死神の守人

蘇 陶華

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 僕は、イライラしていた。突然、紗羅が現れて「罠」だと言って消えたのだから、それはそうだ。しかも、血だらけで、胸には、香木が刺さっているのだから、尚更だ。紗羅の正体の事は、うっすらと気付いていた。この世界には、似たような生き物が、たくさんいる。僕は、何人も、そう言った人?達を見てきたし、秘密に触れようとは、しなかった。特別な事情を除いてね。ひっそりと生きているのに、わざわざ、揺り起こす事はせずに、静観していた。。。つもりだ。余程の事を除いてはね。人のふりをしながら、人でない奴は、たくさんいる。紗羅からは、僕に近い匂いがしていた。どことなく悲哀に満ちた中にある絶望。紗羅とあった時に、その目の奥にある絶望に、僕は興味を持っていたのかもしれない。その紗羅が、突然、現れ、市神の問いは、罠だと言った。再度、市神から、連絡があった。八が困惑した顔で、僕を見ていた。
「少し。。来れるかな」
「はい」
覚悟を決めて僕は、返事をした。
「行くのか?」
八が、広げていた事業所のパンフを雑に、鞄に押し込みながら聞いてきた。
「行かないって、選択なないかな」
僕は、モタモタと、出かける準備をした。
「俺も。。行くよ。この間の事もあるし」
八もついて来るという。
「うん。。そうしてくれると、ありがたいよ」
八がいれば、何とかなる。僕は、八の事を信頼している。心から。あの日から、八への信頼は、深まったんだ。八は、別の車に乗ると、僕の後について来る事を約束してくれた。あの暑い夏に、僕は行方知れずになっていた。夏休みも近い日だった。寂れた商店街は、人気がなく、一緒に行くはずだった。駄菓子屋に、僕は、向かっていた。陽に焼けた駄菓子屋の壁は、あちこちボロボロで、小さな僕が爪で掻いても、すぐ、崩れていた。
「こら!」
店の奥から、おばあが顔を出し、いたずらする僕をよく叱ったものだ。八と約束したその日、僕は、1人で、店に行った。何度も、声をかけても、店には、誰も、おらず、陰鬱な気配だけが漂っていた。店の奥を精一杯覗くと、おばあの座っている古い座布団の脇に、お菓子の缶らしき、古いブリキの缶が転がっていた。
「キィ。。。」
中から、何かが、話しかけていた。
「キュウ。。キュウ。。」
とも聞こえ、ブリキの缶の隙間からは、何かが覗いていた。僕は、近づいてみた。
「あ!」
僕は、気づいてしまった。
缶の中から、覗いているのは、3つの目だった事に。3つの光が、チラチラと動いている。切なく、声を上げていた。僕は、そこで、缶を手にとってしまった。この事は、誰にも、言っていない。駄菓子屋に入ってしまった所で、記憶が途切れていると話したが、本当は、ここまでだった。まさか、ブリキの缶の中に、何かがいて、僕が遭遇したなんて、誰も、信じないだろう?勿論、八でさえも、知らないはずだ。誰にも、話をしていないのだから。八は、僕との約束を守れなかった事で、僕が、こんな風になってしまったと思い込んでいる。
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