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僕の血肉を真実の後継者に。
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僕は、市神を街の外れ鉱山跡の深山に呼び出した。昔は、大きな石を切り出したという跡が、たくさんあるが、今は、誰も人気がなく、鉱石を取り出した後の土を捨てた崖が、深い口を開けていた。市神は、流行りの開業医らしく赤いスポーツカーで、颯爽と現れた。
「待ったか?」
細身のスーツがよく似合い、白衣を着ていなければ、どこかのモデルと、間違われそうだ。
「今、きた所。。」
僕は、いつもの僕らしく、事業所のポンコツ車で、やってきた。途中で、止まるんじゃないかと、ビクビクだったけど、なんとか、坂道を上り詰め、ここまできた。
「うるさい看護師の目を盗んできたから、早めに戻りたいんでね」
市神は、言った。
「あの看護師の事だろう?」
市神は、沙羅の事を言った。
「普通じゃない事は、気づいていたけどね」
市神は、車のボンネットに腰掛けた。
「それも、あるけど」
僕は、市神の前に立ち塞がった。
「お願いがある。八の命も掛かっている。助けてほしい」
「おや?」
市神は、笑った。
「お願いされるのは、意外だな。。。私の命を狙われるのかと思ったけど」
「それなのに、あなたは来た」
「まあね」
市神は、僕の顔を見つめた。
「高野蓮に興味があったからね」
「僕に?」
市神は、うなづいた。
「信徒とやらは、私が、どうのこうのとと騒ぐが、全く、まだ、わからないんだ」
首を振る市神。
「ただ、わかるんだよ。自分の持ち物が、どこにあるのかは」
そう言いながら、市神は、胸ポケットから、あのペンを取り出した。柄は、香木で出来ており、キャップを開けると、中から、刃物が顔を覗かせた。
「それで、沙羅を刺した。。」
「私ではないけどね。けど、私が、念を込めたらしい」
らしいと言うのは、市神は、まだ、記憶が戻っていない為だと言った。
「八を助けたい」
八は、幼い頃から、一緒にいた。あの時から、何度も、八の機転で生き延びていた。
「わかるよ。人を助けるのが、僕の役目だし。今、君の背にあるのも、僕が、人を助ける為に必要な物らしいからね」
市神h、僕の背中を指差した。
「どうして、僕にあるのかは、僕も、わからない。返すことで、終わるなら、返したい」
それは、本心だ。僕が、みんなと変わらず、生活できるなら、ない方がいい。あの日、ブリキの缶を開けた事から、全てが始まっている。
「交換条件だ。返してくれるなら、返してもらおう。それで、終わり。」
市神は、笑った。
「あの看護師も、お前の友達も、変わらず、生活はできるよ。ただ、この街には、住みにくくなると思うがな」
「沙羅が、元に戻って、八が助かるなら」
市神は、立ち上がり、僕の背後に回ると、いきなり僕のシャッツを引きちぎったボタンが、飛び散り、シャッツから、僕の背中が、むき出しになった。
「確かに、ある」
市神は、ペンの先で、僕の背中に触れていた。僕の背中には、痣がある。丁度、肩甲骨の辺りに、赤くペンキを塗りつけたような拳大の染みがある。
「ここから、象徵とも言うべき、羽根は生える」
市神は、立てに、ペン先を振った。
「!」
背中に、熱が走った。
「本当に、いいんだな」
僕は、黙っていた。僕の翼を根本から、引きちぎっていく。市神は、遠慮もせずに、僕の背中に刃先を突き立て、余りの痛みに僕は、立って居られず、膝をついてしまった。
「痛いだろう?」
市神は、まるで、何か、車のパーツでも、外すかのように、僕の赤いシミを、皮ごと、切り落としていった。医者だけあって、手慣れた様子で、両肩甲骨にあった、赤いシミは、市神の手によって、削りとらえていった。乾いた地面に、僕の赤い血飛沫が、落ちていった。
「ほら。。。」
市神は、掌にある、赤いシミだった物を僕に見せた。真っ赤な僕の、血肉の中には、なぜか、小さな眼球が、2つ並んでいた。
「確かに。。」
そう言うと市神は、ポケットから、小さな小瓶を取り出した。中には、真っ白い粉の様な物が入っていた。
「解毒薬?みたいな物だ。」
少し、スパイシーな香りがする。市神は、僕の体から、取り出した眼球を、ハンカチで、丁寧に包んだ。
「お互い、もう、会わない方がいいな。そう祈っているよ」
そう言うと、市神は、嬉しそうに車に乗り込み、走り去っていった。
「それで、いいの?」
隠れていた牛頭と馬頭が顔を出した。
「いいんだ」
最初から、僕のものではない。
「大丈夫か?」
「大丈夫」
僕は、小瓶を牛頭と馬頭に渡した。
「頼んだよ」
僕は、そのまま、地面に崩れ落ちていった。
「待ったか?」
細身のスーツがよく似合い、白衣を着ていなければ、どこかのモデルと、間違われそうだ。
「今、きた所。。」
僕は、いつもの僕らしく、事業所のポンコツ車で、やってきた。途中で、止まるんじゃないかと、ビクビクだったけど、なんとか、坂道を上り詰め、ここまできた。
「うるさい看護師の目を盗んできたから、早めに戻りたいんでね」
市神は、言った。
「あの看護師の事だろう?」
市神は、沙羅の事を言った。
「普通じゃない事は、気づいていたけどね」
市神は、車のボンネットに腰掛けた。
「それも、あるけど」
僕は、市神の前に立ち塞がった。
「お願いがある。八の命も掛かっている。助けてほしい」
「おや?」
市神は、笑った。
「お願いされるのは、意外だな。。。私の命を狙われるのかと思ったけど」
「それなのに、あなたは来た」
「まあね」
市神は、僕の顔を見つめた。
「高野蓮に興味があったからね」
「僕に?」
市神は、うなづいた。
「信徒とやらは、私が、どうのこうのとと騒ぐが、全く、まだ、わからないんだ」
首を振る市神。
「ただ、わかるんだよ。自分の持ち物が、どこにあるのかは」
そう言いながら、市神は、胸ポケットから、あのペンを取り出した。柄は、香木で出来ており、キャップを開けると、中から、刃物が顔を覗かせた。
「それで、沙羅を刺した。。」
「私ではないけどね。けど、私が、念を込めたらしい」
らしいと言うのは、市神は、まだ、記憶が戻っていない為だと言った。
「八を助けたい」
八は、幼い頃から、一緒にいた。あの時から、何度も、八の機転で生き延びていた。
「わかるよ。人を助けるのが、僕の役目だし。今、君の背にあるのも、僕が、人を助ける為に必要な物らしいからね」
市神h、僕の背中を指差した。
「どうして、僕にあるのかは、僕も、わからない。返すことで、終わるなら、返したい」
それは、本心だ。僕が、みんなと変わらず、生活できるなら、ない方がいい。あの日、ブリキの缶を開けた事から、全てが始まっている。
「交換条件だ。返してくれるなら、返してもらおう。それで、終わり。」
市神は、笑った。
「あの看護師も、お前の友達も、変わらず、生活はできるよ。ただ、この街には、住みにくくなると思うがな」
「沙羅が、元に戻って、八が助かるなら」
市神は、立ち上がり、僕の背後に回ると、いきなり僕のシャッツを引きちぎったボタンが、飛び散り、シャッツから、僕の背中が、むき出しになった。
「確かに、ある」
市神は、ペンの先で、僕の背中に触れていた。僕の背中には、痣がある。丁度、肩甲骨の辺りに、赤くペンキを塗りつけたような拳大の染みがある。
「ここから、象徵とも言うべき、羽根は生える」
市神は、立てに、ペン先を振った。
「!」
背中に、熱が走った。
「本当に、いいんだな」
僕は、黙っていた。僕の翼を根本から、引きちぎっていく。市神は、遠慮もせずに、僕の背中に刃先を突き立て、余りの痛みに僕は、立って居られず、膝をついてしまった。
「痛いだろう?」
市神は、まるで、何か、車のパーツでも、外すかのように、僕の赤いシミを、皮ごと、切り落としていった。医者だけあって、手慣れた様子で、両肩甲骨にあった、赤いシミは、市神の手によって、削りとらえていった。乾いた地面に、僕の赤い血飛沫が、落ちていった。
「ほら。。。」
市神は、掌にある、赤いシミだった物を僕に見せた。真っ赤な僕の、血肉の中には、なぜか、小さな眼球が、2つ並んでいた。
「確かに。。」
そう言うと市神は、ポケットから、小さな小瓶を取り出した。中には、真っ白い粉の様な物が入っていた。
「解毒薬?みたいな物だ。」
少し、スパイシーな香りがする。市神は、僕の体から、取り出した眼球を、ハンカチで、丁寧に包んだ。
「お互い、もう、会わない方がいいな。そう祈っているよ」
そう言うと、市神は、嬉しそうに車に乗り込み、走り去っていった。
「それで、いいの?」
隠れていた牛頭と馬頭が顔を出した。
「いいんだ」
最初から、僕のものではない。
「大丈夫か?」
「大丈夫」
僕は、小瓶を牛頭と馬頭に渡した。
「頼んだよ」
僕は、そのまま、地面に崩れ落ちていった。
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