上 下
95 / 146
Interlude

Interlude<LV>

しおりを挟む

(…………そういう君だから、期待しちゃうの。『もっとすごいことしたら、もっと好きになってくれるかも』って。『もっと深いところで繋がれたら、もっと好きになれるかも』って)

 ぎゅっと両目を瞑って、心の音を、声を聴いた。
 
(いまだって好きで好きで…………。たぶんもう『大好き』って何回言っても伝えきれないくらいに大好き。……『愛してる』でも、表しきれないレベルかもしれない。とっくに)

 飽和して持て余した愛情を、日常的に、うまく小分けにして彼のようにさりげなく渡してきていたら、こんなふうに悩みを抱えることはなかったのだろうか。

 ――――否。そんなことはないだろう。
 
 素直になれない自分を正当化したい卑しい気持ちも当然あるけれど、それだけではない。
 
(それでも、わたしはもっともっと君を好きになりたいし、君にもわたしのことを好きになってほしい。……やってみる前から諦めるのもよくないと思うけど、言葉だけで伝えるのは限界があるよ……。というか、絶対無理……!)

 『好きと言うほどに好きになる』という先ほどの発見が正しいとしたら、今以上に肥大した恋心に押し潰されそうになっていてもおかしくはないし、日に何度も『好き』とさまざまな手段で伝えてきてくれる彼を見ていればわかることだ。

(これからはちょっとずつでも伝えていこうとは思うけど、きっと全然追いつかないんだろうなぁ。君だって悪戦苦闘してるもんね)

 表に出さないように注意しているのだろうけれど、彼も自分の身体をはみ出すほどに大きくなった愛情を、いかに負担をかけずに伝えるかということに心を砕いている節がある――――というふうに、わたしには見えていた。
 
(…………だから、余計に『早くほしい』って思っちゃう。力技すぎるなぁとは思うし、急ぎすぎなのかもしれないけど……)

 身に纏っているものを一枚ずつ取り払われて、素肌同士を触れ合わせて。いろんなキスと言葉を交換して、全身で愛を伝え合う。
 
 そんな場面をひとつひとつ思い描くごとに、わたしの胸は重低音を奏でた。低音域に特化したイコライザで聴く音楽のように。

(もしかして『早く』ってそういう意味だった?♡♡ わたしたち、おんなじこと考えてたのかな……♡ そうだったら嬉しいなぁ) 

 先ほどの発言を思い返して、口元が綻びそうになった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

職場のパートのおばさん

Rollman
恋愛
職場のパートのおばさんと…

淫らな蜜に狂わされ

歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。 全体的に性的表現・性行為あり。 他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。 全3話完結済みです。

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

今日の授業は保健体育

にのみや朱乃
恋愛
(性的描写あり) 僕は家庭教師として、高校三年生のユキの家に行った。 その日はちょうどユキ以外には誰もいなかった。 ユキは勉強したくない、科目を変えようと言う。ユキが提案した科目とは。

とある高校の淫らで背徳的な日常

神谷 愛
恋愛
とある高校に在籍する少女の話。 クラスメイトに手を出し、教師に手を出し、あちこちで好き放題している彼女の日常。 後輩も先輩も、教師も彼女の前では一匹の雌に過ぎなかった。 ノクターンとかにもある お気に入りをしてくれると喜ぶ。 感想を貰ったら踊り狂って喜ぶ。 してくれたら次の投稿が早くなるかも、しれない。

処理中です...