした。
「ちょっと、都合が悪くて、間に合わなかったんです。遠方に奴は、居まして・・」
寧大は、タブレットを開いた。
「今回は、これで、参加で」
画面の中には、首から下だけの、自称シーイが座っているのが見えた。
寧大と同じような服装をして、椅子に座っている。
「失礼だが、本物ですか?」
「・・・と言うのは?」
高岡が、画面の中のシーイが、少し、幼く見えて、確認したのだ。
「どうすれば、信じてもらえますか?」
寧大は、高岡に聞いた。
「偽者騒動があったとしても、あの声がシーイの者なら、同じでは?」
寧大は、その声が同じなら、誰でも、シーイだと言いたい様だ。
「試して見ますか?」
寧大は、画面の中のシーイに、歌ように言った。
「聞いてください。彼の声ですよ」
画面の中で、シーイは、YouTubeで、寧大と作り上げた詩を歌い上げていく。
「えっと・・」
高岡は、画面に見入りながら、片手で、画像の検索を始める。
後輩達は、音を録りながら、画面に食いつく。
「確かに・・・シーイよね」
「確かに・・・」
スタッフが、画面から流れて来る声が、シーイの物である事を認めようとしていた。
寧大が、少し、笑った様な気がした。
「違うわ」
部屋の空気を凍りつかせる声が響いた。
澪だった。
迷いながら、決断したのに。
直接、逢える事は、叶わないようだ。
目の前に、現れたのは、黒いマスク姿の、ウェーブがかった髪を後ろで、一つにまとめた男だった。首の伸び切ったTシャツの上に、羽織ったパカーも、くたびれていて、あまり、人目を気にしないのかと、訝しんでしまう。
「どうも」
男は、軽く会釈した。
こういう場には、慣れていないのか、えらく無愛想だ。
「ごめんなさい。見ての通り、視覚での情報は、得意でないから」
澪は、おどけて見せた。
自分に視覚障害がある事を知ると、みんな、遠慮してしまう。
声の感じからすると、そんなに、世間離れした雰囲気はないが、同室のスタッフの雰囲気が戸惑っているのが、わかる。
「今回は、聞いている通り、うちのサロンのCMを出すという事で、シーイさんの歌声を入れたいと思って。。」
高岡の声がしどろもどろで、相手の雰囲気に戸惑っているのが、わかる。
「所で、肝心のシーイさんは?」
上擦った声を後輩が上げる。
「ズームでのお話でいいですか?」
寧大と名乗った男が話す。
声は、樹木の様な色ね。
澪は、クスッと笑ってしまった。
別に、おかしい訳ではない。
シーイが、若葉色だから、相棒の青年が、樹木と言うのが、うまい具合に、バランスが良い。
仲が良いのか、生まれながらのコンビなのか。
澪の反応に寧大が、怪訝な顔をした。
「ちょっと、都合が悪くて、間に合わなかったんです。遠方に奴は、居まして・・」
寧大は、タブレットを開いた。
「今回は、これで、参加で」
画面の中には、首から下だけの、自称シーイが座っているのが見えた。
寧大と同じような服装をして、椅子に座っている。
「失礼だが、本物ですか?」
「・・・と言うのは?」
高岡が、画面の中のシーイが、少し、幼く見えて、確認したのだ。
「どうすれば、信じてもらえますか?」
寧大は、高岡に聞いた。
「偽者騒動があったとしても、あの声がシーイの者なら、同じでは?」
寧大は、その声が同じなら、誰でも、シーイだと言いたい様だ。
「試して見ますか?」
寧大は、画面の中のシーイに、歌ように言った。
「聞いてください。彼の声ですよ」
画面の中で、シーイは、YouTubeで、寧大と作り上げた詩を歌い上げていく。
「えっと・・」
高岡は、画面に見入りながら、片手で、画像の検索を始める。
後輩達は、音を録りながら、画面に食いつく。
「確かに・・・シーイよね」
「確かに・・・」
スタッフが、画面から流れて来る声が、シーイの物である事を認めようとしていた。
寧大が、少し、笑った様な気がした。
「違うわ」
部屋の空気を凍りつかせる声が響いた。
澪だった。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
ずぶ濡れで帰ったら彼氏が浮気してました
宵闇 月
恋愛
突然の雨にずぶ濡れになって帰ったら彼氏が知らない女の子とお風呂に入ってました。
ーーそれではお幸せに。
以前書いていたお話です。
投稿するか悩んでそのままにしていたお話ですが、折角書いたのでやはり投稿しようかと…
十話完結で既に書き終えてます。
一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!
当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。
しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。
彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。
このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。
しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。
好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。
※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*)
※他のサイトにも重複投稿しています。
最愛の側妃だけを愛する旦那様、あなたの愛は要りません
abang
恋愛
私の旦那様は七人の側妃を持つ、巷でも噂の好色王。
後宮はいつでも女の戦いが絶えない。
安心して眠ることもできない後宮に、他の妃の所にばかり通う皇帝である夫。
「どうして、この人を愛していたのかしら?」
ずっと静観していた皇后の心は冷めてしまいう。
それなのに皇帝は急に皇后に興味を向けて……!?
「あの人に興味はありません。勝手になさい!」
【完結】聖女の手を取り婚約者が消えて二年。私は別の人の妻になっていた。
文月ゆうり
恋愛
レティシアナは姫だ。
父王に一番愛される姫。
ゆえに妬まれることが多く、それを憂いた父王により早くに婚約を結ぶことになった。
優しく、頼れる婚約者はレティシアナの英雄だ。
しかし、彼は居なくなった。
聖女と呼ばれる少女と一緒に、行方を眩ませたのだ。
そして、二年後。
レティシアナは、大国の王の妻となっていた。
※主人公は、戦えるような存在ではありません。戦えて、強い主人公が好きな方には合わない可能性があります。
小説家になろうにも投稿しています。
エールありがとうございます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる