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序章
(3)満月、異世界転生しても性格は変わらず
しおりを挟むそこはテレビで見たことがあるような
大きな大聖堂の中だった。
きらびやかなステンドグラス。
そこから差し込む暖かい光。
荘厳な音色を奏でるパイプオルガン。
そして悲しい音色の鐘の音。
その場の状況が満月の目に飛び込んでくる。
なんとなく記憶に残っているのは
最後に手を伸ばしたこと。
そして爆弾で死んで天に召されたような
経験をしたこと。
神様の声も聞こえた気がする。
守り切ればもう一度みんなと会えると
言っていたような気がする。
「……………」
『もしやこれは異世界転生なのでは』
休職中にやることもなく、人と会うのが嫌だったので
ひたすらネプリのアニメを見ていた。
だからこそ、この状況をすぐさま把握できた。
(状況把握に努めよう)
と心の中で思う。
まず、体を起こしてみる。
視界の片隅に白髪でひげ面のおじいちゃんが映る。
「サンタさんがいる!」
と満月は思う。
「あっ!目が合った」
「...... ...... 」
「おおぅ、聖騎士団長様が復活なされた」
白髪のおじいちゃんが嗚咽を漏らした。
目の前には数十の人が
こちらに向かって祈りを捧げていた。
男女関係なく涙を流している者もいる。
その者たちのほとんどが海外の大学の卒業式で
着るような服を着ていた。
その中でも違った服装をしていたのが
最前列の4人だった。
何とか騎士団にでも出てきそうな鎧姿だった。
さらに首を横に振って周りを確かめてみる。
すると同時に大歓声が起こる。
「騎士団長様!」
「騎士団長様!!」
その大衆から声が鳴り響く。
(ん?騎士団長?)
心の中で思う。
そう思った瞬間、サンタのおじいさんが俺に近づき、
片膝をついて俺の手を握ってきた。
「ウァイト様。ウァイト様、
よくぞお戻りくださいました」
「これでこの国は再び守られることになる」
「神はわれらを見捨てなかった」
どうやら俺は異世界転生して
中世の時代らしきところに来たみたいだ。
それもなかなかお偉いさんに生まれ変わったみたいだ。
でもショックだ。
休職してから一年以上もの間、
他人とは話さない人生を過ごしてきた。
(無理、無理、人の上に立つのとか)
心の中で嘆く。
「あっ!転生したら性格変わったりしてるかも。
魔法とか特殊なスキルも欲しいけど、
それよりもコミュ力があるほうがうれしい」
そんなくだらないことを思う。
でもすぐに理解する。
そう思ってしまっている時点で前のままなのだ。
そんなことより状況の把握に努めよう......
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