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ビフォア・アフタースクール・トーク

ビフォア・アフタースクール・トーク<Ⅰ>

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 大好きな彼とはあれから目立った進展もないまま、時だけが過ぎ――――。その日最後の休み時間、わたしは教室の隅で窓華ちゃんとおしゃべりをしていた。

 高校生女子が特別親しく信頼の置ける友達と顔を合わせれば、高確率で恋愛か趣味の話題になるのではなかろうか。

 わたしたちも御多分に洩れず、恋人とのあいだにあった出来事――窓華ちゃんはともかく、わたしのほうはほとんどが惚気になってしまっているけれど――について話すのが、授業の合間のささやかな楽しみだった。

「え? うっそでしょ!? ……会長、まだなんにもしてこないの? こんなかわいい子捕まえておいてキス止まり!?」

 窓華ちゃんは片手で口を押さえた。ちゃんと声量も抑えてくれているけれど、窓際のいちばん後ろとその前の席で交わされている言葉なんて、他の誰も気に留めないだろう。

 後ろの席にいるわたしは両肘を立て頬を包んでいるのに対し、彼女は椅子に横向きに腰掛け、長くまっすぐ伸びた脚を組んでいる。

(褒め上手だなぁ。窓華ちゃんのほうがずっとかわいくて綺麗なのに)

 先の尖った指は、なにもしていなくてもイイ女感満載で羨ましい。爪までばっちりおめかしした彼女と最後に出掛けたのはいつだったか。

 お互い恋人と順調だという証左とはいえ、彼女だってわたしの大切な人には違いないから、本音を言うと少し寂しい。

(…………というか、そっかぁ。窓華ちゃんにはこの前のこと話してなかったんだった。試験期間にあんなえっちなことしちゃった……というか、させちゃった? なんて、恥ずかしくて言えないよ……!)

 この前オープンしたデートスポットの感想(窓華ちゃんはプレオープンイベントに当選したらしく、一般開放よりもひと足早く彼氏さんと遊んできたのだそうだ)から始まった話は、ひとつのエピソードから惚気へと発展し、今度はわたしがつつかれて、進捗報告(?)をしている――――というのが現在の状況だった。

(だけど、キスより先のスキンシップがまだなのは本当だし、嘘は吐いてないよね。……うん、かろうじて嘘は吐いてない……。これはただの隠し事…………!)

 付き合ってちょうど一年くらいになる彼氏さんの話をする窓華ちゃんはいつも以上にかわいかったし、デートスポット自体もとても楽しそうだった。

 今度、彼を誘ってみようかと考えていたところに話を振られて面食らったけれど、一向に進展しない彼との仲に焦燥感を抱いていたので、ちょうどいい機会だったのかもしれない。
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