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1章
人生初の出待ちで………
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その後おれはずーっとシルさんを目で追っていた。
完全におれはいま、ニャン銃士シルーの大ファンだ。
第二部の最中に行われるモニターを介してのアテレコ。
シルさんの声はあの時とは違った。
声優だけあってシルーの声は可愛さが混じっている。
シルさんが声をやっているというだけで
こんなにもそのキャラが愛おしくなるなんて。
キャラになりきって音を当てるシルさんは素敵だった。
真剣な表情がモニターに映る。
ふと気づく。
シルさんの本名は『工藤しるく』だということに。
ようやく手に入れた。シルさんの本名を。
今まで探しても見つからなかった反動で
この時間がおれにとっては最高の時間になっていた。
シルさんを追っかけ続けて見ていた。
気付いたら第二部がもう終わるところだった。
(ここでシルさんと直接会えないと
また同じ事を繰り返す。どうすればいいんだ?)
迫り来る終了の時間に焦りを感じる。
「それではみなさん、本日はありがとうございましたぁ~」
沖田さんの声が会場に響き渡る。
(積んだ......)
みんなが席から立ち上がって帰ろうとする。
近くの声優ファンらしき男の声が聞こえてくる。
「ここの出待ちって東側の裏口のところだよね?」
「今日のイベはは出待ち有りだったから
しるくちゃんとも話せるかも」
まじか!おれは良いことを聞いたと思った。
「じんの、シルーと会えるかもしれないから
そこまで移動して良い?」
「えっ!?シルーに会えるの?いくいく!!」
おれとじんのはそのファンの男の後をついて行った。
そこは声優さんやスタッフが通る裏通路みたいになっていた。
ちょっとした広さがあるから出待ちができるのもうなずける。
もうすでに声優ファンがたむろしている。
シルさんだけでなくほかの声優さんのファンも入り交じっている。
おれはじんのがいるので人混みに入っていけない。
このままではファンで遮られて少し距離がある。
じんのをおいていくわけにはいかない。
かといってじんのを連れて行くのは
大人の男ばかりでハードルが高い。
ガチャッ、扉が開いた。
「かなちゃ~ん」
「しるくちゃ~ん」
「まっち~」
とファンは声をあげる。
シルさんは一番人気だった。
すぐにファンに取り囲まれる。
ファンにも節度があるようだ。
みんなで囲むがぎゅうぎゅうになったりしない。
触れない距離感で接している。
シルさんは笑顔でファンと会話をしている。
ファンは何重にも輪になっている。
男のファンだから背も高い。
おれは頑張って隙間からシルさんの顔をのぞき込むが
シルさんは俺とは目が合わない。
じんのとってはつらい時間だったみたいだ。
シルーはどこにもいない。男の大群が目の前にいる。
そりゃしびれを切らすわけだ。
周りはファンと声優さんでざわついている。
じんのはそれに負けないように俺に大きな声で話しかける。
「おにいちゃ~ん!かえるぅ」
そこの場所で声優以外の女の声は珍しい。
じんのの声が通路に響く。
なんだ?とじんのを方を向く人もいた。
「じょうくん...」
シルさんが俺を見つける。
シルさんから笑顔が消えた。
おれを見つめる。
おれもシルさんを見つめる。
すこし時が止まる。
.......
