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不幸の足音が聞こえるのは誰?

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「言っては、いけない」
警察を呼ぼうかと聞かれた時、綾葉は、
「目眩がして・・・」
と答えた。心配を掛けたくなかった。幸いにも、お腹の子供は、何ともない。架から、電話をもらった時は、ドキッとしたが、言わないでおこうと思った。綾葉が、同じ時間に駅に向かったのは、いつもの事。いつもの通り、駅で、電車を待つ為に、歩いて行った。ちょうど、駅に入ってくる電車がある事に気づいた。アナウンスもあり、上手に人ゴミを避けていたつもりだった。
「ドン!」
3人組の女性達と衝突し、危うく、駅に入ってくる電車の前に落ちそうになった。
「危ない!」
通りかかった若い男性に、腕を取られ、間一髪で、転落を免れた。ぶつかった3人組は、走り去り、綾葉が、転落しそうになった事に気付かない様子だった。
「大丈夫ですか?」
何人かが、気が付き、綾葉を助け起こした。
「えぇ・・」
落としたバックを拾い、埃を払った。止まった電車からは、人が溢れ出て、綾葉は、雑踏に呑まれそうになる。
「大丈夫です」
「わざとですかね?警察を呼びますか?」
「目眩がして、肩がぶつかってしまいました。大丈夫です」
そんな事はない。最近、おかしな事が増えている。
「莉子を苦しめる気?」
心陽が言った。莉子なのか、心陽なのか?かと言って、架には、相談できない。勿論、祖母にも。父母を亡くし、祖母に育ててもらった。祖母の資産で、今も、生活できる。充てにしてはいけない。ギリギリまで、自分で、働こうとピアノ教室を続けているが、こうも、危険な事が続くとは。お腹の子を、無事に生まなくては。生まれてくるのを架葉、楽しみに待っていてくれる。自分との絆を、この子は、強くしてくれる。綾葉は、立ち上がった。

莉子とは、別居した架だが、私生活以外、頭の痛くなる事が、続いていた。会社の業績があまり、芳しくない。大きな仕事を逃してばかりいた。自分の代になってから、右肩下がりで、何とか、取り戻したい所だった。莉子との関係もうまくいかないので、義父に頼るのも、抵抗がある。どうも、自分の会社の情報がアイブに漏れているとしか思えない。あの日に発見した盗聴器のせいなのか?だとすると、莉子以外の人間となる。自宅に、簡単に出入りできて、ここにも、来れるのは、2人しかいない。
「綾葉か・・・心陽か」
誰かが、自分を陥れようとしてる。
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