死神の守人

蘇 陶華

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あなたを倒して強くなる

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僕に剣で襲い掛かる市神は、迷いがなかった。いつも、神々しい姿で、患者を救う姿は、そこには、なくて。紛れもなく迦桜羅の後継者の姿だった。誰が見ても、僕は、偽物の姿だったろう。だけで、どうだ?僕は、ここで、負ける訳には行かなかった。容赦なく市神は、僕と鉢を襲い、剣を振りかざす。空を舞うカラスは、増え、その気配を察し、地獄の犬が、集まり始め、遠吠えを始めた。僕が、迦桜羅と縁を結び、力を返却しても、この姿があるのなら、意味があるはず。僕の中の血が、迦桜羅の遺伝子と結びつき、血がたぎるのなら、本当の僕の姿がそこにあるのなら。僕は、八を抱え、空に舞い、市神との応戦をした。血を流す事は、選びたくない。けど、彼は、容赦ない。
「いい加減、落ちたらどうだ?」
市神は、手を緩めず、叫んだ。
「もう、何もないだろう」
何もない訳ではない。
「八宮は、時間がないんだ。私に、全てを任せろ!」
市神は、全てを把握すれば、八を救うという。
「信用できない!」
「あの、看護師は、仕方がなかったんだ。今までの事を考えると、消えて当然だろう」
沙羅が消えて当然?今は、八までもが、いなくなろうとしている。全てを無くした僕の存在価値があるのか?
「私に任せろ」
「任せる為には、蓮の命を断て!との事ですか?」
八が、僕の腕の中から叫んだ。
「そうだ。そうすれば、私が、全て元通りにする」
「そんな。。。信じろと?」
八は、笑った。市神は、本気で、僕を殺そうとしてる。八を抱え、空を逃げながら、応戦するのは、不利だった。
「蓮。。俺を離せ」
八が、僕の腕を振り解こうと、身を動かした。
「もう、戻らないとだ。本当に、バランスが崩れてしまう」
地獄の犬やカラス、得体の知れない生き物達が、それを埋めていている。八を追いかけ、姿を現した者達。市神の信徒達が、押し掛け、異様な空気に包まれている。市神が、何度も、剣を振りかざすのを避けている中で、僕は、ほんの少し、バランスを崩してしまった。
「足を引っ張って、ごめんな」
その時、八は、僕の腕を振り解き、空へと身を躍り出した。
「やめろ!」
背後にいる市神が、剣を振り下ろす中、僕は、背中を向けてしまった。
「蓮!」
落ちていく八の目が、大きく見開かれたのが、わかった。鈍い音がして、背中ない熱いものが走った。僕は、落ちていく八を、掬い上げようと手を差し出したまま、周りが、真っ赤に染まっていくのが、見えた。僕の血だった。
「八!」
背中を熱く流れる痛みよりも、僕は、八の手を握りしめた事に、安堵した。
「蓮」
何度も、八は、僕の名を呼んでいるのが、わかった。大きく一度目の音が、響いた後、剣は、真っ直ぐ、僕の背中を射抜いた。
「終わった」
市神が安堵する様に呟いたのが、わかった。僕は、八を繋ぎ止めたまま、湖へと落ちていった。
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