そこはまるで二人だけの世界のようだった。
ファンの1人から声が聞こえる。
「まさかしるくちゃんの彼氏か...」
たしかにそんな雰囲気を醸し出していた。
会いたかった2人がふいに出会ったような
2人だけの世界を作っていた。
シルさんはとっさにファンの輪をかき分けて
俺の手を握る。
「え...」
戸惑う俺。
シルさんの行動にファンはあっけにとられている。
もちろんおれもびっくりしている。
「妹の彼氏が見に来てくれました。
妹も外で待っているのでこれで失礼しま~す」
シルさんはそう言うと俺の手をつかみながら
出口に引っ張っていく。
おれはなにも言えずついて行く。
もちろんもう一つの俺の手にはじんのを握りしめている。
俺とじんのが引っ張られていく。
完全におれはいま、ニャン銃士シルーの大ファンだ。
第二部の最中に行われるモニターを介してのアテレコ。
シルさんの声はあの時とは違った。
声優だけあってシルーの声は可愛さが混じっている。
シルさんが声をやっているというだけで
こんなにもそのキャラが愛おしくなるなんて。
キャラになりきって音を当てるシルさんは素敵だった。
真剣な表情がモニターに映る。
ふと気づく。
シルさんの本名は『工藤しるく』だということに。
ようやく手に入れた。シルさんの本名を。
今まで探しても見つからなかった反動で
この時間がおれにとっては最高の時間になっていた。
シルさんを追っかけ続けて見ていた。
気付いたら第二部がもう終わるところだった。
(ここでシルさんと直接会えないと
また同じ事を繰り返す。どうすればいいんだ?)
迫り来る終了の時間に焦りを感じる。
「それではみなさん、本日はありがとうございましたぁ~」
沖田さんの声が会場に響き渡る。
(積んだ......)
みんなが席から立ち上がって帰ろうとする。
近くの声優ファンらしき男の声が聞こえてくる。
「ここの出待ちって東側の裏口のところだよね?」
「今日のイベはは出待ち有りだったから
しるくちゃんとも話せるかも」
まじか!おれは良いことを聞いたと思った。
「じんの、シルーと会えるかもしれないから
そこまで移動して良い?」
「えっ!?シルーに会えるの?いくいく!!」
おれとじんのはそのファンの男の後をついて行った。
そこは声優さんやスタッフが通る裏通路みたいになっていた。
ちょっとした広さがあるから出待ちができるのもうなずける。
もうすでに声優ファンがたむろしている。
シルさんだけでなくほかの声優さんのファンも入り交じっている。
おれはじんのがいるので人混みに入っていけない。
このままではファンで遮られて少し距離がある。
じんのをおいていくわけにはいかない。
かといってじんのを連れて行くのは
大人の男ばかりでハードルが高い。
ガチャッ、扉が開いた。
「かなちゃ~ん」
「しるくちゃ~ん」
「まっち~」
とファンは声をあげる。
シルさんは一番人気だった。
すぐにファンに取り囲まれる。
ファンにも節度があるようだ。
みんなで囲むがぎゅうぎゅうになったりしない。
触れない距離感で接している。
シルさんは笑顔でファンと会話をしている。
ファンは何重にも輪になっている。
男のファンだから背も高い。
おれは頑張って隙間からシルさんの顔をのぞき込むが
シルさんは俺とは目が合わない。
じんのとってはつらい時間だったみたいだ。
シルーはどこにもいない。男の大群が目の前にいる。
そりゃしびれを切らすわけだ。
周りはファンと声優さんでざわついている。
じんのはそれに負けないように俺に大きな声で話しかける。
「おにいちゃ~ん!かえるぅ」
そこの場所で声優以外の女の声は珍しい。
じんのの声が通路に響く。
なんだ?とじんのを方を向く人もいた。
「じょうくん...」
シルさんが俺を見つける。
シルさんから笑顔が消えた。
おれを見つめる。
おれもシルさんを見つめる。
すこし時が止まる。
.......
そこはまるで二人だけの世界のようだった。
ファンの1人から声が聞こえる。
「まさかしるくちゃんの彼氏か...」
たしかにそんな雰囲気を醸し出していた。
会いたかった2人がふいに出会ったような
2人だけの世界を作っていた。
シルさんはとっさにファンの輪をかき分けて
俺の手を握る。
「え...」
戸惑う俺。
シルさんの行動にファンはあっけにとられている。
もちろんおれもびっくりしている。
「妹の彼氏が見に来てくれました。
妹も外で待っているのでこれで失礼しま~す」
シルさんはそう言うと俺の手をつかみながら
出口に引っ張っていく。
おれはなにも言えずついて行く。
もちろんもう一つの俺の手にはじんのを握りしめている。
俺とじんのが引っ張られていく。
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