31 / 111
第1幕『半人半蛇(蛇人間)』【表】
第29話『白夜くんの決めたことは絶対!』
しおりを挟む「そっかぁ。……まぁ、そうだよね。白夜くんがOKならOKだし、NGならNGなんだよね」
「うん。僕が法律だよ。この狭い部屋の中でだけはね」
自嘲を含んだ笑みはかえって不遜に見えたが、胸の高鳴りは弥増すばかり。
「…………あの、さ。もういっこ今更なこと訊いていい? 五分経つと、そこロックされちゃうんじゃなかった? もう余裕で五分経ってない?」
白夜くんが操作していた縦長の直方体を指す。
おにーさんは褒めてくれたが、直近でネイルサロンに行ったのは一週間以上前だったから、自慢のパイソンネイルの下には少し自爪が露出していた。
「過ぎてるけど、不具合とかじゃないよ。僕が時間設定いじっておいただけ。今回だけ特別に伸ばしちゃったんだ」
――部屋の中にある簡易的な仕切りにしては、解除に必要な暗号の桁数が多いとは思っていたが、彼が設定に変更を加えていたというのなら納得だ。しかし――。
「どうして?」
「一所懸命口説いても、五分でこっちに来てもらえる自信がなかったから。…………でも、もう少しで時間になっちゃう…………」
俯いた白夜くんの表情は見えないが、今にも消え入りそうな声が彼の気持ちを余すところなく伝えていた。
「僕はこっちに来てもらおうと思ってたんだけど、出て行ってもいい。お姉さんはどうしたい? ちなみに最初のオーダーにかかる金額は無料だよ」
「……それはデフォルトで?」
「お姉さん限定に決まってるでしょ――――って格好つけたかったけど、嘘はいけないね。こっちに来てもらう場合は追加費用なしで、僕が出て行って外出する場合は、それにかかる費用を負担してもらう感じ」
『来てもらう』のところで手招きをした白夜くんは、途轍もなく色っぽかった。
「あ、出てきてもらうこと自体にお金がかかるとかじゃないんだね?」
つまり、レンタル彼氏のようなサービスにも対応しているということか。利用したことがないので詳しいことはわからないが、形式としては似たり寄ったりだろう。
「それはそうだよ。僕は高貴な方でもなんでもないんだから。この体質だって、稀少で特異かもしれないけど、別に特別だとは思わないし」
白夜くんは鱗の浮かぶ肌をさすって言った。
「……あたしにとっては特別なんだけどなぁ……」
あたしは蛇ちゃんが好きだ。蛇という生き物にはかなり重い愛情を向けているほうだと自負している。中でも、蛇オタ道を歩むきっかけを与えてくれた白蛇様は並外れて特別だ。
――――しかし、蛇ちゃんたちに財力気力体力愛情その他諸々を捧ぐ現在のライフスタイルになってから、ひとつだけ大きな悩みを抱えていた。
性欲の発散が出来ない。蛇ちゃんたちの交尾動画を観賞することで心は満たされるが、身体は渇いていく一方だった。若い頃(※世間的にはまだ十分に若者の部類だが)下手に気持ちいいことを覚えてしまったばかりに。
かといって、蛇ちゃんたちに会いに行く時間を削ってまで恋愛相手を探そうとは思えなかった。
次に恋をするなら、『蛇がそのまま人間の身を得た』ようなカレシ希望だったが、残念なことに人間には蛇っぽい要素がほとんどない。
生物としての分類が違うのだから当然だ。それが叶うのは二次元だけ――――と諦めていたところに出会ったのが白夜くんその人だった。
0
お気に入りに追加
7
あなたにおすすめの小説
淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる