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美しき守護神 迦桜羅。
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市神が咽び泣いていた。僕は、今までの、市神に受けてきた傷は、決して浅くはないけど、市神を憎む気にはなれなかった。彼が、白衣を見に纏い、医療で人を救う姿が、神々しかったし、一目置いていた。信徒達から、気を貰う代わりに、守護神として存在していたのだろうけど、力を持ち続ける事は叶わなかった。食魂華で、力を得た信徒達が、昇天した事で、市神の存在は、危うい物になっていた。沙羅は、咽び泣く市神をやや冷めた目で、遠くから見ていた。
「来るわよ」
沙羅の声は、感情がなかった。
少し、空間が震えたかと思うと、軽い羽音がして、半身が、龍の体をした見慣れた女性が降りてきた。
「あぁ。。」
僕は、納得した。三那月だった。いつも、市神のそばにいた。
「探しましたよ」
三那月は、何人かの信徒達を引き連れていた。鎌を手にした沙羅が、怖い顔をして、その一団を見上げていた。
「まさか、2人の迦桜羅にここで会えるとは、思いもしませんでした」
三那月は、口元に、微笑みを浮かべ、お辞儀をした。
「お分かりかと、思いますが、私達には、守護神が必要です」
「必要ないかと思うけど」
沙羅は、三那月に言い放った。
「十分な姿をしているのでは」
「いえいえ、数多の神々を控えていますので、まとめる方が必要です」
市神は、三那月を見ても、何の感情も湧かない目をしていた。
「君が、これから何をしたいのか、わかる」
そう言うと、市神は、持っていた剣をのど先に突きつけた。
「新たな迦桜羅を召喚するつもりだろう」
「新たな?」
三那月は、ややヒステリックな声をあげて笑った。
「必要なんです。あなた達、以外の迦桜羅が」
「3人目の迦桜羅を探しているって事?」
沙羅がやや呆れた感じで、聞いた。
「迦桜羅が何者なのか、あなたは、知らないから」
吐き捨てるように言うと沙羅の体は、フワッと宙にうき、側にあった大樹の枝に、腰掛けた。
「人として例えるのは、変だけど、理解がなけれな、同じ事を繰り返すだけ、市神や蓮のように」
「私達は、ここで、ひく訳には行かないんです」
「そう言うと思っていたよ」
三那月は、そっと、差し出された剣先を手で押し返した。
「降りてください。迦桜羅の座から、あなたは、普通に人間として存在した方が、輝いていられる」
三那月の目が、優しく市神の話しかけている。
「放棄してください。後は、私が、あの者を倒しておきます」
「もし、私がお前と戦うと言ったら?」
「できないと思います。私達と戦う事はできない事になっているから」
迦桜羅は、人を殺す事はできない。たとえ、半身が昇天した人間であっても。三那月は、それを言っていた。
「守護神だからか?」
市神は、剣を放り出すと、右の拳に気を込めた。蒼白い光が上がったかと思うと、右の拳は、誰も、止める暇もなく左の胸を貫いていた。
「嘘だろう」
誰もが、そう思った。市神は、自分の左胸を、自分の右手で、撃ち抜いていた。
「沙羅!」
僕は、沙羅を見た。沙羅に助けを求めたが、沙羅は、首を振った。
「ダメよ。自分で、命を絶ったら、助けないの」
僕は、市神を抱えていた。手を通し抱き上げようとしたが、幼い体の僕にでさえ、抱えあげる事ができるほど、市神の体は、次第に、軽くなり、砂のように、内側から、崩れ去ってしまった。
「後は、頼む」
僕に、そう言い残して。
「来るわよ」
沙羅の声は、感情がなかった。
少し、空間が震えたかと思うと、軽い羽音がして、半身が、龍の体をした見慣れた女性が降りてきた。
「あぁ。。」
僕は、納得した。三那月だった。いつも、市神のそばにいた。
「探しましたよ」
三那月は、何人かの信徒達を引き連れていた。鎌を手にした沙羅が、怖い顔をして、その一団を見上げていた。
「まさか、2人の迦桜羅にここで会えるとは、思いもしませんでした」
三那月は、口元に、微笑みを浮かべ、お辞儀をした。
「お分かりかと、思いますが、私達には、守護神が必要です」
「必要ないかと思うけど」
沙羅は、三那月に言い放った。
「十分な姿をしているのでは」
「いえいえ、数多の神々を控えていますので、まとめる方が必要です」
市神は、三那月を見ても、何の感情も湧かない目をしていた。
「君が、これから何をしたいのか、わかる」
そう言うと、市神は、持っていた剣をのど先に突きつけた。
「新たな迦桜羅を召喚するつもりだろう」
「新たな?」
三那月は、ややヒステリックな声をあげて笑った。
「必要なんです。あなた達、以外の迦桜羅が」
「3人目の迦桜羅を探しているって事?」
沙羅がやや呆れた感じで、聞いた。
「迦桜羅が何者なのか、あなたは、知らないから」
吐き捨てるように言うと沙羅の体は、フワッと宙にうき、側にあった大樹の枝に、腰掛けた。
「人として例えるのは、変だけど、理解がなけれな、同じ事を繰り返すだけ、市神や蓮のように」
「私達は、ここで、ひく訳には行かないんです」
「そう言うと思っていたよ」
三那月は、そっと、差し出された剣先を手で押し返した。
「降りてください。迦桜羅の座から、あなたは、普通に人間として存在した方が、輝いていられる」
三那月の目が、優しく市神の話しかけている。
「放棄してください。後は、私が、あの者を倒しておきます」
「もし、私がお前と戦うと言ったら?」
「できないと思います。私達と戦う事はできない事になっているから」
迦桜羅は、人を殺す事はできない。たとえ、半身が昇天した人間であっても。三那月は、それを言っていた。
「守護神だからか?」
市神は、剣を放り出すと、右の拳に気を込めた。蒼白い光が上がったかと思うと、右の拳は、誰も、止める暇もなく左の胸を貫いていた。
「嘘だろう」
誰もが、そう思った。市神は、自分の左胸を、自分の右手で、撃ち抜いていた。
「沙羅!」
僕は、沙羅を見た。沙羅に助けを求めたが、沙羅は、首を振った。
「ダメよ。自分で、命を絶ったら、助けないの」
僕は、市神を抱えていた。手を通し抱き上げようとしたが、幼い体の僕にでさえ、抱えあげる事ができるほど、市神の体は、次第に、軽くなり、砂のように、内側から、崩れ去ってしまった。
「後は、頼む」
僕に、そう言い残して。
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